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受賞者一覧

SICF21 受賞者一覧


 

グランプリ

 

中山佳保子

 

<作品タイトル>

plastic dan-pole

 

<作品について>

身の回りにある素材や現象の中には、見落とされている面白さがたくさん潜んでいると思う。この作品では、身近な素材であるダンボールの構造に着目した。ダンボールを真横から見ると、真っ直ぐな空洞が規則正しく並んだ構造から、空洞の並びと視線との角度が平行に近い時のみ反対側の光が透けて見える。

円形にカットしたプラスチックダンボールを大量に重ねて接着し、回転台にのせた。重ねてゆく際、空洞の並びを基準に少しずつずらしたり、ずらす角度や方向を変えたり、あるいは全くずらさずに揃えたりと、それぞれ異なる秩序を与える。回転台に乗せると、回る速さと方向は常に一定でありながら、重ね方の違いによって透けて見える部分が様々な動きを見せる。

重ねては回し、試行錯誤を繰り返す中で、見慣れているはずの素材から予想外の動きがたくさん生まれるのが面白かった。

 

<受賞コメント>

今回のSICF21が私にとって初めての都内での展示でした。多くの方から様々なご意見やご感想をいただき、とても刺激的な2日間となりました。大変な状況の中足を運んで下さった皆様、本当にありがとうございました。

また、今後の可能性を評価してこのような大きな賞を下さったことに心より感謝し、それに応えられるようこれからも制作を続けていきたいと思っています。

 

<審査員コメント>

■難波祐子/ キュレーター

黒い円柱が回転して、光の帯が上下に動いてパターンを作る。近づいてみると、使われているのは、プラスチック段ボール。空洞が規則的に並んでいる、という素材の性質を活かして、円形状にカットされたプラスチック段ボールをある規則性をもって向きをずらしながら幾層にも積み重ねて、光が透ける塊を見事に作り出している。それが回転した時、まるで生き物のように光の帯が波打って見える。身近な素材に潜む構造の特徴をうまく導き出して、アートの領域にまで引き揚げた点は、高く評価したい。今回の受賞をきっかけに、更に新しい素材や手法にどんどん挑戦して、よりスケールの大きな驚きを生み出す作品を制作して頂きたい。中山さんの鋭い観察眼と丁寧な分析と実験に基づく制作態度は、それをきっと可能にしてくれると信じている。

■林千晶/株式会社ロフトワーク代表取締役

プラスチック式ダンボールを重ねただけの作品。でもその積み重ねの背後には緻密な計算があり、まるで生きているかのように、光の模様が神秘的に浮き上がり、また沈みこみ、見る人を魅了します。
デザイン的ともいえるこの作品がグランプリをとったのは、彼女の「美」に対するこだわりを感じとったからと言えるでしょう。だからこそ、次に見せてくれるのは、デザインもアートも超えた、ただひたすら美しく、激しく心が揺さぶられる、そういう領域なのではと期待しています。

 

【略歴】
1997年 山口県生まれ

2020年 筑波大学芸術専門学群 卒業

現在 筑波大学人間総合科学学術院芸術学学位プログラム構成領域 在籍

【主な受賞歴】

2020年 SICF21 グランプリ受賞

【主な活動】

2020年 SICF21(スパイラル/東京)

 


 

準グランプリ

 

 

鈴木貴雄

 

<作品タイトル>
naked and cavity

 

<作品について>
今回の作品「naked and cavity」は中身のない空っぽの装飾物で人間性を表現しています。

普段の生活を送る中で、いつの間にか先に意味や理由を見出せないことを無駄だと判断している。機能性や必然性ばかりを求めていると、動物化もしくは機械化しているように感じる。一方でその視点からは不要な装飾に対して憧れのようなものを感じている、おそらく無駄なことに必要性をみる人間らしさに惹かれてる。

石をジェンガのように積み上げ、井桁に組むことで空洞を表そうと考えました。私は石や木を彫り作品を制作していますが、素材には特性があり制約が生じます。初めのうちは素材を前に頭で思考を巡らせて、次に条件を設定してから手を動かし、徐々に条件を更新していきます。繰り返しかたちを彫っていきながら、濾過して不要なものを取り除き必要なものを抽出していく感じ。やがてモチーフだったことも忘れて、ひとつの模様にしてしまいたい。段々と頭はいい加減になり目と手で直接思考し、立体で線を描く感覚になっていく。

 

<受賞コメント>
準グランプリをいただきありがとうございました。この度の受賞はこれからの活動の励みになります。彫刻や美術といったカテゴリーの中だけではなく、現代の生活の中にある様々なものの一つとして私の作品はどうなのだろうかと思い、SICFに参加させて頂きました。様々な方にご覧いただき様々な作家から刺激を受けるいい機会となりました。作品をご覧いただきました皆様、関係者の皆様には感謝を申し上げます。

 

<審査員コメント>

■田中景子/ミナ ペルホネン テキスタイルデザイナー

作品に使用している石の硬さと鈴木さんの充分に鍛錬された手の技術との融点が具象化された作品に感じました。一つの作品にかける膨大な時間と緊張感が積み重なり、出会った瞬間にその作品へ追従させられる様な感覚に陥る作品だと思います。満たされていない形に未来や空想が込められていて、それが意味を成している点も評価しました。

■加藤育子/スパイラル ギャラリー担当チーフ・キュレーター

木椅子の枠を組み立て、その周りに石を積み重ねて枠を抜き、一旦黒く塗ってリセットしてから最後に削り出す。素材、そして作業の痕跡と対話するような丁寧な制作プロセスと、確かな技術、「空洞の装飾」という着眼点も明確で、アーティストとしての実力を感じました。今回出展された額や椅子のモチーフから今後どんな飛躍があるのか、さらなる柔軟な発想をもって、まだ見ぬ新たな石の可能性を引き出してくださることを期待しています。

 

【略歴】
1985年  福島県生まれ
2010年  東京藝術大学 美術研究科 彫刻専攻 修了

【主な受賞歴】
2008年  安宅賞奨学基金 受賞

【主な活動】

2019年  OPEN STUDIO 2019 (ART FACTORY 城南島/東京)
2019年  くうねるほる (藝大アートプラザ/東京)
2017年  spiral take art collection 2017 蒐集衆商 (スパイラルガーデン/東京)
2016年  藝大×EXPO (ギャラリー・マルヒ/東京)
2016年  個展 (元麻布ギャラリー/東京)
2014年  明日の巨匠たち (いわき市立美術館/福島)
2014年  夏の芸術祭 次代を担う若手作家展 (日本橋三越/東京)
2014年  4.th Komurcuoglu International Stone Sculpture Colony (トルコ)
2014年  藝大Am+いわき 2014 アリオス現代美術館展 (いわき芸術文化交流館アリオス/福島)
2012年  個展 (秋山画廊/東京)


 準グランプリ・難波祐子賞

 

 

さんにん

 

<作品タイトル>

会話ドロボー

 

<作品について>

日常のなかの会話はすぐに流され忘れ去られてしまいます。それは二度と出会うことがなく小説や新聞の言葉よりもずっと奇跡的な言葉です。だからこそ、私たちはその会話を盗み記録しました。違う場所、違う時、違う人から三人それぞれが盗んだ会話の偶然の並びが奇跡的に噛み合い新しい会話が生まれる瞬間があります。その瞬間の感動を新しい言葉遊び集としてまとめました。

 

さんにんより

 

あなたの会話は頂いた!人知れずこっそり集めました。これは私たち3人だけの密かな愉しみ。特別に私達のコレクションをこっそりお見せしましょう。盗んだ会話を組み替えて遊ばせて頂きました。奇想天外な会話をどうぞお愉しみ下さい。

 

会話ドロボーより

 

【会話ドロボーの愉しみ方】

➀街中で会話を盗む

➁日付、場所、会話を紙に書き留める

➂3人で集めた会話を出し合う

➃偶然リンクした会話に感動する

➄感動した会話を言葉遊び集としてまとめる

 

<受賞コメント>

この度はこのような賞を頂けたこと大変嬉しく思います。実際に展示をして多くの人の目に触れたことで気付かされたこともあり、偶然にもコロナウィルスの流行と重なり、生の声を直接集めることで現在の世の中のリアルな状況をまざまざと感じました。

愉しみで始めたことが、私たちが考える以上の価値を持つことに気付かされました。

今後更なる展開として会話ドロボーをこのままで終わらせず、今後も盗み続け発展させていきたいです。

 

<審査員コメント>

■難波祐子/ キュレーター

ブース内の壁一面に貼られた、誰かのつぶやきや発した言葉が書かれた色とりどりの付箋は、一見、よくある参加型プロジェクトを思わせるが、作品のタイトルは「会話ドロボー」。付箋をめくると、裏に会話を採取した場所と日時が書かれており、その時の情景がふと浮かび上がる。小さな短冊を想起させる付箋たちが、連歌のように異なる場所と時間を繋げて、不思議な会話を綴っていく。展示では、付箋のほか、盗んだ会話を集めた本も置いてあった。タイポグラフィーも工夫が見られ、白地に白の唐草模様をあしらった表紙の和綴で丁寧に装丁されていた。普段は、それぞれが全く別のタイプの作品を制作しているという「さんにん」だが、しばらくこの企みを気負わず、目一杯楽しんで、何が生まれるのか、自分たちの目でしっかり確かめて欲しい。

■望月かおる/雑誌「美術手帖」編集長

およそ9ヶ月間、各所で3人が採取した「会話」の集積を、1つずつ付箋に書き、裏にその採取場所と時間を記録。観客は、言葉を読み、付箋をめくることで、当時の状況に想像を巡らせることができる。コロナ禍によって生まれた、コミュニケーションにおける微妙な距離感を捉えているとも言え、この時期でこそ成立可能な表現だと思いました。この先どうなるかも不確実なチームだとは思うのですが、今回得た手応えを糧に、それぞれの創造力をどんな形へと展開させていくのかに期待が持てます。

 

【略歴】

2019年春  結成

私たちは現代アートチーム

「さんにん」です。

武蔵野美   大学空間演出デザイン学科在学の

3人で活動をしています。

私たちは制作を進める上で何よりもディスカッションを大切にしています。

3人で話し合うと今まで見えなかった曖昧な思考の形が少しずつ見えるようになります。

それは人に伝えることで自分では見なかった方向からのアプローチができるからでしょう。

私たちは自分達が成長する場所として、さんにんでの制作を進めています。

【主な活動】

2019年夏   Espace de re’flexion -Jean=Luc Vilmouthが伝えつづけた愛と学び

1hour exhibition  (スパイラル/東京) 出展

パフォーマンス作品「THE・ニコちゃん」


田中景子賞

 

清川漠

 

<作品タイトル>

BONSAI

 

<作品について>

清川漠は日本文化である盆栽の新しい表現を追求した『BONSAI』を描く。
本来は立体物である盆栽を平面に落とし込み、簡略的に伸びやかに、時には大胆なストロークで盆栽の形を表現していく。
盆栽は日本文化の1つとして誰しも知っているものであるが、自宅に盆栽がある人はどれほど居るだろう。多くの人にとってイメージの中の盆栽は「祖父母の趣味」ではないだろうか。しかし、祖父母と会うことや、盆栽を見る機会も減った。実物を気軽に見ることもなくなり、今では存在だけが宙に浮いているものとなった。盆栽の凛とした佇まいの中に躍動感のあるイメージをそのままグラフィティに落とし込み、若者にも本来の盆栽と同じように家に飾り鑑賞したいと思えるような作品を制作したいと思ったキッカケから『BONSAI』を制作した。
デジタルで描いたように思えるタッチだが、デジタル機器は一切使用しないアナログな技法で描いており、その技法を自ら「獏嵌(バクガン)」と名付け制作を続けている。

 

<受賞コメント>

今回の展示は沢山の方々からの応援や手助けによって理想の展示空間が実現いたしました。

二日間という短い展示期間でしたが得られた経験はとても多く、また自分の力量を知ることができました。今回得られたものを次回に繋げていきたいと考えています。

いつも応援してくださっている皆様、協力してくださった皆様、本当にありがとうございました。

 

<審査員コメント>

■田中景子/ミナ ペルホネン テキスタイルデザイナー

ダイナミックな筆の運びと一見思わせるところ、実際は、計算尽くされたその制作手法に驚きました。モノトーンの世界の中にも様々な色がうかがえ、また作業の中で生まれる偶然を自分のラインとして操って制作されている事が作品から読み取れました。
清川さん自身の体感サイズがフィットしているのか、小さい作品においては自由自在に表現されており、その上大きい作品にも挑戦されていたので、更なる未来を期待させてくれる点も素晴らしかったです。また新しい表現の発見を楽しみしております。

 

【略歴】

清川漠 Kiyokawa Baku

1996年 沖縄県生まれ

2020年 女子美術大学芸術学部美術学科洋画専攻卒業

【主な受賞歴】

2020年 「SICF21」 田中景子賞受賞

【主な活動】

グループ展

2020年「SICF21」(スパイラル/東京)

2020年「第43回東京五美術大学連合卒業・修了制作展」(国立新美術館/東京)

2019年「清川漠 ふかふかな角煮 Exhibition」(DESIGN FESTA GALLERY/東京)

2018年「いぬふぉるむ展」(BALLOND’ESSAI ART GALLERY/東京)

2018年「Artrop」(こはぜ珈琲/東京)

2017年「銀座大晦日展」(STANDGINZA/80/東京)

2017年「LUCE OCCHIO VISIONE」(Società Umanitaria/イタリア)

2017年「cross references : 協働のためのケーススタディ」(アートラボはしもと/神奈川)

2017年「ART! by CREATIVE REUSE」(調布市文化会館/東京)


 

林千晶賞

 

蔦本大樹

 

<作品タイトル>

月の心臓/Lunar Heart

 

<作品について>

私は主に針金、ワイヤーと呼ばれる金属線を用い、「生命力」をテーマに作品を制作している。

ワイヤーはしなやかで繊細な素材だが、線と見るか塊と見るかで印象がまるで異なる。密集した線の塊には強烈な威圧感があり、生命力を感じる。

制作過程において「密度」と「重み」はワイヤーを積み重ねることによって徐々に増す。

その制作過程は生命が時間を積み重ね進化していくプロセスを示している。

モチーフとして選んだ「海月」は線なのか塊なのか、ふわふわと曖昧な存在である。透けた体とゆらゆらと漂う姿には軽やかな印象を与えるが、その複雑な形状や動きには重厚な生命力を感じざるを得ない。暗い海に浮かぶ生命の塊はまさに「海月」と言う名に相応しい。私の感じる命の形を線によって再構成し、圧倒的存在感を示す。

 

<受賞コメント>

初めに現在の社会情勢の中、本展示を開催まで導いてくださったスタッフ並びに審査員の皆様に心より感謝申し上げます。

この度は「林千昌賞」を選出していただき大変光栄に思います。

「ワイヤー」という素材の持つ可能性を信じ、向き合い続けたことが間違いではなかったと、作品に対して自信が持てるきっかけとなりました。

講評会での審査員林様の「可能性」という言葉に答えるべく、今後もより精進して参ります。

 

<審査員コメント>

■林千晶/株式会社ロフトワーク代表取締役

「針金を重ねることで、命の重なりを表現できるのでは」、その問いかけに共感しました。ましてや、林業をやっている私に「木の年輪も同じですよね」と語りかけられると、有無をいわさない強さを感じました。
今回の作品は海月がテーマでしたが、過去にはより表現密度の軽い「トンボ」や、針金と漆で新たな表現をうむことも模索しており、自由自在な作品には心の自由さも現れているかもしれません。そんな将来性溢れる蔦本さん、もしかすると針金を捨てたところに、新たな可能性があるのかもしれませんね。

 

【略歴】

1995年 兵庫県姫路市生まれ

2018年 神戸芸術工科大学 クラフト美術学科彫刻・フィギュアコース 卒業

2020年 神戸芸術工科大学大学院 総合アート&デザイン専攻 修士課程 修了

【主な受賞歴】

2020年 神戸芸術工科大学卒展「カオス2020」学長賞

2020年 IAG AWARDS 2020 池袋アートギャザリング 奨励賞&八犬堂ギャラリー賞

2020年 SICF21 林千昌賞

【主な活動】

2020年 おもにサメ展2(カフェギャラリーきのね/大阪)

2020年 IAG AWARDS 2020 池袋アートギャザリング(東京芸術劇場/東京)

2020年 ヤングアーティスト旋風 アートアートアート(松坂屋名古屋店 美術画廊/愛知)

2020年 SICF21(スパイラル/東京)


望月かおる賞

 

水落大

<作品タイトル>

CharActor

 

<作品について>
コンピュータグラフィックスに使用される数式を遺伝子に見立て、遺伝的アルゴリズムによって多様なパターンを作り出すことによって、映像に生命の多様性をインストールする表現を実現した作品。

本作品では、作品自体がシェーダープログラムを記述する仕組みをもつことによって、グリッド状に大量の映像が描かれる。各映像の数式は、関数列がランダムに入れ替わることで少しずつ異なる数式が生成される。それにより生成された映像はそれぞれ個性をもつが、意図して生成されたものではなく、ランダムもしくは淘汰された結果に過ぎない。

このシステムを用いて、プログラムが作り出す個性と、自分自身が持つ個性、他者との違いに気付き、個性とは何かを考える試みとして、パターンを生成するワークショップを行った。そこで生まれたパターンを用いて、細胞をモチーフに映像の立体を制作した。

人間社会を超えて、あらゆるものがコンピュータ化された未来での、情報量だけに支配された自然とは何か、美しさとは何か、を問うと共に、人の手によって制御されるプログラムを離れ、数式を遺伝子にもつ映像によって、種の多様性そのものを映像美として見ることを試みた。

 

<受賞コメント>

今回、新しい表現手法を探るうちに発見した映像の魅力を、ジャンルを超えて多くの方に共有する機会をいただいたことが嬉しく、このような賞をいただき大変光栄です。
例年と異なる大変な状況の中、開催を決断し、対策に力を尽くして頂いた関係者の皆様、作品を観に足を運んでくださった皆様、ありがとうございました。

 

<審査員コメント>
■望月かおる/雑誌「美術手帖」編集長

数式を遺伝子に見立て、バリエーションを自動生成的に生み出すという手法に独自性が見られるという点と、来るべき未来における人間不在の作品の可能性を探るという現在的なコンセプト設定が興味深いと思いました。いっぽうで、ビジュアルには、コンセプトとより密接に結びついた必然性を持たせる工夫ができるとよいかと思いました。多くの可能性を秘めて要ると思いますので、比類のない独創性や、作品の多層性をさらに磨いていただけると、将来により期待が持てると思います。

 

【略歴】
1989年 東京都生まれ
2012年 東京大学工学部 機械情報工学科 卒業
2014年 東京大学大学院 情報理工学系研究科 知能機械情報学専攻 修了

在学中にメディアアート・音楽・演劇などの表現活動に触れたことをきっかけに、卒業後は電機メーカーにて技術開発・商品企画に携わる傍ら、「テクノロジーで人を描く」ことをテーマに表現活動を行う。

【主な受賞歴】
2020年9月 SICF21 望月かおる賞
2019年12月SXSW 2020 ART PROGRAM FINALISTS
2017年12月SportsDesign.Camp 東京国際プロジェクションマッピングアワード エキシビション 優秀賞
2017年2月 YouFab Global Creative Awards 準グランプリ
2016年11月WIRED CREATIVE HACK AWARD 2016 パブリック賞
2015年12月YouFab Global Creative Awards Finalist
2015年12月KENPOKU Art Hack Day 茨城県北芸術祭 作品選出
2015年9月 ArtHackDay2015 サービスプロダクト部門最優秀賞
2015年7月 BAPAインタラクティブライブ演出 最優秀賞
2014年10月学生CGコンテストノミネート

【主な活動】
2020年9月 SICF21(スパイラルホール/東京)
2020年9月 Ars Electronica .ART Global Gallery(オンライン)
2020年7月 おさなごころを、きみに 8K作品上映「MADD.作品集」(東京都現代美術館/東京)
2019年11月SIGGRAPH Asia 2019 Art Gallery(ブリスベン/オーストラリア)
2019年8月 KAMING SINGURARITY ART GALLERY(渋谷ストリームホール/東京)
2019年4月 ごはんとアート(MTRL KYOTO/京都)
2019年3月 MADD. Award screening 2019(日本科学未来館/東京)
2019年3月 Eureka(GALLERY WATER/東京)
2019年2月 Media Ambition Tokyo(六本木ヒルズ/東京)
2018年11月工芸ハッカソン2018(渋谷EDGEof/東京)
2018年10月工芸建築展(金沢21世紀美術館/金沢)
2017年12月東京国際プロジェクションマッピングアワード エキシビション(東京ビックサイト/東京)
2017年11月工芸ハッカソン(富山)
2016年11月東京行灯祭(川島商店街/東京)
2016年9月 茨城県北芸術祭(茨城)
2015年11月KENPOKU ArtHackDay(FabCafe Tokyo/東京)
2015年9月 ArtHackDay(3331 Arts Chiyoda/東京)
2012年12月iii Exhibition 2012(東京)


 スパイラル奨励賞

村山大明

 

<作品タイトル>

無題

 

<作品について>

自然は無数の生き物が共存することで複雑でありながら一体となっています。 木が岩を飲み込み、死んだものから命が芽生える森では、モノとモノの境界も、美と醜・善と悪といった概念もないのだと気付かされます。 小さな頃、森へ入り虫や苔を夢中で観察していると、まるで自分もその中に溶け込んでいくような心地よさがありました。それは視覚だけでなく、様々な感覚を通して感じさせられます。 自分とそれ以外の世界が一体となる感覚は、自分の作り出した世界に包まれることでも表現できるのではないか。絵画は主に視覚を通して楽しむものですが、様々な見せ方をすることでそのような感覚を体感できる絵画を作りました。 立体作品に描くことで、葉っぱの裏を覗き込んで小さな虫たちを探すことができる。 揺れ動く水面越しに見ることで、絵画に動きを出し、涼しげな温度を感じることができる。 風でそよぐ木の葉からこぼれる光が、柔らかい印象を与える。 自然界からすれば非常に狭く小さな絵画という世界ですが、だからこそ見せられる自然の魅力、絵画の可能性を表現したいと考えています。

 

<受賞コメント>

東京ではほぼ初めての展示でしたのでどのような反応があるのか不安でしたが、このような賞を頂けましたこと嬉しく思います。授賞式座談会での「ディスプレイ的な要素が強くなりやすい」とのお言葉の通り、今回は作品の見せ方の方ばかりに注力していたなと思いました。次の作品ではより自然に対する思いが生々しく伝わるような、新しいアプローチができるよう制作に励みます。この度はありがとうございました。

 

<審査員コメント>

■加藤育子/スパイラル ギャラリー担当チーフ・キュレーター

生物が息づく様子を、壁から床、そして植物の葉の裏まで余すところなく精緻なドローイングで描き、独自の生態系を空間としてつくり上げた力を評価しました。農業を学び、京都の里山で生物に愛と関心を寄せて作品制作を続ける、現代の南方熊楠のような作者の生き方そのものも面白いと思います。ディスプレイや空間装飾に留まらないように、(良い意味での)偏執狂的な持ち味や生体の持つ毒々しさを表現に取り入れ、より作品としての強度が増すことを期待しています。

 

【略歴】

1989年 京都生まれ

2010年 京都府立農業大学校 卒業

2014年 創造社デザイン専門学校 卒業

2019年 FM802/FMCOCOLOアートプロジェクト digmeout 在籍

2020年 京都にアトリエを構える

【主な受賞歴】

2014年 創造社デザイン専門学校卒業制作展 学校賞

2015年 ART STREAM2015 奨励賞 / インターグループ賞

2016年 ヤングクリーターズアワード2016 後援賞

2019年 UNKNOWN ASIA 2019 審査員 MISS KANOKNUCH SILLAPAWISAWAKUL賞

2020年 SICF21 スパイラル奨励賞

【主な活動】

2015年 ART STREAM2015(大阪)

2016年 個展 芝田町画廊(大阪)

2016年 ART STREAM2016(大阪)

2017年 個展 ギャラリーそら (大阪)

2017年 個展 GALLERY龍屋(愛知)

2017年 UNKNOWN ASIA 2017(大阪)

2018年 個展 バックス画材 (京都)

2018年 個展 イロリムラ プチホール(大阪)

2018年 ライブペイント企画 PENDULUM(京都)

2019年 UNKNOWN ASIA 2019(大阪)

2019年 個展 SUNABA gallery(大阪)


スパイラル奨励賞

 

五十嵐桃子

 

<作品タイトル>

view

 

<作品について>

私はガラス工芸の中でも主にキルンワーク(電気炉の中でガラスを溶かし成形する)という技法で制作しています。

この技法では焼成温度や型、溶かし込むガラス素材の形状などを変えることにより様々な表現ができます。ガラスは一般的には吹きガラスで作るうつわや、建築で使われる窓ガラスのような透明で硬い素材というイメージがあると思いますが、それだけではなく色や質感など実はガラスの表現は多岐にわたるということに制作していて気づきました。

出展作品の素材は全てガラスです。

真っ白な雪景色や、海に沈む夕日、河原で拾った石ころなど今までに見た美しい景色をイメージしています。

同じ景色が一つもないように、作品も全て違う形、違う作り方で作っています。

私の作るものから、ガラスの魅力を少しでも感じていただけたら幸いです。

 

<受賞コメント>

例年と違い予約制での開催とのことでしたが、予想以上にたくさんの方々に見ていただくことができました。年齢も、性別も様々な方々に見ていただき、お話しできたことはとても貴重な時間だったと思っています。

この度はこのような賞をいただけてとても嬉しいです。これを励みにこれからも作り続けていこうと思います。

 

<審査員コメント>

■スパイラル

蓋物を中心に、小物入れのようなオブジェのような用途を特定させないガラス作品は、不思議な形状と色合いが魅力的で、はかない美しさを湛えていました。

展示も作品と作品がお互いの存在を引き立て合う絶妙な配置になっており、作り手の素材への理解と繊細な感性を感じました。

※本賞は、スパイラルのライフスタイルにまつわる事業において、今後の展開の可能性が期待される作品に贈られます。

 

【略歴】

1993年 新潟県生まれ

2016年 武蔵野美術大学造形学部工芸工業デザイン学科ガラス専攻 卒業

【主な受賞歴】

2016年 2015年度武蔵野美術大学卒業制作優秀賞

2020年 SICF21スパイラル奨励賞

【主な活動】

2016年 卒業制作学外展(SPIRAL/青山)

2016年 武蔵野美術大学卒業制作・修了制作優秀作品展(武蔵野美術大学 美術館)

2016年 LOVE THE MATERIAL in AOYAMA(伊藤忠青山アートスクエア/青山)

2016年 つくるひと・つかうひ・みるひと展(Gallery子の星/代官山)

2017年 五十嵐桃子・金東希ガラス二人展(ギャラリールヴァン/目白)

2018年 五十嵐桃子・富永一真ガラス展(art space morgen rot/青山)

2019年 冬のそばに(room103/国立)

2019年 てのわ市(武蔵国分寺公園)

2019年 窓辺ー夏至の匂いー(sorairo/宇都宮)

2019年 「アトリエゑん」夏のオーダー服&アーティストのアクセサリー(art space ruriro/川越)

2019年 ものこと祭り(世田谷代田)

2019年 アートのある家(art space ruriro/川越)

 


 

ワコールスタディホール京都奨励賞・オーディエンス賞B日程

 

谷敷謙 

 

<作品タイトル>
PAUSE

 

<作品について>

2007年以来、私は木目込みというテキスタイルを埋め込む技法で制作をしてます。
木目込みというのは、今から300年前の日本の江戸時代に賀茂別雷神社(京都最古の神社)の宮大工をしていた高橋忠重が柳筥(神様へのお供え物を入れる箱)を作った時の端材を削って人形にした木目込み人形が始まりです。今日では日本の家庭で、七夕のお雛様を飾る人形が木目込み雛人形へとなってきました。七夕のお雛様というのは、子供が健やかに育ち幸せになって欲しいという願いで両親が飾ります。昔は乳幼児の死亡率が高く、子供が無事に成長できるかどうかは、神のみぞ知る事柄だったので、そのため穢れを移す身代わりの型を水で流し災厄を祓う風習がありました。それが時代と共に流すのではなく、子供の枕元に人形を置いて穢れを移すことへと変わり、現在では飾る事で厄を祓う形へと変化してきたのが木目込み雛人形の成り立ちです。
このように木目込みという技法は、神への器から、親から子へ孫へと命を繋げる願いの器へと変化してるように私は感じます。

当初は我が子の生きていることを証明するために、彼女が着ていた古着を彼女の特徴を誇張した姿勢(PAUSE)のキャラクターで集積させ留めて存在証明していました。親から見るその作品は彼女の過去が一時停止(PAUSE)して一同に集まり、現在の彼女が確かに存在しているように見え、目の前にいる彼女と作品を見ることで、この先の彼女を想像することができました。

そして最近ではその対象が身内から知人、社会へと変化していき、人間の良心が過去から受け継がれている姿勢を一時停止した場面で現代の古着を使って表現しています。

私の作品の共通するテーマは繋がりです。100年前の社会が現代と全く姿が違うように、これから先の未来はまた違うものになることが予想できます。ですが、人間の良心は形を変えても受け継がれています。神の器だったものが、子孫への生へ渇望の器に変わっていった木目込みの技法のように、自分の作品を現代の社会の希望へと昇華することが私の制作目的です。それを思い出や記憶が詰まった現代の古着で作りたいのです。

私は母から教わった木目込みの技法が大好きです。アメリカから日本へ帰ってきて、日本の文化への溝を埋めてくれた大切な技法です。

私の作品は日本の場面が多いですが、古着そのものが持つ力を借りて、作品を見る人が同じ共通した人間として、それぞれの多様性を認めあえる繋がりを感じることを願います。

 

<受賞コメント>
未曾有な状況にも関わらずSICFにいらしてくれた皆様、審査員また御関係者の皆様、共に展示と刺激をくれた皆様、ありがとうございました!ブース形式の展示は初めてだったのですが、たくさんの方と話せて、コニュニケーションが取れて幸せでした。また他の方の展示を見て、こんな見せ方があるのかと、空間での作品の見せ方のアドバイスを頂けて感謝しています。

 

【略歴】

1983年   東京都生まれ
1983年〜1990年   アメリカ/カリフォルニア州/ サンディエーゴ
1990年〜1996年   日本/東京
1996年〜1999年   シンガポール/シンガポール日本人中学校/卒業
1999年〜2002年   日本/東京学芸大学高等学校/卒業

2003年〜2009年   日本/杉野服飾大学/卒業

2009年〜    (株)ワールド/VMD/入社
2019年7月   (株)ワールド/退社
【主な受賞歴】
2007年12月  JFW JAPAN CREATION TEXTILE CONTEST 2008 新人賞
2018年9月  第25回  ユザワヤ創作大賞展 グランプリ
2019年1月  第1回 タガワアートビエンナーレ 佳作賞
2019年3月  第54回 昭和会展 東京海上日動賞
2019年3月  第54回 昭和会展 ニューヨーク賞
2019年6月  ART OLYMPIA 2019 優秀賞
2019年7月     神奈川県美術展 入選
2019年11月   近代日本美術協会展 新人賞
2020年2月   FACE 2020 損保ジャパン興亜美術賞 入選
2020年9月   SICF21 オーディエンス賞&ワコールスタディホール京都奨励賞

【主な活動】

2009年7月  水戸芸術館 展示
2009年9月  水戸芸術館 東京巡回展 展示
2019年4月  新宿三越伊勢丹 展示
2019年10月   パリ 2019 ART ELYSEES 出品
2020年8月   新宿伊勢丹ReStyle THE POWER OF CHOICE 展示


オーディエンス賞A日程

 

矢口由奈

 

<作品タイトル>

『近くて遠いどこかの世界』

 

<作品について>

「もしかしたら、こんな世界があるかもしれない」をテーマに全6作品展⽰しました。

それぞれの作品は、夜どこかで出会す⽉や、⽇々姿を変える建造物など、どれも私の⽇々の⽣活のちょっとした出来事がきっかけとなっています。

全6作品のうち、4作品は実際にハンドルを回すことで動くからくり作品です。これらの作品は、動かすことでその作品に込められた物語も動き出します。また、からくり作品に加え、今回初めてストップモーション・アニメをしました。

画⾯ひとつで様々な表情、動き、場⾯が表現されるアニメの世界は、⽴体作品とはまた違った⼀⾯を私たちに⾒せてくれます。

⼩さな作品ひとつひとつが、⼈々を現実世界から別世界へと連れて⾏ってしまう装置となっています。
<受賞コメント>

ひとつひとつ、⼩さな作品の中にいろいろな世界を込めました。

その世界をたくさんの⽅々に触れていただき、また、評価していただけたこと、⼤変嬉しく思います。

私の作品たちが、この世界の誰かの、何かのきっかけになりますように。ありがとうございました。

 

 

【略歴】

1994年神奈川県⽣まれ

2017年武蔵野美術⼤学造形学部空間演出デザイン学科卒業

【主な受賞歴】

2017年「武蔵野美術⼤学芸術祭展⽰⼤賞」デザイン部⾨最優秀賞/来場者賞受賞

2017年「武蔵野美術⼤学造形学部空間演出デザイン学科卒業制作展」最優秀賞受賞

2019年「IAGAWARDS2019」アトリエムラギャラリー賞/オーディエンス賞受賞

2020年「SICF21」オーディエンス賞受賞

【主な活動】

2016年「武蔵野美術⼤学芸術祭展⽰⼤賞」(武蔵野美術⼤学/東京)

2017年「武蔵野美術⼤学造形学部空間演出デザイン学科卒業制作展」(武蔵野美術⼤学/東京)

2017年「Discovery展」(SpaceUnicco/東京)

2018年「江⼾⻑屋滞在制作展-隅⽥川森羅万象墨に夢-」(三軒⻑屋旧邸/東京)

2019年「IAGAWARDS2019」(東京芸術劇場/東京)

2020年「ARTPOINTSelection展」(GALLERTARTPOINT/東京)

2020年「SICF21」(Spiral/東京)