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受賞者一覧

SICF19 受賞者一覧


 

SICF19 EXHIBITION グランプリ

 

 

 

 

石川佳奈

 

<作品タイトル>
どう生きたら良いのか(スペース)分からない

 

<作品について>
「どう生きたらいいのか分からない」くらい漠然とした答えのないようなことまでググってしまう自分がいる。同じことをしているのは私だけではない、と言えるのは既にネットの中には誰かも調べたであろう繊細な悩みや回答で溢れているから。
色々な意見を見たつもりでも結局自分や似た人の調べたことの範囲内を放浪し、思考の外側へ行く方法を見失うーそんな今の時代だからこそ感じた違和感をきっかけに、2つの映像作品を制作した。
一つは、山手線を一駅ごとに降り「どう生きたら良いのか分からないんですが、どうしたら良いと思いますか?」と街の人に唐突にインタビューをし、合計29人の回答まとめたもの。もう一つは、スマホで「どう生きたらいいのか 分からない」と調べ、画面をスクロールするごとに表面についたルーレットが回り、検索エンジンが見つけてきた回答を読み上げながら私自身がgoogleのロゴ色のツイスターゲームをする映像。
殆ど変わらない位置にいながら難しい姿勢をとらせるツイスターと、東京の中心地を経由し同じところに戻ってくる山手線を選び、一周した時に何か見えてくるものがあるのでは、と希望を持ちながら自分の外側へ行く方法を模索した。

 

<受賞コメント>
この作品を作ったことで、自分の興味を作品を介して他の人に伝わるような形にできるようになってきたのかな、と初めて少しだけ実感することができました。そんな作品でグランプリをいただけたことは、今後進んでいく上での励みになり、嬉しいです。これからの1年で表現媒体について研究し、どれだけ進めるのか、チャレンジするような気持ちで制作していきたいです。
関わっていただいた全てのみなさま、ありがとうございました。

 

<審査員コメント>
■ 石田尚志(画家・映像作家、多摩美術大学准教授)
もともと工芸の勉強をされていただけあって、ファイルに収録されていたスマートフォンのスクロールをテーマにした親指筆跡絵画シリーズの繊細さとモノとしての強度がこの作家の根幹にあると思った。その微細な身体的運動が都市空間へと拡張され、今回の映像作品へと展開したのだろう。荒削りだが、その身体的な熱量を評価したい。モノとして結実することへの欲望と、形にならないことへの欲望が拮抗しているような作家の相反する側面が魅力だ。
ースパイラルでの個展開催へ向けてのコメント
いわゆるメディアアートとか、いわゆる現代美術とか、あるいはドキュメンタリーといった「形式」に落ち着く必要はないと思います。ご自身が作品で引用したスティーブ・ジョブズのように、自身の創造行為が呼び寄せる身体の疼きに正直であることが、常識を壊す新しい表現を拓いていくのだと思います。

■藪前知子 (東京都現代美術館 学芸員)
全てをインターネットの検索に委ねる私たちの現在の生は、すでに全てがあらかじめ自分たちの外に決められており、そのルールをたどっているだけ、と言えるのかもしれない。石川佳奈の作品は、その姿を戯画的に描きつつも、単なる風刺を超えているという点で、他の作品とは一線を画していた。彼女は、自身の身体を社会の只中に放り込み、その生々しい感覚を、居心地の悪さとして私たちの中に呼び覚ます。この作品を見る者全てが、自分自身に向けて批判の的が向けられている、当事者なのだと認識することになる作品の強さは出色だった。
ースパイラルでの個展開催へ向けてのコメント
シニカルに自分たちの姿を描いた作品だが、そこには、彼女自身がこれを作らなければ超えられないものがあるという切実さが感じられ、そこが荒削りな作品の魅力にもなっていた。作品として洗練されていくことは、コンセプチュアルな演劇性を強めていくことと同義だろうが、初発的な動機と生の感覚を忘れずに大きく羽ばたいてもらいたいです。

 

【略歴】
1988年 東京都生まれ、東京都在住
2010年 女子美術大学 芸術学部 工芸学科 織コース卒業

【主な受賞歴】
2018年 SICF19 EXHIBITION グランプリ受賞

【主な活動】
2018年 「ワンダーシード2018」(トーキョーアーツアンドスペース本郷/東京)
2017年 「しんじてたものに凹(あな)があいてた」(小金井アートスポット シャトー2F/東京)
2015年 「Pop Japan」(Me & Art/シドニー)
2014年 個展「众」(The Artcomplex Center of Tokyo/東京)
2013年 「Stella Nova」(The Artcomplex Center of Tokyo/東京)
2012年 個展「依存性過剰プレゼント症候群」(atelier bemstar/東京)
2011年 個展「もっと完璧な名前を頂戴★」(admin gallery/東京)

 


 

SICF19 EXHIBITION 準グランプリ

 

 

大平真梨

 

<作品タイトル>
Eden

 

<作品について>
Eden – 人が善悪を知る前の世界であり、人間が忘れてしまった根源の記憶 –
私が想い描く「Eden」(エデン)のイメージを陶磁器でかたちづくりました。
私は、私たちが生きるこの世には「美しい」「醜い」「優しい」ことや「残酷」であると「私たちが認識する世界」があると考えます。そして私は、それらの人間にとって都合のよいものや不都合なもの全てが「在る」ことをこの世界(宇宙)はただ無条件に許していると思っています。
「愛とは許すこと」と言いますがそれならば全ての喜びや悲しみ、苦痛や無情ですら内包し、存在することを許すこの世界そのものが「愛」でできているのではないかと思うのです。
全てが存在することを許されるのなら私は選択したいのです。私自身や他人に投影して見える残酷さも、拒絶したくなるようなこともすべて無いものとするのではなく、それらをすべて「愛」に変換していくということを。
私は全てが愛に変換されたような世界を、人智を超えた世界であり楽園とされる「Eden」というイメージに投影して見えるのではないかと考えました。そして、人の中にはそれぞれのEdenがすでに存在しているのかもしれません。
少し視点をずらして、眼前の景色が今までよりも透明で鮮やかになるのだとしたら、その視点は人にとっての新たな創造の指針になりうるのではないかと考えます。そしてそんな景色が見てみたいと私の祈りのようなイメージをかたちにしました。
 

<受賞コメント>
今回SICF19に応募した理由の一つは、SICFが作品のジャンルを問わない様々なメディアによる表現が集まる場であったことです。私はこれまで陶磁器で制作をしてきました。今を生きる私が、人の歴史と密接に関わってきた素材である陶磁器を用いて表現することの意味を考え、新しい表現に挑戦する作品が集まる中で、どのように私の作品が存在するのかを経験できたことは貴重な体験でした。本当にありがとうございました。

 

<審査員コメント>
■平田晃久(建築家、京都大学准教授)
技術力と完成度は最も高かったのではないだろうか?グロテスクなモチーフさえ、作品としてきちんと昇華する力を感じた一方で、造形的にさらなる新鮮さが期待できるようにも思った。

■大田佳栄 (スパイラル チーフキュレーター)
緻密なワークや、物語性のある作品作り、ポエティカルなテーマがひとつに込められており、技術力も高く、ひと目で見入る力がありました。活動スタイルにもユニークさがあり、今後の作品作りに与える変容などに期待が持てました。

 

【略歴】
1986年 東京生まれ
2009年 多摩美術大学工芸学科 卒業
2011年 多摩美術大学大学院美術研究科修士課程工芸専攻 修了
2011-2015年 多摩美術大学工芸学科陶プログラム 助手
2015-2018年 共立女子大学家政学部デザイン・建築学科 非常勤助手

【主な受賞歴】
2018年 SICF19 EXHIBITION 準グランプリ

【主な活動】
2018年 SICF19 (スパイラル/東京)
2018年 「陶×藝×術」展 (FEI ART MUSEUM YOKOHAMA/横浜)
2017年 「C pieces」展 (アキバタマビ21/東京)
2016年 “The Decor Show 2016” JAPAN Pavilion(Singapore Expo/シンガポール)
2015年 MAISON&OBJET PARIS(Paris Nord Villepinte/パリ・フランス)
2015年 “Designersblock milan edition 15” Milan Design Week(Ex-Ansaldo complex, Zona Tortona/ミラノ・イタリア)
2014年 アジア現代陶芸展(金海クレイアーク美術館/韓国)
2014年 個展「大平真梨 展 in SHIBAURA HOUSE」(SHIBAURA HOUSE/東京)
2014年 個展「大平真梨 展」(大衆酒場 大平屋)
2010年 第8回CO-CORE国際講評会(清華大学/北京)
2010年 アジア現代陶芸展 −新世代の交感展−(ソウル/弘益大学校美術館)
2010年 第7回CO-CORE国際講評会(多摩美術大学/東京)
2009年 第5回CO-CORE国際講評会(弘益大学/ソウル)
2009年 アジア現代陶芸展 −新世代の交感展−(陶磁資料館/愛知)
 


SICF19 EXHIBITION 準グランプリ

 


 

Mimoko Wakatsuki

 

<作品タイトル>
SOFT DIVIDER – Mesh softly divides the world. –

 

<作品について>
日常の見慣れた風景には多くのメッシュ状の素材が潜んでおり、それらは何かを区切るための「仕切り」として使われていることを発見した。仕切りに隙間のあるメッシュを使うことで、内と外が曖昧になり視覚的に開放感が生まれる。もはや仕切られていることにさえも気付いていない。それ程にメッシュはやさしい仕切りとして存在しているのである。そこで、私はメッシュをSoft Divider (やさしい仕切り)と呼ぶことにした。
衣服もまた身体の内と外とを分ける仕切りである。衣服という仕切りは身体を守ったり、ラインをぼやかしたり、強調したりしながら、裸の状態よりもよく見せるためのものだと考えている。しかし衣服の定義は不安定だ。
この鎧を模した仕切りは、ばらばらのピースにもなり得、付属の紐で結び合わせると肩にひっかけて身に付けることもできる。メッシュ状の生地が何層か重ねられているため身体の輪郭はぼやけている。人間の急所である心臓とお腹のパーツは取り外し可能になっており、守るという機能は曖昧になっている。それでも衣服と呼べるのだろうか。

 

<受賞コメント>
自分が魅力に感じたこと、興味のあることをまとめて外に出してみたら、予想外に大きな反響をいただけたのでとても嬉しく思います。ちょうどこれからどう活動して行くのかと試行錯誤しているときの受賞となりましたので、良いきっかけになったと感じています。他分野の方々からご意見いただけたのは、良い経験となりました。ありがとうございます。

 

<審査員コメント>
■金森香(AWRD編集長・プランナー)
テキスタイル出身らしい着眼点で、ジャンクな素材や日常的な風景なのに、それをモードっぽい仕上がりにする手腕は秀逸。表面的には意味深長なので深部を突き詰めると、内奥にあるのは「コンセプト」ではなく「素材」であるということろに独特の作家性を感じました!

■栗栖良依(SLOW LABEL ディレクター)
なにこれ?というビジュアルインパクトがあった。そして、リサーチブックからメッシュへの愛が伝わってきた。
SOFT DIVIDERというコンセプトをとことん突き詰めていって、アートでもデザインでもファッションでもない、新ジャンルを築き上げることができたら面白いと思う。

 

【略歴】
1992年 東京生まれ
2014年 Gerrit Rietveld Academie TXT(Textile) 短期交換留学
2015年 多摩美術大学生産デザイン学科テキスタイルデザイン専攻卒業

【主な受賞歴】
2018年 SICF19 EXHIBITION 準グランプリ

【主な活動】
2014年 Studium Generale Rietveld Academie 2014 / VOICE ~ CREATURE OF TRANSITION (Brakke Grond/Amsterdam)
2015年 多摩美術大学生産デザイン学科テキスタイルデザイン専攻 卒業制作展・大学院修了制作展2015 (spiral/東京)
2016年 SPEED FLAT 2016 (アクシスギャラリー/東京)
2018年 SICF19 (spiral/東京)

 


SICF19 EXHIBITION 石田尚志賞

 


 

村岡由梨

 

<作品タイトル>
透明な世界

 

<作品について>
2018年現在の「私」と「世界/社会」の関係性を表した、私と娘たちのポートレート。
私の作品では、様々な「色」や、「立方体」「眼鏡」などのモチーフが重要な意味を持っている。例えば、「白」「黒」「立方体」は、「私の核(私=パラドックス)」を表す。「赤」は、私の中の「女性性」及び「現実」を、「空色」は、「イデア」「思春期」を、「黄緑色」「眼鏡」は、私の夫を表す。
これまで私は、これらの色やモチーフを混ぜ合わせたり、時には対立させたり、逆説的なアプローチによって内省的な世界を表現してきた。それに対して今作は、「世界/社会における私(たち)」について思いを巡らせた、初めての外交的な作品となる。これは私の内部と外部で起こる激しい二項対立の物語。「私」と「世界/社会」の間を行きつ戻りつしながら、娘たちは私的な存在から社会的/普遍的な象徴へと変化し、「赤」の定義は「生命」に拡張、手足を失った(無力で宗教的な)ダルマとして登場する。「白」と「黒」は単純な二項対立の枠を超えて、「灰色」の概念を孕み出す。そして様々な色が混じり合った世界は、いつしか「透明」になる。
「個」を貫き通せば、それはやがて「世界」となる。それは、私が創作活動を通して目指す地平でもあり、この世界の有り様も表しているのではないだろうか。

 

<受賞コメント>
鑑賞者のネガティブな反応が作者にダイレクトに伝わる今回の展示スタイルは、私にとって想像以上に苛酷な体験となりました。展示を見にきた主治医の先生に、危うく出張カウンセリングを受けるところでした。今回のSICFに参加したことで、私の中の疎外感や孤独感はより強くなりましたが、裏を返せば、私には自分のやりたいことをやりたいようにやる自由がある、ということだとお〜文字数制限のため略〜がとうございました!

 

<審査員コメント>
■石田尚志(画家・映像作家、多摩美術大学准教授)
内的自己を直視し徹底的に向き合うことを通して、スキゾフレニアの精神世界を作品として結実させている。重要なのは、その表現が個人の解放だけではなく他者にも開かれたものとして、大きな救済を感じさせる仕事となっている点だ。作品に登場する子供や象徴的に登場する夫の存在が、何よりもこの作品をひらかれたものにしている。

 

【略歴】
1981年東京生まれ。日本女子大学附属高等学校中途退学、イメージフォーラム付属映像研究所卒業。
一貫して「セルフポートレート」にこだわった自作自演の映像・写真作品などを制作、出演・美術・撮影などのほとんどを自ら行う。
統合失調症の治療に伴い、2009年より作家活動を休止、2016年本格的に再開。2児の母。

【主な受賞歴】
2003年 ブロードバンド・アート&コンテンツアワードジャパン(BACA=JA)2003 映像コンテンツ部門 優秀賞 他
2005年 せんだいアートアニュアル2005 グランプリ(smt賞)、飯沢耕太郎賞・田中秀幸賞・明和電機賞
2014年 第9回タグボートアワード 準グランプリ
2016年 14回「1_WALL」写真部門 審査員奨励賞(飯沢耕太郎選)
2016年 イメージフォーラム・フェスティバル2016一般公募部門「ジャパン・トゥモロウ」 優秀賞
2016年 ALTERNATIVE film/video festival 2016(セルビア)/important Cinematic Works選出
2017年 第12回札幌国際短編映画祭 スペシャル・メンション
2017年 19th Paris Festival for Different and Experimental Cinema(フランス) Honorary and non-hierarchical award

【主な活動】
<展示>
2006年 せんだいアートアニュアル2005 smt賞記念 村岡由梨個展「yuRi=paRadox~眠りは覚醒である~」(せんだいメディアテーク)
2008年 村岡由梨個展「花の起源」 (新宿眼科画廊)
2014年 第九屆日本當代藝術【TagboatAward】特展(Galerie F&F/台湾)
<上映>
2003年 ブロードバンド・アート&コンテンツアワードジャパン(BACA=JA)2003
2006年 FLEXFEST (Florida experimental film/video festival) 2006(アメリカ)
2016年 イメージフォーラム・フェスティバル2016
2016年 2nd KuFF the Kumu Art Film Festival(エストニア)
2016年 ALTERNATIVE FILM/VIDEO 2016(セルビア)
2017年 8th Cairo Video Festival(エジプト)
2017年 13th IAWRT Asian Women’s Film Festival(インド)
2017年 Athens International Film + Video Festival(アメリカ)
2017年 17th Media Art Biennale WRO 2017 DRAFT SYSTEMS(ポーランド)
2017年 16th International Kansk Video Festival(ロシア)
2017年 19th Paris Festival for Different and Experimental Cinema(フランス)
2017年 第12回札幌国際短編映画祭
2018年 村岡由梨作品特集 Pugnant Film Series:Close-up to Yuri Muraoka(yuRi=paRadox) (ギリシャ)

 


 

SICF19 EXHIBITION 金森香賞

 

内田聖良

 

<作品タイトル>
くまのかみのけ

 

<作品について>
ある人が亡くなった時、その人の持ち物、服、住んだ場所は、その人生ー物語を語る断片となり、他者によって読み解かれる。どこかで買ったお土産、誰かから貰ったキーホルダー、愛用したカバン…、それらを全く使わなくなっても後ろ髪を引かれて捨てられないのは、そのモノの向こうに、土地や人、自分の記憶や自分自身の断片―「気配」を感じるからではないだろうか。
現在私は、実家に住む母親と「片付けのような共同作業」によって作品作りを行っている。母は駅ビルでもらえる紙袋ひとつからも記憶を引き出し、その語りの聞き手になると、物品を処分する気持ちの整理に繋がることもあった。この作業を通して、私は中古品が行き場所のないおしゃべりが埋め込まれた外部メモリとして機能していると感じた。そして、古く人々が個人的で切実な感情や生き辛さを昔話や民話によって共有していたように、現代においてそれらを他人に受け渡すものにできないだろうかと考えた。
本作品では、母が中古品から引き出した記憶をもとに執筆した断片的な物語に登場するキャラクターと、中古品、表参道で多くの人が利用するであろう地下鉄の路線のキーカラーを用いて、作者の口から語るための「影の物語」を制作する。そして、物語が現代の流通網に付着して流通することを試みる。

 

<受賞コメント>
しばらくグループ名義の活動をベースにしていたため、今回のような個人ベースの作品を見せることに不安がありましたが、数ある作品群の中から見つけていただき、評価していただけたことはとてもうれしいです。ここで出会ったみなさん、まだ会えていないみなさんに会える機会が増えるよう、これからも気を緩めず試行錯誤を続けていきたいと思います。ありがとうございました。

 

<審査員コメント>
■金森香(AWRD編集長・プランナー)
最初はあまり気に留めず通り過ぎそうになってしまった→ヘッドホンをして音声を聞く→うすきみ悪くなった→足がすくんで動けなくなった→引き込まれてしまったという展開でした。「物」から滲み出る念みたいなものに、人間の人生や生活が重なり合って、なんとも言えない不気味さを醸し出していました。人がいなくなっても(絶滅しても)残るであろう、物質文明の名残、物語の断片、といったものを想起さました。なんだか軍艦島に昔いった時の経験に似ていたんですよね。それはアート作品の鑑賞体験による感動とはやや異質のものではあるが、ノンジャンルのアワードだと思うと、こういう魅力こそ特筆すべきなのではないかしらと思い、選定させていただきました。

 

【略歴】
1985年 埼玉県生まれ
2009年 武蔵野美術大学造形学部油絵学科卒業
2015年 岐阜県立情報科学芸術大学院大学(IAMAS)メディア表現 修了
2016年〜 秋田公立美術大学 コミュニケーションデザイン専攻 助手
余白工事人、凡人ユニット(内田聖良+清水都花)としても活動

【主な受賞歴】
2018年 SICF19 EXHIBITION 金森香賞
2015年 WIRED Creative Hack Award 2015 ファイナリスト
2014年 第18回 文化庁メディア芸術祭 審査委員会推薦作品
2014年 若手芸術家・キュレーター支援企画 1floor 2014 選出
2013年 第19回 学生CGコンテスト Award SILVER (優秀賞)
2011〜2015年 アサヒ・アート・フェスティバルに「余白ネットワーク」採択

【主な活動】
2017年 あきたの美術2017(秋田県立美術館/秋田)
2017年 かみこあにプロジェクト2017 (上小阿仁村/秋田)
2017年 TRANS BOOKS(TAM コワーキング/東京)
2017年 RAM EXTRA 凡人ユニットのぼんおどり〜結婚ってなに?〜(秋田公立美術ギャラリーBIYONG POINT/秋田) ※凡人ユニットとして
2016年 凡人ユニットのぼんおどり〜結婚ってなに?〜 in 福知山 (山山アートセンター/京都) ※凡人ユニットとして
2015年 OVER THE IAMAS – イアマスを越えて ♯5 内田聖良 「’余白’の使用法 余白書店と道具」(gallery 16/京都)
2014年 若手芸術家・キュレーター支援企画 「1floor 2014『またのぞき』」(神戸アートビレッジセンター/兵庫)
2013年 「Bon Odori -What is marriage?- 」(FRIZE Gallery/ハンブルグ・ドイツ) ※凡人ユニットとして
2013年 「学生CGコンテスト受賞発表イベント CAMPUS GENIUS MEETING」(MIRROR/東京)
2012年 メディア・ジム 道具をつくる身体をつくる Document Media Gym (コーポ北加賀屋 NPO法人remo/大阪)
2010年 展示「LEDとリボン」(アーツ千代田3331東京アートポイント計画ルーム/東京)

 


 SICF19 EXHIBITION 栗栖良依賞

しかとまいこ

 

<作品タイトル>
無題

 

<作品について>
例えば、台所のシンクに吐き捨てたスイカの種とか、きらきら輝く川の水面とか、床にちらりと落ちた髪の毛とか、木の下から見上げた時の重なる枝とか、そういう絶対的に美しいものたちがこの世界には無数に存在していると感じていて、それらは日々私を通り破片として鮮やかに蓄積され続けています。
その破片を自分の中から取り出して、並べて、流れに任せて組み合わせたり、コントロールしたりしながら自分がぐっとくる何かに落とし込んで行きます。
作業の過程で感じるこの「ぐっとくる」感覚は、スイカの種に痺れたあの時の感情におそらく似ていて、適わないとは分かっていても、意図しないものたちが持つ圧倒的な美しさに近づきたい、それを越える何かを生み出したいという欲が私の手を動かしているのだと感じています。
また私にとって作品を作るということは、「この前ね、こんなキレイなものを見つけたんだよ」という、他者へのこどものような純粋な報告なのだと今回の展示を終えて気が付きました。

 

<受賞コメント>
この白い空間にただ自分の色と形を配置したいー その想いに誠実に展示が出来たことが、制作から離れていた私にとって何よりも大切でした。
そして、その作品を「一緒に仕事がしたいかどうか」という基準で選んでいただけたことが本当に嬉しいです。
今回改めて感じたもの作りへのときめきを忘れずに、このチャンスを楽しみたいと思います。

 

<審査員コメント>
■栗栖良依(SLOW LABEL ディレクター)
自分にとっての「心地よい」を貫くことも力だと思う。異分野の表現と交わり得る余白があると思うので、美術館やギャラリーの外に飛び出し、有機的な繋がりを2次元から、3次元、4次元へと発展させて、その力をアートで証明してほしい。

 

【略歴】
1984年生まれ 東京都在住
多摩美術大学情報デザイン学科芸術コース卒業後、タイ国立シルパコーン美術大学絵画学科に研究生として1年間滞在
現在は、ちょこちょこ旅に出掛けつつ絵とブローチ制作を行う

【主な受賞歴】
2018年 SICF19 栗栖良依賞

【主な活動】
個展
2005年 Hello×3 project Vol.2 恋バナでもしましましょうか展(テラスハウス左側)
2006年 屋上パズルゲーム展(鑓水青年美術館)
2011年 何かのいきものに囲まれる展(Gallery福果)

グループ展
2007年 no map展(BankART)
2010年 NO WALL Art and Friendship展(Kuru Sapha PrintingHouse Bangkok)
2013年 3331ArtsChiyoda アンデパンダン展
2018年 SICF19

 


SICF19 EXHIBITION 平田晃久賞 

 

西川千尋

 

<作品タイトル>
LIVING FONT

 

<作品について>
文字は常に人の心や身体と共存しています。自分の中にある感情や理屈、人に伝えたい欲望や人から受け取るメッセージ。文字は常に人と共に生きています。
デジタル社会の今、多くのメディアを通して使用されるフォントは、同一のデザインを有する集合体として様々な場面で活用されていますが、そこに表情や感情、動きを感じることはありません。文字に込められた人の心は、人の手で整理されたフォントによってどこかに置き忘れられてしまっています。
LIVING FONT -生きた文字-では、ひとつひとつが平面的で無機的に捉えられがちなフォントを人の体の一部に見立て、命を宿したような文字のなまめかしい表情から、置き忘れられた文字の生命感を思い出して欲しいと考えています。

 

<受賞コメント>
この度は平田晃久賞をいただき誠にありがとうございます。
ジャンルの垣根を超えて多くの方々に見ていただき、さらにこのように評価していただいたことをとても光栄に思います。
この経験を励みに、今後とも自身の制作活動をより一層精進してまいります。
ありがとうございました。

 

<審査員コメント>
■ 平田晃久(建築家、京都大学准教授)
幾何学的形象や意味のある形と、そうでないもののあいだにこそ、現代的な新しい「幾何学」の可能性があるではないだろうか。このフォントは身体性というか肉体性と幾何学の関係を問うような概念的鋭さとどことなくまぬけな面白さを合わせもつ。素材のつくり方・色の関係をもっと興味深くつきとめるとさらに良いのではないだろうか。

 

【略歴】
2018年 多摩美術大学グラフィックデザイン学科 在学中

【主な受賞歴】
2018年 SICF19 平田晃久賞

【主な活動】
2018年 SICF19(スパイラル/東京)

 


SICF19 EXHIBITION 藪前知子賞

 

Sacco

 

<作品タイトル>
八戸工場

 

<作品について>
なぜか、無数に伸びる配管などに関心を持ってきました。ひとつひとつの形はシンプルに存在していても、集まると生きて蠢いているようにみえてくる瞬間があり、そう解釈したくなる私の脳は勝手です。本作品は、青森県八戸市での企画展のため現地での取材に基づいて制作した作品に、手を加えたものです。外観としてのいわゆる工場の肖像しか知らなかった私でしたが、八戸の大規模工場の中に足を踏み入れ、臭いを嗅ぎ、息遣いを聞き、錆に触れ、超巨大な細部に囲まれて、わたしの工場への印象は拡大しました。そこで体得したフィギュラティヴなイメージが画面上で混ざり合うことで、冷たくて硬いと思い込んでいた工場がうみだす体温や蠢きを表現されているのではないかと思います。
今後もなぜこれをつくったのかという問いに、つくり続けることで答えていきます。

 

<受賞コメント>
この度は、このような賞をいただき大変光栄です。
また、今回の作品を制作するきっかけをつくってくださった八戸工場大学のメンバーの皆様、八戸市の皆様にもこの場をお借りして感謝申し上げます。
本作品を通して、自分の絵に対する欲求を再確認できたようにも思います。
絵画という広大な歴史にたいしてできるだけ誠実に、今後も画面にエネルギーを込め続けていきたいです。

 

<審査員コメント>
■藪前知子(東京都現代美術館 学芸員)
過去と未来、昼と夜、抽象と具象、美術史とサブカルチャー、現実とファンタジー・・・。これら全てを含みつつも全てを宙づりにし、どこでもない中間領域としての絵画を出現させている。既視感と新しさの狭間を掘り起こす独特の個性に、今後も大いに期待したい。

 

【略歴】
2009年 筑波大学芸術専門学群美術専攻洋画コース 入学
2012年 スウェーデン王立芸術大学留学
2014年 筑波大学芸術専門学群美術専攻洋画コース 卒業
2017年 筑波大学人間総合科学研究科 博士前期課程芸術専攻総合造形領域 修了

【主な受賞歴】
2012年 JCAA<明日の巨匠/ ルーブル美術館展> 入選(アートショッピング2012 Salon Art Shopping ルーブル美術館/パリ)
2013年 <ベラドンナアート展> 入選(東京都美術館/東京)
2017年 平成28年度筑波大学大学院人間総合科学研究科博士前期課程芸術専攻修了制作展 筑波大学優秀作品賞

【主な活動】
2013 個展 「ANATOMY」 (SEART Sweden’s Emerging Art/ストックホルム)
2015 個展「プランツ・ロマンス」(新宿眼科画廊/東京)
2016 個展「ENTERING THE FACTORY」(OuchiGallery/ニューヨーク)
2018 企画展「八戸・工場アート展…工場に惹かれる理由を探って…」(八戸工場大学/八戸市)

 


 

SICF19 EXHIBITION スパイラル奨励賞

 

小野愛

 

<作品タイトル>
ありふれた日々

 

<作品について>
ありふれた日々の中の些細な、けれど大切な記憶。
全てを覚えておくことはできなくて、大事なものが次々と消えてしまうようで怖い。
けれどそれらは積み重なり、輪郭を捨て溶け合いながら塊となって私の周りを取り囲んでくれている。
そう思うことができたら忘れていくこともそんなに怖くはない。
ありふれた、大切だった時間はいつもそばにある。
そんな思いを込めて、布に綿を詰め立体の作品を制作しました。
ひと針ひと針刺すことで形つくっていく過程を大切にしています。
千人針や背守りのように思いをひと針に込めるということ。
針で刺すという行為に特別な意味を感じています。

 

<受賞コメント>
これから先どこへ進みたいのか、その為に足りないものは何なのか考えるきっかけとなりました。もっと強い作品をつくれるように沢山の事を吸収していきたいです。また作品を見ていただけるよう頑張ります。

 

<審査員コメント>
■大田佳栄(スパイラル チーフキュレーター)
服飾から経歴をスタートさせつつ、現在は人と服を切り離さないというステップの中に芯の通るコンセプトがあるなと感じました。未だ大分という場を離れたことがないとのことでしたが、今後外界に出て、ぶつかり、自身の考えを磨いていただきたいです。

 

【略歴】
1989年 大分県生まれ
2011年 香蘭ファッションデザイン専門学校卒業
2011-2013年 ファッションデザイン塾COCOA

【主な受賞歴】
2018年 SICF19 EXHIBITION スパイラル奨励賞
2016年 第5回床の間アートコンペ 最優秀賞

【主な活動】
2018年 SICF19(スパイラル/東京)
2018年 Fragments展2018(GALLERY ART POINT/東京)
2018年 New Year Selection 2018(GALLERY ART POINT/東京)
2017年 SICF18(スパイラル/東京)
2016年 大分アートクロニクル(大分県立美術館OPAM/大分)
2015年 個展 二つの脳(フタバアパート /大分)
2015年 個展megumi ono exhibition(TAGSTA gallery/福岡)
2014年 個展ヒトリゴト(platform02/大分)
2013年 Art Project Oita 2013 循環 現代美術館(フンドーキンマンション/大分)

 


SICF19 EXHIBITION オーディエンス賞

 

TETSUJIN – AUDIO VISUAL (高橋哲人、モシ村マイコ)

 

<作品タイトル>
I am ☆ Star 2018

 

<作品について>
ホウキギターをしたあの頃のように、いつまでも夢を・・・
幾つになっても純粋に夢を追いかけたい。本作は人生に悩み抗い、再び夢に向かってぶつかって行く作者の魂の叫びである。
ロックスターに憧れ、掃除時間にしたホウキギター遊び。ホウキをかき鳴らすとエレキギターの音が響き、ステージの自分にスポットライトが当たるという妄想。ホウキをギターにして弾くことで、その夢が現実となり空間そのものが変わって行く作品を制作した。ギターの音が鳴り、演奏者に光が当たると自然に注目を集め、周囲の人々は観客となり、その場がステージへと変化する。それらが相互作用する事で演奏者はロックスターになって行く。
日常のメタファーであるホウキがギターに変化する事をトリガーとして、周囲の人々と演奏者の関係性・空間が変化して行く。その中で小さい頃の妄想の疑似体験する演奏者に、夢を忘れない事の大切さを熱く問いかけている。

 

<受賞コメント>
作品を体験して顔つきが変わっていく方、体験前後で意見が変わる方、場が変化する様子をしっかり噛み締める事ができました。体験が肝となる本作に、多くのお客さんが共感してくださった事を大変うれしく思います。今抱いている想い、感情を次の作品にぶつけて、お客さんとの間に更なる化学変化を起こしていきたいと思っています。

 

【略歴】
高橋哲人とモシ村マイコによるユニットTETSUJIN – AUDIO VISUALは、音楽と映像と身体性を軸に、生きる事とは何か、人と人との関係が変化し社会をアップデートしていけるような作品を作り続ける。

高橋哲人
1978年 神奈川生まれ、愛媛育ち、東京在住
1999年 高知工科大学情報システム学科中退
2004年 多摩美術大学情報デザイン学科情報芸術コース卒業

モシ村マイコ
1983年 長野生まれ、東京在住
2007年 武蔵野美術大学基礎デザイン学科卒業
2009年 武蔵野美術大学彫刻学科卒業

【主な受賞歴】
2018年 SICF19 EXHIBITION オーディエンス賞
2017年 アジアデジタルアート大賞展 インタラクティブアート部門 優秀賞
2017年 ものづくり文化展 2017 FabCafe賞
2017年 WIRED CREATIVE HACK AWARD 2017 ソニー賞
2017年 北九州デジタルクリエーターコンテスト2017 中谷日出審査員賞
2016年 アジアデジタルアート大賞展 インタラクティブアート部門 入賞
2014年 アジアデジタルアート大賞展 インタラクティブアート部門 優秀賞
2007年 ASIAGRAPH 2007 アニメーション部門 入賞

【主な活動】
2018年 SICF19
2018年 アジアデジタルアート大賞受賞作品展2017 (福岡アジア美術館/福岡)
2017年 Autodesk University Japan 2017  (ヒルトン東京お台場/東京)
2017年 遊べる!デジタルアート展2017 (アクロス福岡/福岡)
2017年 アジアデジタルアート大賞受賞作品展2016 (福岡アジア美術館/福岡)
2016年 遊べる!デジタルアート展2016 (アクロス福岡/福岡)
2016年 高遠 KONJYAKU STORY展 (信州高遠美術館/長野)
2015年 浦上天主堂プロジェクションマッピング(長崎浦上天主堂/長崎)
2015年 遊べる!デジタルアート展2015(アクロス福岡/福岡)
2015年 アジアデジタルアート大賞受賞作品展2014(福岡アジア美術館/福岡)
2013年 Merry X’mas! You’re Dish Jockey !!!(Barden Barden/東京)
2010年 ASIAGRAPH 2010(日本科学未来館/東京)
2009年 ASIAGRAPH 2009(日本科学未来館/東京)
2009年 TOKYO Contemporary Art Fair 2009(秋葉原UDX/東京)
2008年 ASIAGRAPH 2008(日本科学未来館/東京)
2007年 ASIAGRAPH 2007(秋葉原UDX Art Gallery/東京)
2005年 Electrofringe 2005(オーストラリア)
2005年 Straight Out of Brisbane 2004(ブリスベン/オーストラリア)
2004年 ヴァージンシネマx 森美術館 VCA 12(六本木ヒルズ/東京)

 


SICF19 PLAY グランプリ

 

劇団子供鉅人

 

<作品タイトル>
人力お化け屋敷

 

<作品について>
【どんなものなのか】
一言で言えば「見えるお化け屋敷」である。舞台上には、四つに区切られた空間がある(地面(あるいは床)に十字に線が引かれている)。2組に分かれたお化けたち(1組につき、5~10人程度)は、その空間に人力で(道具を使わずに)お化け屋敷を立ち上げていく。その際、観客の移動に合わせて、お化けたちは先に先に空間を埋めていく。つまり、2組で4つの空間を埋めなければいけないから、1つ目が終わり次第、2つ先の空間に走ってお化け屋敷空間を作らねばならない。2組のお化けは、観客の後を追って、ひたすら、走り、お化けを演じる。観客は、4つの空間を抜ければ終了であり、参加したい観客がいる限り、ひたすらそれが続く。上記の展開を司会者がしきり、煽っていく。
【見どころ】
その1)観客参加型
観客たちは小グループに分かれ、お化けたちの熱演を間近で鑑賞することができる。怖いと言うよりも、ただ、面白い。
その2)疲弊していくお化けたち
上演時間によるが、お化けたちは常に動き回っているので疲弊する。その様を見る面白さ。つまり、応援したくなる。
その3)参加しなくても面白い
当然。参加したくない観客もいる。しかし、この「人力お化け屋敷」の素晴らしいところは、見ているだけでも楽しいのである。見どころ、その1、2でも触れたように、「お化け屋敷を体験する人々のリアクション」「頑張るお化けたち、疲弊していくお化けたち」を眺めているだけでも面白い。
【総論】
いわゆる「参加型」の欠点は、普通のお化け屋敷がそうであるように、恐怖や喜びが「パーソナルなもの」にとどまり、なかなか「見世物」になりにくい所である。しかし、この「人力お化け屋敷」の素晴らしい点は「見る/見られる」の立場が常に入れ替わりながら、舞台上では常に「お化け屋敷」のパフォーマンスが続けられている所だ。お化けを応援することにより生まれる会場の一体感。学芸会や運動会のような暖かい眼差し。「人力お化け屋敷」が目指すのは、現代における新しい伝統芸能である。

 

<受賞コメント>
素晴らしい賞をいただきありがとうございます。正直言って、「ばかばかしい作品で場を破壊して帰ってやる!」というパンクな動機で参加したので、ただただ恐縮するばかりです。この受賞を機に「ばかばかしい作品で場を盛り上げて、観客をハッピーにして帰してやる!」というロックな動機で参加したいと思います。ピース!

 

<審査員コメント>
■栗栖良依(SLOW LABEL ディレクター)
結構な数のお化けをゴールデンウィークの南青山に集結させ、午後の心地よい光に包まれたスパイラルガーデンを、「一瞬」で血みどろの世界へと変貌させた。その気迫に、驚いたり、笑ったりしながら観ていたオーディエンスも、残り数分になった頃には、お化けと参加者にスポーツ観戦さながらの声援を送るという謎の一体感をも生みだした。圧倒的な10分間だったと思う。スパイラルとの出会いで、演劇の可能性をさらに拡げていってほしい。
■住吉智恵(アートプロデューサー、ライター)
本アワードの特性である、スパイラルの企画でタッグを組んで創作・発表するプロジェクトの可能性にもっとも近いアーティストだったことが第1の選考理由だ。空間と時間の限界まで目いっぱい詰め込む独特の手法は、安全な「場」にカオスを投入することで異化効果を上げていた。通りすがりの浮遊層をふくめた観客を巻き込むパワーも群を抜いている。片足を浮世、片足をあの世に置く物語づくりはある意味で現代的。現実対ファンタジーの構図をあからさまに提示する構造が観ようによってはヴァーチャル世界に依存する現代人を連想させ、批評的ともいえるかもしれない。今後はより一層、社会、都市、コミュニティとのつながりを創出する作品づくりが期待される。

 

【略歴】
2005年、益山貴司・寛司兄弟を中心に大阪で結成。
生バンドとの音楽劇から4畳半の会話劇までジャンルを幅広く横断。
主宰の自宅、空き家、船、アパートを破壊しながらなど場所を問わず演劇の可能性を食い散らかすフリースタイル演劇集団でもある。
現在は東京に拠点を移し勢力拡大中。4度に及ぶ欧州ツアー、台湾公演と海外遠征多数。

【主な受賞歴】
2014年 関西ベストアクト2位獲得「クルージングアドベンチャー3」
2013年 関西ベストアクト1位選出「コノハナアドベンチャー2」
2012年 関西ベストアクト1位獲得「幕末スープレックス」
2012年 CoRich舞台芸術まつり準グランプリ選出「キッチンドライブ」
2011年 関西ベストアクト3位選出「バーニングスキン」
2008年 関西ベストアクト3位選出「電気女夢太る」
2007年 第1回芸創CONNECT参加作品「157」コンペティションにてグランプリ受賞

【主な活動】
・近年の公演実績
2014年 ツアー演劇「クルージングアドベンチャー3」大阪市内の河川
2014年 「逐電100W・ロード100Mile(ヴァージン)」あうるすぽっとシェイクスピアフェスティバル2014参加
2015年 「組みしだかれてツインテール」シアター711
2015年 「真昼のジョージ」サンモールスタジオ
2015年 「重力の光」 駅前劇場
2016年 「真夜中の虹」駅前劇場
2016年 前田文化×子供鉅人「文化住宅解体公演」
2016年 音楽劇「幕末スープレックス」東京芸術劇場シアターイースト
2017年 「マクベス」本多劇場 劇場史上最多100人超出演!
2017年 第4次欧州ツアー「all(nigh + Ligh + righ +) ~オールナイトライトライト~」
2017年 「チョップ、ギロチン、垂直落下」 浅草九劇

 


 SICF19 PLAY 栗栖良依賞

 

HOYAPAI女将

 

<作品タイトル>
HOYAPAI女将の『クイズ!ほやっとチャ〜ンス』

 

<作品について>
私、太田和美は石巻にある牡鹿半島へ移住し、小渕浜というところにある「割烹民宿めぐろ」でHOYAPAI女将として働いている。業務内容は、お客様のお出迎えやお見送り、民宿の広報などその他民宿に関わるもの全て。そして時々、三陸海産物「ほや」の国内消費拡大を応援している団体や復興庁などと連携し、販促イベントを盛り上げ、地元のお祭りではハプニングと舞踏をかけ合わせたパフォーマンスを展開している。
 今回はそんなHOYAPAI女将が、東京出張!東京ではあまり知られていない「ほや」について某人気クイズ番組をオマージュした、クイズショーを実施。「ほや」が周知され、美味しい新鮮なものを日本全国で食べてもらえる環境をつくっていくためのきっかけとしたい。

 

<受賞コメント>
この度はPLAY部門審査員賞にお選びいただき、誠にありがとうございます。地域社会を舞台に活躍されている栗栖さんと出逢えたこと、賞をいただけたこと、大変光栄に思います。
HOYAPAIは現存する分野に収まらない、唯一無二の作品です。作家の意図と関係なく、HOYAPAIと出逢った人が各々との関係性を見出し、役割をつくり求めてくれる。これからもその出逢いと共存し、活躍の場を広げていきたいと思います。

 

<審査員コメント>
■栗栖良依(SLOW LABEL ディレクター)
HOYAPAI女将がいる割烹民宿めぐろ(石巻)に泊まりに行ってホヤを食べてみたいと思った。高値で取引されることだけがアートの価値ではないと思う。日常の暮らしと近いところにあるアーティストの覚悟と情熱が、世界をポジティブに動かすささやかな一助になると信じたい。

 

【略歴】
太田和美。宮城県仙台市出身。石巻市在住。東京造形大学造形学部デザイン学科室内建築専攻2010年卒。「愛」を題材に、人や街と自身の記憶を掛け合わせるインスタレーションを展開。2011年3月11日の東日本大震災後、仙台へ。現在は、三陸海産物「ほや」と女性と豊穣の象徴である「おっぱい」をオマージュした『HOYAPAI』を展開。2015年牡鹿半島へ移住し、割烹民宿めぐろのHOYAPAI女将として勤務。
【主な受賞歴】
SICF19 PLAY部門審査員賞 栗栖良依賞

【主な活動】
2008年8月 ワタラセアートプロジェクト 鐵道舞踏「ハナノハラハラ」 企画制作(渡良瀬渓谷鐵道)
2010年2月 レジデンス/卒業制作展 Finders Keepers「kagikko」(黄金町エリアマネジメント/横浜)
2013年3月 TOHOKU BEACH PROJECT「フジツボマン de ビーチクリーン大作戦」WS(南三陸町歌津町 長須賀海水浴場)  助成:公益社団法人 企業メセナ協議会 GB Fund
2013年4月 個展「海であそんでみた 展」(ON WORDギャラリー/仙台) 助成:公益社団法人 企業メセナ協議会 GB Fund
2014年6月16日〜7月13日 レジデンス/個展「bicycle reminiscences」 (日和アートセンター)
2014年7月〜現在 STAND UP WEEK、川開きまつり、ほや販促応援・インスタレーション 「HOYAPAI」始動 (石巻ほか)
2015年6月〜7月 HOYAPAI展示 民宿リニューアルオープン1周年記念(牡鹿半島「割烹民宿めぐろ」/石巻)
2016年6月〜現在 民宿リニューアルオープン記念 「HOYAPAI女将」始動(石巻ほか)
2017年3月 防潮堤企画「狐崎浜写真投影会」(牡鹿半島狐崎浜/石巻)
2017年6月 婚礼企画「狐の嫁入り行列」 企画制作(牡鹿半島/石巻)
2017年7月〜8月 RAF2017;シマワキユウ監督作品 映画「マツリマツリテ」主演制作
2017年7月〜8月 裏リボーンフェスティバル; HOYAPAIを通し、地元の方と牡鹿半島の魅力をSNS等で発信
2017年11月 朗読「ほや巫女様」with舞踏×上映会(牡鹿半島食堂いぶき/石巻)
2017年12月 ワークショップ「Fw:東北Weekly 東北発のほやアートをつくってみよう!」(LODGE Yahoo!JAPAN/東京) 主催:復興庁 ファシリテーター
2018年4月30日〜5月6日 SICF19 EXHIBITION /PLAY出展「HOYAPAI女将のクイズ!ほやっとチャーンス」(スパイラル/東京)

 


 SICF19 PLAY 住吉智恵賞

 

入手杏奈

 

<作品タイトル>
四月の日記

 

<作品について>
この作品は、2018 年4 月の日記を朗読し録音した音源に身体をあてがった作品です。創作当初は、奈良の旅行から帰ってきたばかりだったこともあり、漠然と、曼荼羅のような作品にしたい、という思いがありました。私にとって言葉とは、たった一文でも時に物語になりうる可能性を含んでいる宇宙のようなものです。そして身体にも物語があります。言葉と身体の物語が同居しながらも拮抗することで、究極のマイノリティがポピュラリティに向かうような世界を立ち上げたいと考えて創作しました。また、日記の一つのトピックになっている「登山」から派生して、作品ラストにはスパイラルの2階へ続くスロープを登山道と捉え、そこを登っていきました。
10 分間の中で、序盤は自分にとって手触りのある感覚や衝動を繋ぎ合わせて、そこから人類にとって圧倒的な「山」という場所へ視点を広げていく、顕微鏡から覗いているミクロな世界が望遠鏡を通して見る雄大な景色にスライドしていくような感覚がありました。

 

<受賞コメント>
この度は本当にありがとうございます。私の作品は、あくまで個人的な身体の衝動や感覚を出発点に創作しています。社会性や政治性といったこととはかけ離れていると自負しています。それでも自分にとっては、これが唯一、世界と繋がる方法です。そのことをこのような形で評価していただけたことをとても嬉しく思います。これからもっと心身共に鍛え、高みを目指していきたいです。

 

<審査員コメント>
■住吉智恵(アートプロデューサー、ライター)
まず、誰もがその伸びやかな身体に惹き付けられるが、端正な美しさだけでなく、むしろ意志的な強靭さをともなって、気を逸らさない。さらに、近年身につけた抑制のきいた表現によって、心情の震えや微細なユーモアをも漂わせる印象的な作品になっていた。5〜10分程度の小品を川端康成の『掌の小説』のような私小説集風に編んでいってもおもしろいかもしれない。ただ、静的な前半とのコントラストを作るように、終盤のスロープを使った動きはもっと開放的でダイナミックでもよかったと思う。

 

【略歴】
幼少よりクラシックバレエを学ぶ。
2007年桜美林大学文学部総合文化学科卒業。在学中よりコンテンポラリーダンスを木佐貫邦子に師事。
卒業後、ソロダンス作品の発表を始める。個人の創作活動と平行し、ダンサーとして様々な振付家の作品に出演。
演劇作品への振付、多数の音楽PV への振付、出演、美術家や音楽家とのコラボレーション等も行う。
2009年より「まことクラヴ」に参加。
2011年~2016 年「21 世紀ゲバゲバ舞踊団」の活動に参加。幅広い年齢を対象にワークショップを多数行う。
現在、桜美林大学にてダンス科目の非常勤講師を務める。

【主な受賞歴】
2014年 「第1回ソロダンサフェスティバル2014」最優秀賞
2018年 「SICF 19 PLAY」住吉智恵賞

【主な活動】
2013年 横浜ダンスコレクションEX2013 コンペティションI 出場(横浜赤レンガ倉庫1号館)
2015年 バルセロナGraner にて研修
2015年 入江雅人グレート五人芝居「デスペラード」出演(赤坂RED/THEATER)
2015年 ソロ公演「入手杏奈日常見附」上演(赤坂RED/TTHEATER)
2016年 演劇系大学共同制作公演vol.4 山本卓卓作・演出「昔々日本」振付(東京芸術劇場 シアターイースト)
2017年 第9回恵比寿映像祭「しとやかな獣」発表(ザ・ガーデンルーム)
2018年 ジェローム・ベル 埼玉版「GALA」出演(彩の国さいたま芸術劇場/埼玉)
2018年 SICF19 PLAY 「四月の日記」発表(スパイラル/ 東京)

 


 SICF19 PLAY 中村茜賞

 

たくみちゃん

 

<作品タイトル>
カリモノスコア

 

<作品について>
・準備時間で、お客さんに所持品(貴重品以外)を借り、集める。
・集めた物たちを線状に並べ、「楽譜」とする。
・その「楽譜」の上を身体で行き来しながら即興で言葉を抽出し「演奏」する。
・お客さんが一斉に自分の物を回収する。そのあとも、何もない空間で時間いっぱい演奏を続ける。

今回の作品では、言葉がどのように、日本語だからこそ、の現われをするか、を提示することに主眼を置きました。身体の動きはあくまで言葉により導き出される追従的なものとして意識しました。しかし結果的には身体は押さえようもなく前面に出てきます。物が回収されたあとの、言葉と身体のみとなる瞬間に狙いを集約しました。
私の作品はインプロなので、狙いの外側の予測外のことがいつも起こります。今回の発表におけるそれは、一つだけ回収されずに残った寝袋だったと思います。その持ち主は他の方よりも遅れておずおずと寝袋を取りに来たそうですが、私は気づかなかった。その瞬間に、この作品の「内容」が現れたのではないかと思います。(寝袋は、パフォーマンスの最後に私がお返ししました)。その「内容」とは、説明のしがたい幸せな何かだと信じたいです。

 

<受賞コメント>
インプロの作品を2011年の卒業制作「トランスフォーめいそう」から、蛇行しながらも続けてきておりました。今年度から作家名を変える、環境を変える、など色々と思い切った決断をしたところで作品がこのように評価され大変嬉しくありがたく思っております。表現者として、日本にいてどのように活動を進めていくべきか。それに関する何かがSICFにあると思います。これからも精進を重ねて参ります。

 

<審査員コメント>
■中村茜 (株式会社プリコグ代表、パフォーミングアーツプロデューサー)
即興パフォーマンスの新星。Tシャツにショートパンツ姿にパンチパーマが特徴的なたくみちゃんはパフォーマンスの時間が来るとぽつぽつと現れ、360度上階下階に散らばるお客さんに呼びかけモノを借り集めた。ペットボトル、メモ帳、杖、水筒、寝袋などなど、お客さんからの借りモノを次々に言葉へと変換していく。そこから広がるイメージは、そのモノが異国からこの場にたどり着くまでの時間や距離、プライベートとパブリックの境界などを緻密に描写していく。その時に集まったなにげないモノたちから広がるイメージは、5月4日のたった10分間にスパイラルギャラリーという場に偶然居合わせた人々の生活の軌跡を深く脳裏に刻んだ。演出効果を一切用いらず、自分とお客さんの関係性だけを用いて構成されたパフォーマンスに、即興パフォーマンスの醍醐味である現前性を強く感じた。

 

【略歴】
パフォーマンスを中心に活動。最近の発表に「横浜ダンスコレクション2018(aokidと共作)」「西荻映像祭(2017)」など。
俳優としても領域横断的に活動展開する。始末をかくメンバー。山山山看板俳優。今年度より橋本匠から作家名を変えた。

【主な受賞歴】
2018年 「SICF19 PLAY」中村茜賞
2016年 「横浜ダンスコレクション コンペティションⅠ」 審査員賞(Aokid×橋本匠として)
2015年 「BONUS 第2回 超連結クリエイション 牧神の午後編」りみっくす・おぶ・ふぉーん賞
2014年 「N.N.N.5」 Ring Ring Prize(aokid×橋本匠として)
2013年 「第9回 文芸思潮 現代詩賞」 入選

【主な活動】
出演・発表(抜粋)
2018年 SICF19 PLAY『カリモノスコア』表参道スパイラルガーデン
2018年 whenever wherever festival 2018 そかいはしゃくち『Nice to meet you ! And we…』北千住BUoY
2018年 横浜ダンスコレクション2018 Aokid×橋本匠 『we are son of sun!』
2018年 かくこと1『ことなることとこととならぬこと』お台場
2017年 東京芸術祭2017 APAF(アジア舞台芸術人材育成部門)ワン・チョン氏作品に出演
2017年 西荻映像祭 ビリヤード山崎
2017年 トランスフォーめいそう#2 ラスコーの洞窟とX 横浜blanClass
2017年 トランスフォーめいそう#都電荒川線 (コ本や 午後休とって逗子展関連イベント 都電荒川線車内)
2017年 始末をかくエキシビジョン『生活はふるさとのように上演されている』 三軒茶屋生活工房ギャラリー
2016年 KACトライアルプログラム・京都芸術センター
2016年 『kiss kiss bang bang 2.0』 アジア舞台芸術人材育成部門・東京芸術劇場
2016年 岸井戯曲を上演する#1文 横浜blanClass
2016年 sons wo: シティⅡ 桜台pool・浜松KIRCHHERR
2016年 『フリフリ』横浜ダンスコレクション2016・横浜赤レンガ倉庫(審査員賞・aokid×橋本匠として)
2016年 ダンス花アワード(ibis作品に参加)・神楽坂セッションハウス
2015年 BONUS 第2回 超連結クリエイション 牧神の午後編・原宿VACANT(りみっくす・おぶ・ふぉーん賞)
2015年 『HUMAN/human』N.N.N.after・STスポット横浜(aokid×橋本匠として)
2015年 island 5周年記念パーティー・六本木スーパーデラックス
2015年 祝120周年!スーパーワークショップパーティー!!・群馬県 前橋プラザ元気21
2014年 『フリフリ』N.N.N.5・STスポット横浜(Ring Ring Prize・aokid×橋本匠として)
2014年 大友良英 千住フライングオーケストラ 縁日・東京都中央卸売市場 足立市場
2014年 夏の芸術祭2014―次代を担う若手作家作品展・日本橋三越本店美術フロア
2013年 PARADISE AIR VIA#000・松戸PARADISE AIR 千葉県
2013年 六本木アートナイト2013・森ビル・アリーナ 東京都
2013年 第61回 東京藝術大学卒業・修了作品展 ・東京都美術館 講堂
2013年 橋本匠個展 TOKITOKOTOBA TO TITOKONOBA シャトー2F 東京都
2013年 小林あずさ個展でのパフォーマンス TWS-FMERGING2013・トーキョーワンダーサイト本郷

他の活動
「吉原芸術大サービス」を中心となり運営
演劇ユニット山山山(さんざん)の代表として上演多数
岸井大輔氏の演劇プロジェクト「始末をかく」メンバー

俳優としても領域横断的に活動多数。

 


 SICF19 PLAY 山城大督賞

 

新庄恵依

 

<作品タイトル>
ひろしまの家

 

<作品について>
私は現在広島に住んでいます。同じ広島に住む、篠田さんという方に小さい頃住んでいた家についてインタビューを行いました。篠田さんは私が広島に来るずっと前の、1930年代から広島で生活をしています。篠田さんが当時住んでいた家は今はもう失われてしまいましたが、その家を身体の身振りや動きで観客の前に立ち上げていくというパフォーマンス。

 

<受賞コメント>
今回たくさんの方に作品を見て頂くことが出来たので有り難く思います。これからの制作活動にとって貴重な経験をさせて頂きました。関わって下さったみなさまに感謝申し上げます。この度はありがとうございました。

 

<審査員コメント>
■山城大督(美術家・映像ディレクター)
創作することの責任、テーマへの使命感を強く感じた。(おそらく原爆にて)消失した「ひろしまの家」を、インタビューから読み解き作者の脳内に建設。その中を幽霊のような身体が彷徨う。舞台装置もなにもないミニマルなその様は、単なる表現のとどまらない「あらたしい記録」法に見えた。身体を一つの記録再生装置として、今後も「ひろしまの家」は更新されつづけるのだろう。経験と記憶の持った人が、それを持たない人にどう伝え実感させ/していけるか。力強い作品だった。

 

【略歴】
2014年 東京藝術大学音楽学部音楽環境創造科卒業
2017年 ブルグギービヒェンシュタインハレ芸術学校留学
2015年~ 東京藝術大学大学院美術研究科先端芸術表現専攻在籍

【主な受賞歴】
2014年 横浜ダンスコレクションEX2014コンペティションⅡ ファイナリスト
2018年 SICF19 PLAY 山城大督賞

【主な活動】
2014年 横浜ダンスコレクションEX2014コンペティションⅡ(横浜赤レンガ倉庫/神奈川)
2014年 居間theater「パフォーマンスカフェ」(HAGISO/東京)
2015年 「醤油芸術研究所」(讃岐醤油画資料館/香川)
2015年 「複雑なトポグラフィー:庭園」(特別名勝栗林公園/香川)
2016年 長島確のつくりかた研究所「休日再考」(山田荘/東京)
2017年 「Moving Horizons」(KMMN/カッセル、ドイツ)
2018年 SICF19 PLAY(スパイラルガーデン/東京)