SICF26 MARKET 受賞者一覧
MARKET部門6組の受賞者を審査員のコメントとともに紹介します。
グランプリ
UMIOTO
<作品タイトル>
The sound of the scenery
<作品について>
風景が奏でる音やかけらからイメージをして、金属で装身具とオブジェを制作をしています。
真鍮を藍染めしたシリーズは、洋服作家さんのボタンを制作した時に、洋服につけた真鍮のボタンが服を藍染めする工程で、真鍮も青く染まることを発見し、金属色と藍の色にとても魅了されたので、作品に展開しました。
「本建て正藍染め」と呼ばれる日本の伝統的な技法を用いて金属を染めています。まだまだ実験的ではありますが、昔からある技法のミックスで、新しい表現に繋がったことに魅力を感じています。
私の制作の根本にある風景は、少数民族が身につけていた衣装や装身具が、大自然の中に花が咲いて、様々な音色が響いている風景に見えたことです。
人が作ったものが風景の一部になり、美しく不思議にそこに存在している。そこには代々受け継がれてきた技術と、経年変化による素材の魅力、便利なものとはかけ離れた手仕事の温かさが詰まっていました。
自然に抗わずに、生活に寄り添い、手を加えたら長く使えること、そこに面白みや、その時の思いが残るように制作しています。
自分が心を動かされるものから、誰かの日常を彩るものを生み出せたら嬉しいです。
<受賞コメント>
子育て中に、身の周りのものを手作りしていく中で、生活を彩る一部となっていくことに喜びを感じ、再びアートピースの制作を始めました。何歳からでも挑戦できるSICFという場所のおかげで、今回このような賞を頂き、本当に光栄です。
応援してくれる家族、友人、お客様に支えられ、表現活動の後押しをしてもらい、とても感謝しています。
今後も、自分がわくわくするものを作っていきます。
<審査員コメント>
■白本由佳/アートディレクター、グラフィックデザイナー
さまざまな作品が並ぶ中で、ベルの作品にとても興味を惹かれました。そのベルは色、形、音色にそれぞれ独特の個性を持っていました。ベルを鳴らしてみると、軽やかで繊細だったり牧歌的だったり、その音色から様々なシーンをイメージすることができました。その予想していなかったちょっとした非日常の体験に癒され、とても心に残りました。また、真鍮に藍染をするという独特の技法が使われていたことも作品に大きな魅力を与えていたと思います。
■鈴木啓太/PRODUCT DESIGN CENTER代表、デザイナー、クリエイティブディレクター
「金属を藍で染める」という前例のない試みが生み出した美しい表情と、独自の造形美の融合が高い完成度を示していました。
とりわけ〈ベル〉シリーズの澄んだ乾いた音は、ブータンの寺院を連想させ、祈りの空気も纏っていました。壁面オーナメントも光と影で表情を変える美しいものでした。作家活動を再始動されて間もないと伺いました。来年の個展も今から楽しみです。
■氷室友里/テキスタイルデザイナー
真鍮に藍染を施すという独自の技法から生まれる、深みのある色味と奥行きのある表情に強く心を惹かれました。偶然の発見から始まり、耐久性などを丁寧に検証しながらプロダクトとして成立させていく過程にも、作家としての真摯で実直な姿勢が感じられます。紙を切ったような潔いシルエットと、手仕事ならではの痕跡が共存する造形も非常に魅力的でした。造形のインスピレーションのもととなったストーリーも興味深く、知れば知るほど惹き込まれる魅力にあふれる作品だと感じました。
■西村 直子/スパイラル 販売部 商品課 課長 統括バイヤー
真鍮と藍染という掛け合わせから生まれた、アクセサリーとオブジェで構成された作品。一目でみてわかる丁寧なものづくり力と、サイズの異なる作品たちを限られた空間内で美しくかつわかりやすく仕立てた、その構成力を特に高く評価しました。
またブランド名ともリンクする深い味わいのある色合いは、所有し日々使うことの喜びを感じさせてくれるようでした。個人審査では基準の5種すべてが満点でした!今後のSICFに参加される方のいいお手本になるのでは、そんな印象をもった完成されたブランドでした。
【略歴】
1983年 神奈川生まれ
2006年 武蔵野美術大学 造形学部工芸工業デザイン学科 金工専攻 卒業
2020年「UMIOTO」を立ち上げ、真鍮やシルバーの装身具とオブジェを制作
【主な受賞歴】
2025年 「SICF26」MARKET部門 グランプリ
2005年 「第9回岡本太郎現代芸術賞」入選
【主な活動】
2025年 「SICF26」MARKET部門 (スパイラル / 東京)
2025年 「旅する洋服と装身具とアフリカのカゴ展」(Gallery John/鎌倉)
2025年 「その人の美意識、感性を香りとして纏う」(三越伊勢丹新宿店本館/東京)
2024年 「わたしの勲章」(halo/大阪)
2024年 「冬のおくりもの展」(LAMAPACOS/東京)
2024年 にわのわ(千葉)