SICF18 グランプリアーティスト展
東城信之介 『Cover up the ここ』
会期:2018 年 1 月 9 日(火)- 14 日(日)
会場: ショウケース(スパイラル1F)
主催: 株式会社ワコールアートセンター
企画制作: スパイラル
SICF18 Grand Prize Artist Exhibition
Shinnosuke Tojo “Cover up the KOKO”
Dates: January 9th – 14th , 2018
Venue: Showcase (Spiral1F)
Organized by Wacoal Art Center
Planned by Spiral
一枚の金属板から立ち現れる、一回性のイリュージョン
2017年5月に開催した SICF18(第 18 回スパイラル・インディペンデント・クリエーターズ・ フェスティバル)に於いて出展クリエーター150 組の中からグランプリに輝いたアーティスト・東城信之介による個展『Cover up the ここ』を 開催しました。
わずか0.3mm厚の鋼や銅など多種多様な金属板を酸化させたり、その表面に細かい傷をつけることによって、素材の奥にも手前にも不思議なイリュージョン空間が生み出された、作品の数々。観る者の視力や見る角度、光などさまざまな環境や条件によって、まるで生き物のように絶えず変化して目の前に立ち現れる表情は、レンチキュラーやホログラムとはまた違う、未だかつて経験したことのない視覚体験へと私たちを誘います。SICF18では、自在にイリュージョン空間を生み出す精妙な技術力と、絵画と彫刻の境界を巡る美術史上の議論を想起させながらも、なお新しい道を提示したことが高く評価され、グランプリ受賞に至りました。
本展は、各国のアートフェアへの出展や、中之条ビエンナーレ(群馬)の立ち上げメンバーとして活躍するなど、長くキャリアを積む一方で、東京のアートシーンにおいて登場する機会が少なかった東城の、東京・青山での初の個展となりました。
◼ 出展作品について
ータギングシリーズ
時間経過や誰かが触れた痕跡をなぞり、上書きして自分を残すことを目的とするタギング(Tagging)というシリーズの新作を発表します。過去には工業製品、車、橋など硬質で重厚な素材にタギングを行ない、そこにあった形と意味を共に解体することで自身の存在を付与していくようなインスタレーションを展開してきました。本展では、ギリシャの街中に残された落書きを撮り溜めた写真がタギングの対象となります。
ーなぜ、ギリシャの壁画を青山に
経営破綻した現代のギリシャでは、2000年前の豊穣の時代の痕跡を今に留めたまま街が存在し、道端には長い時間に起きた変化への複雑な思いや感情が湧き出るかのように無数のグラフィティが存在するのではないかと語る東城。その一つひとつに、人の内に眠るパワーや喜び、もがきなどを見出す東城は、一方で整然とした東京・青山に主張のなさを感じます。開発が繰り返され、過去をかき消し、思想すら蓋をするかのようにして生活を送る日々の中で、自身や周辺、過去や未来との対話を促す時間と空間の意義を、鑑賞者に投げかけようとします。