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EXHIBITION 受賞者一覧

SICF26 EXHIBITION 受賞者一覧

EXHIBITION部門 12組の受賞者を審査員のコメントとともに紹介します。


グランプリ

 

DAISUKE SAWAI

 

<作品タイトル>

Landscape of Contemporary Civilization

 

<作品について>

私は「人と文明との関係性」をコンセプトとした作品を発表しています。人と文明とを繋ぐ役割を担った火を「connector」という観点で捉え、絶えず拡張する文明と接続を続ける人間の現在を中立した視点から表現しようと試みています。今回のメイン作品である「Landscape of Contemporary Civilization」は、現代文明の風景を幼児用玩具の形式を用いて表現することで現代社会が抱える様々な課題(環境、エネルギー、食料、土地、等)をポップかつシニカルに表しています。私たち人間は火の獲得以降、文明を発達させ様々な便益を得られましたが、その反面、文明の発達によって生じた多くの弊害が存在しています。この作品は、既視感のある幼児用玩具とは異なるモチーフで構成しており(炎・燃えている家・沈没した石油タンカー・大量のトウモロコシ・原子力発電所など)、現代社会が抱える様々な課題と文明の発達により生かされてきた私達のこれまでとこれからについての思考を鑑賞者に促すことを目的とした作品です。

 

<受賞コメント>
とても光栄な賞に選出頂きまして誠にありがとうございます。
アーティストの方々やご来場者の方々と沢山お話し出来てとても刺激的な3日間を過ごさせて頂きました。
今後も展示を続けて参りますので皆様にぜひとも作品を見て頂きたいです。
この度は本当にありがとうございました。今後ともよろしくお願い致します。

 

<審査員コメント>

■金澤韻/キュレーター

おもちゃの積み木で町のようなカラフルで楽しげな表現に興味を引かれ近づいて見ると印象が変わります。
タンカーが折れて重油が流れ出し、鳥たちが苦しんでいます。自動車も建物もキャラクターたちも燃え上がり、不穏な雰囲気。
火は文明の象徴で、繁栄と破壊が表裏一体となった人間社会が表されています。
造形と意味がよく練られた上に凝縮されていて見応えがありました。大きな会場でのプレゼンテーションが楽しみです。

 

■舘鼻則孝/アーティスト

火を用いて人類が歩んできた文明とその発展に焦点を当てるという壮大なテーマでありながら、誰もが親しみを持てるような表現をしているところには、作家のオリジナリティを感じる。
ひとつひとつのモチーフにストーリーがあり、俯瞰して捉えると皮肉にも感じられる要素の構成ではあるが、鑑賞者にそのようなことを考えさせるきっかけを作っているという視点で、作品に内包された要素の必然性が紡がれている。

 

■山田紗子/建築家

子どものおもちゃに炎という危険かつ原初的モチーフをかぶせて、ユートピアとディストピアが同時に存在しているような鮮やかな表現が目を引いた。気候変動やエネルギー、生活、産業、都市、汚染。数多くの議論や関係性を、積み木の抽象性が取捨選択し、組み換え可能なフォーマットで軽やかに表現されている。これはどういうことなのか、とまじまじと見ては思わず議論してしまいたくなるような引力を持っていた。
規模の大きな展示において、作者がコネクターと呼んでいる炎の存在が一層深みを持って体験されることを楽しみにしている。

 

【略歴】

2006年 駒澤大学法学部政治学科卒業

スケートボードから多大な影響を受けて制作を始めたサワイは、スケートボードカルチャーに散見する火を用いたグラフィックデザインが当たり前に存在している生活が起点となり、この実体験が火の考察と共に人と文明との関係性を考える契機となりました。人と文明とを繋ぐ役割を担った火を「connector」という観点で捉え、人と文明との関係性をコンセプトとした作品を発表しています。

 

【主な受賞歴】
2025年 「SICF26」EXHIBITION部門 グランプリ

 

【主な活動】
2025年 「SICF26」EXHIBITION部門(スパイラルホール/東京)
2024年 RVCA SUPER FRIENDS(RVCA渋谷ギャラリー/東京)
2024年 A2A CROSSING(渋谷西武/東京)
2024年 A2A JAPAN Competition(渋谷ヒカリエ/東京)
2024年 個展 [DISCOVER](SPOTMAN/東京)
2024年 個展 [KINDLING](MAT/東京)

 


準グランプリ

 

 

山﨑 結以

 

<作品タイトル>
目交ぜ

 

<作品について>

個と集団の距離感について思考しながら群像表現に取り組んでいます。
幼少期を「社会性の学び始め」と捉え、集団行動の中で現れるそれぞれの振る舞いの機微を描くことで、価値観の異なる他者とともに生きていくこと、という普遍的なテーマに触れられると考えています。
信用やルール、規律など、フレーミングされるときに感じてしまう小さな違和感は、子供から大人まであらゆるシチュエーションの中に存在し、あらゆる人に身に覚えのある経験かと思います。
現在は、仏像や天井画などの文化財復元に携わりながら古典技法を学んでおり、自身が影響を受けてきた日本美術と現代美術を取り込みながら日本画制作に励んでいます。

 

<受賞コメント>

この度は準グランプリに選出いただき、大変光栄に存じます。
日頃より作家活動を応援してくださるすべての皆様に心より深く御礼申し上げます。
会期中は出展者の皆様やご来場者様、審査員の皆様との会話を通じて、
自身の制作を客観的に見つめ直す貴重な機会となりました。
本賞を励みに、より良い展示が作れるよう精進いたします。
この度は誠にありがとうございました。

 

<審査員コメント>

■山城大督/美術家・映像作家

手配中

 

■加藤育子/スパイラル キュレーター

手配中

 

【略歴】
2021年 東京藝術大学 美術学部絵画科 日本画専攻 卒業
2023年 東京藝術大学 大学院美術研究科 絵画専攻日本画 修了

 

【主な受賞歴】
2025年 「SICF26」EXHIBITION部門 準グランプリ
2021年 「Gallery美の舎 学生選抜展2021」優秀賞

【主な活動】
主なグループ展
2025年 「SICF26」EXHIBITION部門(スパイラルホール/東京)
2024年 おもはゆいふかみ abysse-visage(ギャラリー無量/富山)
2024年 梅津庸一 | エキシビションメーカー(ワタリウム美術館/東京)
2024年 こどもの時間(Gallery美の舎/東京)
2024年 かたちの意味(SUNABA GALLERY/大阪)
2023年 infinity ∞(アートスペース羅針盤/東京)
2022年 猫と鳥たち(Gallery美の舎/東京)
2021年 Gallery美の舎 学生選抜展2021 一次審査通過作品展(Gallery美の舎/東京)
個展
2022年 infancy(Gallery美の舎/東京)
メディア掲載
2025年 ART collectors’ 2025 1月号 No.190/「編集部おすすめの日本画家31選」に掲載

 


 

EXHIBITION部門

準グランプリ

 

 

Lily Onga

 

<作品タイトル>
Visually Receipt:Recorded in Kappabashi

 

<作品について>

浅草の東南にあるキッチン道具専門の商店街であり、自分にとってはディズニーランドのような場所だ。ビルの上にそびえる巨大なコック像、食品サンプル、浴槽ほどの大きさの鍋から湯呑ほどの小さな鍋までが積み上げられ、トーテムポールのように見えてくる。 混沌としていながら整理されており、不思議な所だ。
戦後から代々続く家族経営の店が多く、それぞれが特化した商品を独自の方法で整理し、展示している。何枚写真を撮っても、その店の本質は捉えられなかった。カメラに写るのは混乱だけで、そこに感じた創造的で独特なシステムは表現できなかった。
しかし、ある日、合羽橋でいつも通りうろうろしている中に、店員がトレーの山を仕切り棚の右側に移動させ、それが予約済みの商品であることを示しているのを見かけてしまった。その瞬間、表組みが目の前に実体化したように映った。
なるほど、この迷宮のようなカオスの裏にシステムがなんとなく隠れている。
それなら私は伝票のシステムの力を借り、今湧き上がる楽しさを語ったらどうだろう?列、行、セル、価格、店員が手書きした商品名―これらすべてがその店で体験した出来事の再生に寄与している。伝票の元々のデザインがその店の特徴と完全に一致したら、私は大満足だった!

 

<受賞コメント>

私から見る日本。私から見るこの世界。人々と共有したい気持ちでこの展示ができました。タイ出身の私はSICF26で初めて大学以外の展覧会活動ができて、私にとっても難しいチャレンジでした。それでもその空間で、自分が毎日コツコツとスケッチブックの中に描いている世界がだんだん形になってきて、鑑賞者から「なるほど!私もこの店を覚えている。」とか「あー、領収書ってこんなに面白いんだ」などのコメントをもらい、何よりも制作の楽しさを再確認できました。今回の受賞は私から世界へのラブレターが一通届いたと考え、心から感謝しています。

 

<審査員コメント>

■金澤韻/キュレーター

本物の領収書に描き込まれたお店のイメージのイラストレーションは、いつまでも見ていられるほどディテイルに凝っていて見事でした。領収書にあらかじめ書かれている文字や罫線を利用していて、こんな卑近なところに奥行きのある表現空間を繰り広げることができるものなのかと、感動しました(私たちの日常が突然ワンダーランドのように思えてきました)。立体作品の仕上がりも素晴らしく、今後のさらなる展開に期待せずにはいられません。

 

■舘鼻則孝/アーティスト

領収書をキャンバスとして絵を描くというユニークな手法に加えて、作家独自の視点で紡がれたストーリーが世界観を構築している。作家が実際に訪れた店舗を鑑賞者にも想像させるような仕掛けがあり、小さな領収書という窓から世界が広がっていくようなワクワクさせる演出が魅力につながっている。

 

【略歴】

1997年 タイ、バンコク生まれ
2025年 武蔵野美術大学修士課程 基礎デザインコース 修了

 

【主な受賞歴】

2025年 「SICF26」EXHIBITION部門 準グランプリ
2025年 「ADC 104TH ANNUAL AWARDS (New York Art Director’s Club)」Gold Cube
2025年 「武蔵野美術大学 終了制作」優秀賞
2023年 「Bangkok Illustration Fair」Bangkok Art & Culture Center Award 受賞
2019年 「Degree Show 2019」グランプリ

 

【主な活動】

2025年 「SICF26」EXHIBITION部門 (スパイラルホール/東京)
2024年 グループ展「Visual Biography」(BACC/バンコク)
2023年 「Kamiwaza Daisho Selected Works」(Tokushu Tokai Paper Co.,LTD PAM/東京)
2023年 グループ展「蛹と葉っぱ」(Hospital Gallery 徳島大学病院/徳島)
2023年 「Bangkok Illustration Fair」(BACC/バンコク)
2021年 「Bangkok Art Book Fair」(Bangkok CITY CITY Gallery/バンコク)
2019年 グループ展「Storytelling Project by Bangkok Artbook Fair」(Thailand Creative & Design Centre at Commons Ideo Q,/バンコク)
2019年 グループ展「Degree Show 2019 Finalists」(Siam Discovery/バンコク)

 


 

金澤韻賞

 

 

ムレイティ アントニー

 

<作品タイトル>
鎧のクローゼット

 

<作品について>

自分を知ることは、鎧をまとうことに似ている。私たちは何かから身を守るために鎧を作るが、その素材は自分の弱さや不安そのものであり、経験してきた痛みや迷い、乗り越えてきた感情の断片でできている。
今回の展示「鎧のクローゼット」は、そうした自己認識の可視化としての「鎧」が持つストーリーや記憶を、一つの空間に収めて保管し、さらにそれらを必要に応じて取り出し、まとう場所として構成する。鎧はかけられた状態で展示され、さらに鏡を設置することで、鑑賞者はそれを自分の姿に重ねて見ることができる。実際の衣服を選ぶように、どの鎧を身にまとうのかを考える行為を通じて、自分自身の日常の中に「鎧」が存在していることを意識させる仕掛けとなる。また、このクローゼットの中で、観者は自身がどの鎧に惹かれるのか、またどの鎧に違和感を覚えるのかを考えながら、自己認識のプロセスを追体験できる。

 

<受賞コメント>

まずは素直に、ありがとうございます。と関わってくださった全ての方々に伝えたいです。学びだらけの3日間で、ずっとドキドキとワクワクの連続でした。初めての展示でしたが、自分の作品から何か感じて考えて、言葉にしてくださる方々がいることはとても嬉しいことで、このことを忘れないようにこれからも作り続けていきます。改めて、出展の機会をいただけたこと、そして、審査員賞に選出していただけたことに感謝します。

 

<審査員コメント>

■金澤韻/キュレーター

「鎧」というコンセプトを通じて、自分を守ることと向き合うことに迫った作品。でもタイトルは「鎧」ではなくて、「GINBA」=銀歯。鎧は自室のクローゼットを思わせるセットに架けられているし、「母が好きな」ビール、の缶(アルミ)を素材に選んだのもよかった。等身大で、なおかつセンスがあると思いました。写真(平面)と立体の両面を、そして視覚と触覚を、併せて見せようとするクリエイティブな意欲にワクワクさせられました。

 

【略歴】

2003年 兵庫県生まれ、大阪府出身
2023年 Southern Utah University 経営学部 入学
2024年 Southern Utah University 写真学部 編入 在籍中

 

【主な受賞歴】

2025年 「SICF26」EXHIBITION部門 金澤韻賞
2024年 「Southern Utah University Spring Art Competion 2024」Grand Prize Winner

 

【主な活動】
2025年 「SICF26」EXHIBITION部門(スパイラルホール/東京)

 


 

舘鼻則孝賞

 

 

杉本 篤

 

<作品タイトル>
Take on the Street

 

<作品について>

私は元々スケーターでスケートボードのフィルムメイカーとしてキャリアを重ねてきました。
長く活動を続けていくうちに、シーンの中での価値基準で物事を判断してしまっていることに気づきました。
枠組みから飛び出す為に始めたスケートボードは、いつの間にか枠組みの中に収まっていました。
様式美から外れ、日本でスケートの映像を作ってきた自分が発明する路上での実践を展開していく事こそが、スケートボードなんじゃないか。
そう考えた私は、自身の活動を経て得た視点を、現代の彫刻として捉え再構築しています。

スケートボードに乗り、通常とは異なる視点で街や身体に痕跡を残していく。
その場所を一時的にハックし、本来そこにはない意味や異なる時間を生み出す。
撮影を通じて目の前の出来事や景色を捉え、断片をコレクトしていく。
編集によって過去の時間や記憶を切り貼りしながらひとつの作品を構成する。

本来スケートボードの用途ではないものを、異なる視点を持ち自分たちの遊び場に変えてしまう行為。
それは視点の変容であり、地面を写し取り、壁面に持ち出す今作は、私のやってきたスケートボードそのものであると考えています。

 

<受賞コメント>

この度、舘鼻則孝賞をいただき大変嬉しく思っております。
展示を通じて多くの方と対話できたことは、私の財産となりました。
私の活動は非常に個人的な探求ですが、この活動を通じて息苦しさを感じている誰かの力になれたら嬉しく思います。
私はスケートボードをバックグラウンドに持ち、それ以外の言葉を知りませんが、自分の持つ背景に誇りを持ち、自分らしく生きていく様を作品として残していければと考えています。

 

<審査員コメント>

■舘鼻則孝/アーティスト

スケートボードに関わった自身のキャリアの軌跡を俯瞰した目線で辿ることで作品に昇華された本作は、一見誰もが身近に感じる道というモチーフをスケートボードを通して触覚的に感じてきたからこそ完成される作品でもある。既存のものさしにとらわれず、新たな視点を与えるということが主題となった作品であり、鑑賞者にもそのようなことに気づかせてくれる意義のある作品に仕上がっていた。

 

【略歴】

群馬県出身
13歳でスケートボードを始め、18歳頃よりスケートボードを題材に映像制作を始める。
形式的な映像作品から次第に、物事に対する視点、精神性や態度の在り方への探求を扱うものへと変化していく。
他者を撮影することで知りたかったのは自分自身のことだったんだと気づき、以降自らを主軸においた作品を制作している。

現在ではスケートボードでの実践を通じて学び得たことを軸に、”ただ、そこにある”路上と自身の在り方を照らし合わせながら、
視点の変容やアイデンティティについて、自身の内側に流れる文脈の上で作品化している。

 

【主な受賞歴】

2025年 「SICF26」EXHIBITION部門 舘鼻則孝賞

 

【主な活動】
2025年 「SICF26」EXHIBITION部門(スパイラルホール/東京)
2024年 Our Castle(HAITSU/東京)
2024年 Take on the Street(アーツ前橋/群馬)
2023年 SHIKABI -灯火-(AA/東京)
2020年 こちらから、そちらから。(アーツ前橋/群馬)
2019年 QUAN (Senggi Studio/ソウル)
2017年 45Hz (YA-GINS/群馬)
2015年 KIDS HEART FOREVER(UPLINK/東京)
2013年 CAPTURED IMAGES(UPLINK/東京)
2011年 ME AND MY FRIENDS(UPLINK/東京)
2006年 BLUE(WOAL/群馬)

 


 

山城大督賞

 

 

川畑 那奈

 

<作品タイトル>
「呼吸する台地」(「地の内臓」シリーズより)

 

<作品について>

あらゆる生物は自らの体の大きさに応じた領域の中で生きている。それは物理的な領域だけに限られた話ではなく、世界に対する見方についても同様だ。生物は所有する身体を土台とした知に支配されている。しかし、地球という変容と循環の惑星において、身体というスケール感に依存した知は盲目的と言えるだろう。あらゆる生物は連続性の円環の最中に存在しており、生物間の境界線は溶け合っているのだ。
そこで、私は人間より遥かに大きな「地殻」という存在に対し、アニメーションによって身体性を与えることで、身体的スケールに依存した私たちの想像力をゆさぶる試みを行いたい。本展示では、「台地」「火山湖」「山岳」という3つの地形に「内臓を与える」というテーマで制作したアニメーション3点のうち1点を展示した。地形の断面は、地殻内部で起こる詳細な運動を想起させると同時に、生物の体内活動をも連想させる。生物の表皮を模した等身大のスクリーンはゆらゆらと伸縮し続けており、まるで呼吸をしているように思わせる。大きな風景と小さな生物という、ミクロ即マクロのスケール感の錯誤は、私たちの身体の境界線を曖昧にすることだろう。

 

<受賞コメント>

このような賞をいただくことができ、大変嬉しく思います。限られたスペース、限られた期間ではありましたが、とても濃密な経験をさせていただきました。仕事と作家活動を両立する私にとって、作品に対して真摯に向き合う作家たちと交流できたことが大きな活力となりました。この度はありがとうございました。

 

<審査員コメント>

■山城大督/美術家・映像作家

手配中

 

【略歴】
2021年 東京藝術大学美術学部 先端芸術表現科 卒業
2024年 東京藝術大学大学院 映像研究科アニメーション専攻 修了
アニメーション作家。トランス・スケールな物語を生み出す装置として、風景アニメーションを制作する。アニメーションによって風景は呼吸し、有機的で身体性を持つ存在へと変貌する。その中に描かれる匿名的な生命体は触媒となり、鑑賞者は自然と人間、人間同士、人間と微生物といった多元的な生態系の物語を見出す。財)カンセイ・ド・アシヤ文化財団 第二期オフィシャルサポートアーティスト。

 

【主な受賞歴】

2025年 「SICF26」EXHIBITION部門 山城大督賞
2024年 「Tindirindis International Animated Film Festival」Special Mention
2024年 「ANIMATOU International Animation Film Festival Genève Lab Award」受賞
2024年 「映像作家100人」選出
2022年 「ASK?映像祭」大賞
2021年 「東京藝大アートフェス2021」グランプリ・東京藝術大学長賞・コシノジュンコ特別賞

 

【主な活動】

2025年 ANIMAC 2025  上映(スペイン)
2025年 TRICKY WOMEN TRICKY REALITIES 上映(オーストラリア)
2024年 Tallinn Black Nights Film Festival(PÖFF)上映(エストニア)
2024年 INTERFILM 40th International Short Film Festival Berlin 上映(ドイツ)
2024年 川畑那奈 個展 -永久点-(ギャルリー東京ユマニテbis/東京)

 


 

山田紗子賞

 

 

mishmash

 

<作品タイトル>
Ordinary Bug’s

 

<作品について>

テントウムシの多面性をテーマとしたインスタレーションです。幸運のシンボル、“お天道様”として親しまれているテントウムシ。その一方で、赤と黒の警告色を身にまとい、黄色く苦い毒液を分泌することで自己防衛をしているという一面も持ち合わせています。このように多面的な魅力を持ち合わせているにもかかわらず、昆虫は一般的に表情が捉えにくい容姿であるため、彼らの気持ちを理解することは少々困難です。そこで私たちは、彼らが持ち合わせているであろう個性や感情を想像し、視覚的に表現することを試みました。
本作品では、テントウムシの黒い斑点部分にモニターを設置し、安らかな表情や怒っているような顔、そしてどこか不安げな表情など、私たちが想像する多様な感情を映像として映し出しています。
ありふれた風景の中にユーモアを差し込むことで、ものの見え方が変わり、日常の景色が少し異なって見えるかもしれません。そうした視点の転換を通じて、鑑賞者の日常がほんの少し楽しくなればいいなと願いを込めて制作しました。

 

<受賞コメント>

この度は山田紗子さんの審査員賞に選出してくださり、大変光栄です。会期中、温かく支えてくださったスタッフの皆様には、心から感謝の気持ちでいっぱいです。今回の経験を糧に、引き続き自身の表現を深めてまいります。(三上めるも)

山田紗子賞、誠にありがとうございます。限られた空間で「キモかわかっこいい」世界観を表現する日々は試行錯誤の連続でした。この作品で誰かの日常が少しでも楽しくなれば幸いです。主催者、審査員の皆様、SICF関係者の方々に深く感謝いたします。(naco)

 

<審査員コメント>

■山田紗子/建築家

舞台の書割のようなあっけらかんとしたつくりにも関わらず、大端かつ妖艶な植物の描写とデジタルな映像という組み合わせが異様な存在感を放っていた。てんとう虫の斑点に当てはめられた7つの顔は表情豊かで、ユーモラスな顔を注視していると、別の顔からものすごい形相でにらまれていることに気づき思わずぞくっとしてしまう。可愛いと怖い。相反する感情や表出が、てんとう虫の、ひいては人間も含む生物の矛盾と生命力を訴える。顔はめパネルという体験者が別のものの輪郭に取り込まれるフォーマットの可能性を追求している点も非常に興味深い。

 

【略歴】

・三上 めるも
2003年 東京都出身
2025年 多摩美術大学 情報デザイン学科メディア芸術コース 在学中
・naco
2003年  東京都出身
2025年 女子美術大学 芸術学部デザイン・工芸学科ヴィジュアルデザイン専攻 在学中

 

【主な受賞歴】

2025年 「SICF26」EXHIBITION部門 山田紗子賞

 

【主な活動】
2025年 「SICF26」EXHIBITION部門(スパイラルホール/東京)

 


 

スパイラル奨励賞

 

 

近藤 ののか

 

<作品タイトル>
insideペットボトル漂流記

 

<作品について>

道端に落ちていたペットボトルとたった一瞬だけ心を通じ合わせた女性の物語です。原始的な芸術や文化人類学に興味を持った作者は、「夜」の混沌とリズムが心を通わせる装置になっているのではないかと仮定し、物語の舞台として夜の描写を加えました。
夜ジョギングをしていた女性は道端に落ちていたペットボトルの中に、見たことがないはずなのに知っている「景色」を見た気がしました。人の意識は夜、子どもに還ります。子どもは景色を探そうとして乱立する世界の法則の中で迷子になりましたが、混沌を抜けた道の先で探していた景色に出会いました。その瞬間、同情心か望郷か…心がはじけて自分の感情を止めることができなくなりました。その瞬間でした、女性は我に返ったのは——それは女性がペットボトルを拾うだけのたった一瞬の出来事でした。ペットボトルを手につかんだときには、もう女性はなぜ自分が「それ」を拾い上げたのか忘れていたのでした。

 

<受賞コメント>

この度は賞に選出してくださり誠にありがとうございました。
社会規範とは異なる現実の捉え方から見えるものを表現したいと考えていて、SICF26ではマジカルな「夜」を表現すべく作品と展示空間を作りました。展示期間中は様々な人と上記テーマで意見を交わしたり感想をいただきました。己の哲学やこれからの制作の方向性が格段にアップグレードして本当にうれしかったです。
これからも気を引き締めて制作を続けます。

 

<審査員コメント>

■加藤育子/スパイラル キュレーター

手配中

 

【略歴】
2024年 東京藝術大学美術学部デザイン科 卒業
2024年 東京藝術大学大学院 美術研究科デザイン専攻 在籍中
埼玉県出身。
世界の裏めいた位置に存在する「無意識的な世界の本質」と心を通じ合わせる方法を探るため、アニミズムの哲学のもと作品を制作している。関東のベッドタウンで生まれ育った作者は「忘れられた人工物」が求める世界の入り口であると直感し、その波長を再現するため、絵や詩などを組み合わせた物語のような作品を制作している。

 

【主な受賞歴】

2025年 「SICF26」EXHIBITION部門 スパイラル奨励賞
2024年 「第72回東京藝術大学卒業・修了展」買上賞
2024年 「TOKYO GEIDAI ARTFES 2024」優秀賞
2023年 安宅賞

 

【主な活動】
2025年 「SICF26」EXHIBITION部門(スパイラルホール/東京)
2025年 ○+(オープラス)展(新生堂/東京)
2025年 長崎県西海市「アートのまち西海作品展」(大島文化ホール/長崎)
2024年 個展「命のこと」(沖縄)
2024年 東京藝術大買上2024-Purchase Award 2024 Tokyo University of the’ Arts-(上野駅/東京)
2024年 第72回東京藝術大学卒業・修了作品展(東京藝術大学/東京)
2023年 街中see 0PLUS(えっぐぷらす)(浦和ワシントンホテル/埼玉)

 


 

デイリーアート賞

 

 

小沢 和葉

 

<作品タイトル>
looped

 

<作品について>

私は絶えず変化する思考に振り回され、時には自分の内側から置き去りにされるような感覚を抱く。この作品では日々の思考の移ろいをガラスの中に映し出し、焼成されたパーツを繋ぎ合わせることで、その変化を表現している。
背景にはその日に浮かんだ言葉や感情を裂いた紙、お菓子の包み紙等を編み込み、床と壁を覆うように織物状の空間を作り出した。
本作は消えゆくものを掬いとるように、自分の思考を辿り直し、過去の感覚を再訪することを試みた。

 

<受賞コメント>

この度はデイリーアート賞に選出頂き、誠にありがとうございます。ガラスを用いたインスタレーションを通じて、素材の新しい表現に関心を持って頂けたことや、対話の中から新たな発想が生まれたことを大変嬉しく感じております。関係者の皆様、ご来場頂いた皆様に心より感謝申し上げます。

 

<審査員コメント>

■加藤育子/スパイラル キュレーター

手配中

 

【略歴】

2023年 武蔵野美術大学 工芸工業デザイン学科 ガラス専攻 卒業
2023年 富山造形研究所研究科 入学
2025年 富山造形研究所研究科 卒業
現在、千葉にて制作を行う

 

【主な受賞歴】
2025年 「SICF26」 EXHIBITION部門 デイリーアート賞
2025年 「キラリナアートアワード」佳作
2024年 「富山市美術展」奨励賞

 

【主な活動】
2025年 グループ展 流理
2025年 新工芸展 第8回学生選抜展
2025年 光のアート展XI
2025年 「SICF26」EXHIBITION部門
2025年 GEN展
2025年 富山ガラス造形研究所 卒業制作展
2024年 工芸美術造形への可能性-広がり展-
2024年 富山市美術展
2023年 研究科応用造形クラス POTPOUREMIX -ポプリミックス-
2023年 坂のまちアートin八尾
2023年 ART&DESIGN
2023年 GEN展

 


 

オーディエンス賞 A日程

 

 

近藤 唯士

 

<作品タイトル>
転景Ⅰ-傘立て-

 

<作品について>

本作は、JR相原駅にある傘立て「かえるかさ」を含めた風景の移築(転景)。「かえるかさ」は、今もJR相原駅にある傘立てで、誰でも傘を持っていっていいし、置いていっていい傘立てです。私は、この傘立てを通る度に、写真を撮ってきました。日々変化し続ける景色(傘立て)に対する違和感であると同時に、ある小さな世界として積み重なっていく断片を作品化したいと考えました。写真という形での切り取りから空間として切り取ることへと思考が変わりました。そのために今もある景色の断片を複製しました。複製した原寸大の傘立てと実際に今も相原駅にある傘立ては、互いにある景色として移り変わり、さらに景色を作り続けていく。そのきっかけが今回は、傘立てにあったが、気にも留めないそんなものがいつもそばにあって、気づくと別のものになってたり、あるいは、そのことにも気付かなかったりするかもしれない。そのことを転景というシリーズで行っています。

 

<受賞コメント>

限られた空間で作品としての魅力を、最大限に引き出すことがとても難しかったです。また、そのことが、作品と向き合うきっかけのひとつにもなり良い経験になりました。SICF26で100人それぞれが区画のなかで何かを曝け出す光景は、風俗街を、歩いているときにも似た獣感と共存しているような不思議な時間でもありました。

 

 

【略歴】

2019年 東京都立農芸高等学校 食品科学科 卒業
2025年 東京造形大学 デザイン学科映画・映像専攻 卒業

 

【主な受賞歴】

2025年 「SICF26」EXHIBITION部門 オーディエンス賞 A日程
2025年 「東京造形大学卒業制作展」ZOKEI賞 ノミネート

 

【主な活動】

2025年 「SICF26」EXHIBITION部門(スパイラルホール/東京)
2024年 個展「ある家の片隅で」(東京造形大学 CS ギャラリー/東京)
2024年 個展「あるいは、水曜の朝食に」(Atari cafe gallery/東京)
2023年 個展「そこ / ここ」(東京造形大学 CS ギャラリー/東京)
2023年 グループ展「- 間 -」(gallery33/東京)

 


 

オーディエンス賞 B日程

 

 

SASAMANA

 

<作品タイトル>
おかめ花瓶

 

<作品について>

おかめは福をもたらし、他者との円満・安定の象徴として親しまれてきた。しかし、私にとっての福は、円満・安定にはない。
内なるむき出しの個が矛盾をはらみながらかたちづくる、不安定であるからこそ美しいバランスが福、命そのものである。
人は、生まれ落ちた瞬間から“わたし”という未成熟で情緒的なフィルターを通してでしか、世界を受けとめられない。
つまり、物理的に存在し、主観を剥ぎ取れない以上、他者や世界と完全に同化できない。自分のフィルターに抗えず、死ぬまで純粋無垢―産み落とされる前の“世界”と同化した、個を持たない状態―には戻れない。曲げられない意思・陶酔感・自己矛盾を死ぬまで抱え続けるしかない。
しかし、その不自由さや煩わしさは、どうしようもなく美しく、私はそれらを愛おしく思う。
不自由さや煩わしさを感じながらも個はどうしようもなく存在し、ズレや揺らぎが表層にヒビを起こして、その隙間から個が蠢き溢れる。死ぬまで繰り返す無秩序な呼吸、この不安定で美しいバランスが、命を持つものたちの姿だ。本作《おかめ花瓶-OKAME VASE》は、一体ごとに異なる、不自由で煩わしい個を持つ。ものを生けては外し、無秩序に呼吸をしながら、不安定を美しく生きている。

 

<受賞コメント>

このたび、SICF26という素晴らしい舞台で作品を発表する機会をいただき、さらにはオーディエンス賞という温かいご支持をいただけたこと、心より嬉しく感謝の気持ちでいっぱいです。
本作「おかめ花瓶」は、今回が初めての発表となりました。会場にて作品と向き合う皆さまのまなざしや、直接かけていただいたお言葉のひとつひとつが、心に深く残り、創作の意味をあらためて実感する時間となりました。
来場者の皆さまとのかけがえのない出会い、そしてSICF26を通してつながることができた素敵なアーティストの方々との交流は、これからの制作にとって大きな糧であり、原動力です。
この機会を支えてくださったすべての関係者の皆様、そして足を運んでくださった皆様に、心より御礼申し上げます。

 

 

【略歴】

東京都出身
2016年 武蔵野美術大学 基礎デザイン学科 卒業
2016年 アーティスト、デザイナーとして活動
「日常をみつめる、世界ととけあう、今を生きる」をテーマにアートに取り組んでいる。

 

【主な受賞歴】

2025年 「SICF26」EXHIBITION部門 オーディエンス賞 B日程
2016年 「CAF賞」 入選
2016年 武蔵野美術大学 基礎デザイン学科賞

 

【主な活動】
2025年 「SICF26」EXHIBITION部門(スパイラルホール/東京)
2025年 アメリカ・ロサンゼルスにてアーティストインレジデンス参加
2025年 東京とカリフォルニアを拠点にアートワークショップ実施
2025年 作品集「Art on Toast 静かな生きもの」(コンセント刊)出版、代官山蔦屋にて出版記念トークショー
2024年 三越伊勢丹新宿店・都内近郊ホテル・イベント会場にてワークショップや登壇

 


 

オーディエンス賞 B日程

 

 

後藤 夏希

 

<作品タイトル>
F=

 

<作品について>

目には見えないカケラの集まりが、この世界を形作っている。身近に存在する自然現象―引力や重力、熱や光といった力を可視化し、それによって世の中の「見え方」が少し変化することを目指している。制作において、ガラスを吊り下げ、熱を加えることで、重力や引力、熱の力を活かし、私自身の手を介さずに形が変化していくプロセスを重要視している。このプロセスそのものが、自然の見えない力を形として具現化させる。現象が物質へ移り変わるその瞬間、造形に緊張感が漂う。それは、物質と非物質、静と動といった相反する要素が交錯し、危うい均衡が保たれる瞬間でもある。自然現象そのものを「共同制作者」として迎え入れることで、これらの力が作り上げる造形を作品として捉えている。作品を通して、普段の生活の中で見逃しがちな「小さなカケラ」に気づき、その美しさに目を向ける。日々に潜むカケラたちの姿は、私たちの感覚を通して初めて形を持つのだ。

 

<受賞コメント>

このような素晴らしい発表の機会に加え、オーディエンス賞という光栄な賞をいただき、大変嬉しく思っております。
たくさんの作家の皆さまやご来場くださった方々との出会いを通じて、多くの刺激と学びを得ることができ、忘れられない3日間となりました。この経験を活かし、今後の作品づくりに一層励んでいきたいと思います。

 

 

【略歴】

2000年 宮城県生まれ
2023年 秋田公立美術大学 卒業
2025年 東京藝術大学大学院 修了

 

【主な受賞歴】

2025年 「SICF26」EXHIBITION部門 オーディエンス賞 B日程
2024年 「good design new hope award 2024」入選
2024年 学展 入賞
2023年 「秋田公立美術大学卒業・修了展2023」きらり早瀬眞理子奨励賞

 

【主な活動】
2025年 「SICF26」EXHIBITION部門
2025年 第73回 東京藝術大学卒業・修了作品展
2024年  個展「ether.」
2023年  秋田公立美術大学卒業・修了展2023
2021年  3331 ART FAIR 2022

 


 

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