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グランプリアーティスト展

SICF12 グランプリアーティスト展

福士朋子 『出口/入口』


会期: 2011年10月28日(金) – 10月30日(日)
会場: ショウケース(スパイラル1F)
主催: 株式会社ワコールアートセンター
企画制作: スパイラル

 

 

マンガの手法・構造を用い、パーソナルな気づきを等身大に表現

 

2011年5月に開催したSICF12でグランプリを受賞した福士朋子の個展を開催しました。

福士朋子は、既製品のホワイトボードやマグネット、ダーツや油性マジックなどを素材に、マンガの構造や手法を融合させ、自分の小さな思いつきや心の中のつぶやきを等身大で描いたペインティングが評価されて、SICF12グランプリを受賞しました。

たとえば、機内食の肉料理と魚料理を選ぶときの戸惑いなど、ふとした時にぼんやりと頭の中で思い描く想像や独り言のようにささいなエピソードで、そこには、社会にインパクトを与えるような「大きな物語」はありません。とるに足りない個の声を顕在化させる福士の試みは、私たち現代を生きる個人がどれほど声を上げてもなかなか思う通りに進まない時代の閉塞感やもどかしさを感じさせます。同時に、Twitter の出現によって、パーソナルな声の集積が社会の大きなうねりを産み出しうる今日において、個人の「小さな声」が国をも転覆させかねない力を持ち始めた今という時代の流れとも共振します。
 


会場風景

 

写真左から)「スペア スペア スペア」、「四角と丸」「虚と実」

 


写真共に 「左/右」

 

本展では、複数のドアを持ち、出入りの流れが複雑なショウケースという空間を読み説き、「出口/入口」をテーマにインスタレーションを展開しました。繰り返される昨日と今日が区別できないような日々。出口の見えない毎日の中で生まれては消えていくささやかな思いや、つぶやき。日の目を見ることのなかった「小さな声」が形を持った時、そこには、明日を変える大きな力が潜んでいるのかもしれません。

 


写真左から)「inside/outside」、「マニュアル」、「作品にはお手を触れないで下さい」

 


写真共に 「表と裏-謝罪」

 


「着陸と離陸」

 

作家コメント
ショウケースでは「出口/入口」をテーマに展示を行う。 スパイラルの玄関でもあるショウケースは、この空間自体にドアが複数あり、出入りの流れが複雑な場である。普段は意識しない「出る/入る」という動作や、出口が入口でもあることなど、その他特にその関係に疑問を持たないようなシンプルな反対語、対照語を元に制作した作品を展示する。フェンスの内/外で分けられた空間、機内の非常口、日本の伝統空間の内/外の境界についてなど、これまでの作品のテーマをさらに発展させて、マンガの「コマ割り」や、「内語」という声には出さずに考えている言葉などを用いて、すぐに忘れてしまうような一瞬の経験や意識、声にならない声を留めていきたいと思っている。

 


写真左から)「exit1」、「exit2」

 


写真左から)会場風景、「space/surface」

 


写真左から)上「盆栽-松」 下「colored paper work series」 「盆栽-梅」、「床の間-monet」

 


写真左から)「colored paper work series」、「床の間-david」

 


「謝罪1,2,3」

 

Profile

 

福士 朋子(ふくし ともこ)

 

作家ホームページ

 

【略歴】
2005 年 東京芸術大学大学院美術研究科博士後期課程美術専攻油画修了

 

【主な展示】
個展
1997年 ギャラリー山口(東京)
1998年 INAXギャラリー(東京)
2004年 ギャラリーアートもりもと(東京)
2005年 藍画廊(東京)、「近くの現象学」 art&river bank(東京)
2007年 「逗留者」ギャラリーアートもりもと(東京)など

 

グループ・企画展
1999年 「VOCA展 ’99」上野の森美術館(東京)
2003年 「DOMANI・明日展2003」損保ジャパン東郷青児美術館(東京)
2005年 「アートフェア東京」国際フォーラム(東京)
2007年 「アートフェア東京」国際フォーラム(東京)
2008年 「アートフェア東京」国際フォーラム(東京) など

 

【受賞歴】
2011年 SICF12 グランプリ受賞

 

Photo: Katsuhiro Ichikawa