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受賞者一覧

SICF20 受賞者一覧


 

SICF20 EXHIBITION グランプリ

 

タナカマコト

 

<作品タイトル>
タダのカミ様

 

<作品について>
会計時、無条件に手渡されるレシートという存在。
目もくれずに受け取り、捨て時のタイミングを失って財布の中にたまっていく。財布を覗く度に煩わしい気持ちが生まれる。
小さくて黒い文字が羅列されているその紙で暇つぶしに顔を切ってみたら、お経のように見えてきたので、これで神様を制作しようと考えた。
お店ごとに違うレシートの長さや文字のデザイン等、不自由さのある中で、私は商品名を残すポージングや、店名を残すデザインを頭の中で考えながら下書き無しで一体一体制作していった。
レシートはその人の日常が見えてくる。
制作中、ほぼ毎日袋飴とカフェラテを買っているレシートを見て、自分の身体が心配になった。
完成したレシートを額に入れて展示すると、ゴミ同然だったレシートが特別な存在に変貌を遂げた。
ご利益がありそうな、そんな気さえした。
日常生活の中で無意識に存在していたものに意識を向けさせる。
その「妙」が、滑稽で非常に面白かった。

 

<受賞コメント>
講評会で審査員の方がおっしゃっていた「レシート…お題ですね」の言葉にハッとさせられました。
お店から出されるお題(レシート)を見て、いかに独創的な神様を生み出すか…私が夢中で制作していたのは大喜利だったからかと気づきました。引き続き色々な大切り(オオギリ)に挑戦していきたいです。スピーチでは頭が真っ白になり感謝の気持ちを伝えられなかったのでこの場をお借りして。ありがとうございました。

 

<審査員コメント>

■金澤韻(現代美術キュレーター)

最初は、よく見かける、ゴミを利用した手癖のアートかと思いましたが、印字された文字を活かしながら切っていると聞いて見方が変わりました。買ったものがわかって、それが形にもなっている切り絵は生々しく、作家が「カミ」と称したように、ある種の美と意味が溶け合い、霊感をまとうものへと変化しています。

ースパイラルでの個展開催へ向けてのコメント

レシート以外のメディウムを使った、深い作品を期待します。安易な飾り切りに流れると、時間がもったいないので気をつけて。

■倉本美津留(放送作家)

人間の欲望の証拠とも言えるレシートを神様のフォルムにして浄化する行為。紙を神に。面白い。フォルムはそのレシートに宿りし神だ。大喜利である。買った商品の名称をしっかり残し切り絵して行く。なんの神であるかは、出来上がった形状と切り残した印刷文字によって一目瞭然となる。消費の種類の数だけ神様は存在する。タナカの切り絵によってその神々がこの世に出現して行くのだ。着想のセンスの良さと技術力を兼ね備えた作品。作家が制作を生涯し続けることで現代の八百万の神の全員の姿が可視化するかもしれない。そんなことに期待を寄せてグランプリに推した。

ースパイラルでの個展開催へ向けてのコメント

とにかく圧倒的な作品数を。そしてそれらを衣食住趣味仕事などなどにジャンル分けし、ジャンルごとに象徴するフォルムで配置してみるなど、全体像を大きく眺めても鑑賞者が楽しめるように工夫してほしい。

■大田佳栄(スパイラル チーフキュレーター)

緻密な作風が際立ち、ややもすると奇をてらうと考えられがちだが、そこに至るプロセス、各レシートに存在するなんらかの文字を残し意味性を付与させる点に、よい意味での執拗さと技に頼らない強いコンセプトを感じました。

ースパイラルでの個展開催へ向けてのコメント

お財布に残り、片手におさまるレシートという物理的限界を超えて、インスタレーションとしてどれだけ圧倒させられるものを作れるか、ここからチャレンジかなと思います。

 

【略歴】
1982年 東京生まれ
2006年 東京工芸大学芸術学部映像学科 卒業

【主な受賞歴】
2010年 汐博2010 シオサイト賞

【主な活動】
2018年 個展【変身-henshin-】 (サンシャイン展望台 SKY CIRCUS/東京)
2016年 個展【変身-henshin-】 (GALLADEGALANTE/京都)
2016年 NGT48 会場内 デザイン
2016年 SKYCIRCUS内 一部会場 デザイン
2014年 ニトリTVCM 制作
2014年 TOYOTAカレンダー2014 制作
2013年 MAJOLICA MAJORCA 10周年記念スペシャルムービー 制作
2012年 Gulliver アートカープロジェクト 参加

 


 

SICF20 EXHIBITION 準グランプリ

 

 

京森康平

 

<作品タイトル>
A-UN

 

<作品について>
私は国内外の装飾的な図柄に惹かれ、現代における装飾美術を探求しています。
装飾美術は西洋、東洋さまざまな文化が発展し、時に混じり合いながらその国独自のアイデンティティを形成してきました。
歴史やルーツを遡ることで国境や民族間を越えた、人と文化の深い繋がりを感じることができます。
今回は「阿吽(あ・うん)」をテーマに、2体が対になる作品群をデジタルツールを用いたミクストメディアで表現しています。
仏教のルーツとなった、インドのサンスクリット語の始まりの文字は「ア」、終わりが「ン」。
そして日本語の五十音の始まりも「あ」、終わりは「ん」。
奇妙な共通点を持ちつつ、異なる文化や言語を持っているもの同士は繋がっている。
その曖昧な境や文化の響き合いを汲みなおし現代の装飾絵画として描き出します。

 

<受賞コメント>
2年前にSICF応募したのが、作家としてのデビューだったので、2年越しにこのような賞をいただけてとても嬉しいです。
今回、展示ブースにこだわって制作しました。『阿吽』として左右に遂になる絵画を配置し、しめ縄を入り口に飾ることで、神聖なる場所との境を設け、阿吽の意味するものを連想させる構成にしました。空間の演出も評価していただけたことで、今後の作家活動において大きなヒントになりそうです。

 

<審査員コメント>
■アストリッド・クライン(建築家)

その場から身動きできなくなるような目もくらむ程の引力を放つ作品。至極のグラフィック構成、カラーバランスやディテイルのこだわり、「あうん」をテーマにしたところなど、彼の見事な作品を前にした誰もが当惑した驚嘆というにはまってしまいます。説得力のあるこの作品を純粋なアートと呼ぶか議論が生まれることも想像されますが、確かなのは、見た人の心拍が上がる興奮をもたらす、すべての称賛に価する素晴らしい作品だということです。
京森さんは間違いなく真のアーティストです。今後の作品も楽しみにしています。
■倉本美津留(放送作家)
作品の内容もさることながら、SICFの特徴であるブースレイアウトを非常にうまく利用していることに感心した。
この作者のブースだけ単なるブースではなく社になっていたのだ。ブースで鑑賞する=図らずとも参拝しているという構図。そのことを意識してのことであろう、展示された作品は全て阿吽の法則に則って描かれていた。独特のタッチ、鮮烈な色使いでインパクトある神々を阿形、吽形で揃えた。日本に根ざしながら南米を感じさせる独特の世界観、古来と未来を共存させる力量は、相当なものだと思った。
■ 菅野薫(株式会社電通 CDC / Dentsu Lab Tokyo エグゼクティブ・クリエーティブ・ディレクター/クリエーティブ・テクノロジスト)
何しろそもそも仏教の真言ですからね。大胆なモチーフ選択です。仁王像から琉球のシーサーまで、歴史上あらゆる形で表現しつくされた「阿吽」という伝統的なシンボルを扱っていながら、全く新しい感覚を感じさせてくれる点が圧倒的でした。
【略歴】
1985年 愛媛県生まれ。
2008年 milano ISTITUTO MARANGONI fashion master corse 卒業
【主な受賞歴】
2018年     第7回FEI PRINT AWARD   大賞
2019年     SICF20    準グランプリ受賞
【主な活動】
個展
2017年 「enso flowers」MIDORI.so2 gallery
2019年 「A-UN」THE MICRO MUSEUM

主なグループ展
2017年  Spiral Independent Creators Festival 18
2018年 「fragment2018」GALLERY ART POINT
2019年 「NAU21世紀美術連立展」 国立新美術館
2019年    Spiral Independent Creators Festival 20


SICF20 EXHIBITION 準グランプリ

 

奥直子

 

<作品タイトル>
無題

 

<作品について>

私はやきもので主に生物をモチーフにした作品を作っており、今回用いている狐面のネズミは、私が過去に開いた個展など展示の中で、何匹か(いても2、3匹)部屋の片隅やちょっとした凹みなどにさりげなく置き、「あれ、こんなのもいたのか」と、気づいた人がクスッと笑えるようなユニークなキャラクターとしてつくってきました。今までそのネズミのタイトルは『決死隊』でした。弱いネズミが狐のお面を被って精一杯に武装している。そういった作品でした。

そこで今回、その小さなネズミを数多く増やし、それを主役に、この小さな空間の中でうじゃうじゃと並べてみようと考えました。片隅にポツンといるととても弱々しく可愛らしくも思えるものが、集団になるとどうなるだろうか。そして皆お面を被っているから、これは匿名であるということにもなる。こうして匿名の個体が複数に、つまり集団となるとにより、ものの持つ力や事柄は、とても大きく変化するように思います。こういった現象は、今私たちの暮らしの中でいつでも起こり得ていることではないでしょうか。

 

<受賞コメント>

今回は、区切られた小さな空間での展示ということで、もの自体よりも空間としてどう見せるか。ということを重点的に考え、制作しました。そこでよりコンテンポラリーで観た人が楽しめるような空間になればと、個展のときなどとはまた違った、とても新鮮な気持ちで取り組むことができ、また多くの方に観ていただくきっかけとなり、非常に良い経験となりました。

今回の経験を生かし、これからももっと挑戦的な展示をしたいと、今後のプラン、楽しみの幅が増えました。今後も更に良いものを発表できるよう、奥直子は日々進歩して参ります。ありがとうございました。

 

<審査員コメント>
■金澤韻(現代美術キュレーター)
コンセプトと表現がきちんと結びついている点で卓越していました。ねずみという生き物の弱さと、匿名であること・集団であることの強さの対比、そしてその不気味さが、高い造形技術を伴って、明確に表れていました。
■菅野薫(株式会社電通 CDC / Dentsu Lab Tokyo エグゼクティブ・クリエーティブ・ディレクター/クリエーティブ・テクノロジスト)
陶芸としての技術も圧倒的で、身体の面の質感の違いなど絶妙なのはわざわざ言及するまでもないですが、なにより素晴らしかったのは、何も言わずとも作品からにじみ出る行間たっぷりの物語性。この展示での作品名は無題となっていましたが、お面を被って虚勢を張って立つこのネズミたちが普段は「決死隊」と名付けられている点も含めて、非常にチャーミングでした。
■大田佳栄(スパイラル チーフキュレーター)
陶作品そのものがもつ強いリアリティが、設定された物語とあいまって、かわいらしさと狂気を一度に感じさせるインスタレーションでした。SICFの会場の特性や観客目線を適切にとらえ、新しい陶の見せ方を期待させられます。
【略歴】

1988年 東京都生まれ

2012年 多摩美術大学工芸学科卒業

2014年 常滑陶芸研究所修了

現在愛知県常滑市にて制作

【主な受賞歴】

2013年 萬古陶磁器コンペ準グランプリ

【主な活動】

2015年 個展”生物博覧会”(FUMA CONTEMPORARY TOKYO)

2015年 長三賞常滑陶芸展

2016年 個展”inside”(奈良屋クラシック.素庵)

2017年 個展”TRANSFORMATION”(ギャラリーcera)

2018年 二人展”ショートストーリーズ”(ヴァリエテ本六)


SICF20 EXHIBITION アストリッド・クライン賞

 

花山ちひろ

 

<作品タイトル>
MARVEL

 

<作品について>

私たち人類は未だミクロの世界の全貌を捉えていない。菌や微生物は肉眼で見えるものはあるが多くは顕微鏡の中や写真などの平面でしかミクロの世界を知りません。しかし、存在する菌、微生物は全て立体です。立体にすることで身近に感じ、菌や微生物が人間に影響する現象(大別して発酵・環境・病気)を、近くて遠いミクロの世界に生きているモノたちが存在している必要性や重要性を第三者に感じてもらうため、ジュエリーという身に付けるアイテムを通して変化し続けている自然界の現象を背景に「自然界に存在する価値」というテーマをもってアートジュエリーとして表現を行ってます。

今回の作品は、外部から入り込んだ桿菌が体内を循環していくとその菌はどのように派生していくのだろうと疑問を持ち「分裂」といテーマをもって制作しました。体内の中で分裂し臓器のような形になりまた球体になっていく。そんな形が生まれているかもしれない。神秘的な世界を少しでも感じてもらえたらと思います。

 

<受賞コメント>

この度はアストリッド・クライン賞を頂きありがとうございます。

様々なジャンルのアートがある中で、このような評価していただいたことを大変光栄に思います。今回の経験を活かして作家活動に励んで行きたいです。

 

<審査員コメント>
■アストリッド・クライン(建築家)

微細なものがどんどん大きくなっていく自然界の細胞分裂からインスピレーションを得ているという花山さんの作品。彼女のジュエリーを見ると、サイズだけでなく重要性も確かに大きくなっていくプロセスを想像することができます。

ジュエリーは小さなものではありますが、貴重で、洗練された、細心の注意を払って作られているものです。花山さんのジュエリーはそのすべてを実現しています。これほど小さなスケールの繊細なフィリグリーがどのようにして作られているのだろうと驚かずにはいられません。近年、テクノロジーの発展とともに何を作るのも可能な時代になってきていることに正直少し飽き飽きした気持ちになりますが、そのような中で、人の手によって想像を超える素晴らしい物が生み出されることに改めて感動してしまいます。誇りをもって成し遂げられる手仕事の素晴らしさがいつも勝つのです!

 

【略歴】

1993年 愛媛県生まれ

2012年 新田青雲中等教育学校卒業

2016年 神戸芸術工科大学 先端芸術学部 クラフト美術学科 卒業

2018年 神戸芸術工科大学 大学院 芸術工学研究科 総合アートデザイン専攻 修士課程 卒業

2018年 神戸芸術工科大学 大学院 研究生

現在、神戸芸術工科大学 大学院 博士課程に進学

【主な受賞歴】

2016年 卒展「カオス2016」奨励賞・学生賞

2016年 第29回日本ジュエリー展Under26部門賞 受賞

2017年 金属工芸公募展「いまからまめさら2017」日中文化交流賞 受賞

2017年 JJA日本ジュエリーデザインアワード2017 新人大賞/JJF賞 受賞

2018年 卒展「カオス展2018」芸術工学賞

2019年 SICF20 アストリッド・クライン賞 受賞

第55.56.57回日本クラフト展 入選

【主な活動】

2014年 Routes(Gallery8/神戸)

2015年 日韓金属工芸交流展(GALLERY北野坂/神戸)

2016年 第55回日本クラフト(東京ミッドタウン・デザインハブ/東京)

2016年 第29回公募2016日本ジュエリー展(東京六本木/伊丹/仙台/名古屋)

2016年 日韓金属工芸交流展(韓国)

2017年 第56回日本クラフト(東京ミッドタウン・デザインハブ/東京)

2017年 SELECT11(AC gallery/東京銀座)

2017年 JEWELRY4校合同卒業展示(ヒコ・みづのジュエリーカレッジ1Fギャラリー/大阪)

2017年 いまからまめさら2017(清課堂/京都)

2017年 JJAジュエリーアワード2017(東京/香港/山梨)

2017年 日韓金属工芸交流展(GALLERY北野坂/神戸)

2017年 6人展(のばなArt Work/東京銀座)

2018年 第57回日本クラフト(東京ミッドタウン・デザインハブ/東京)

2018年 個展花山ちひろ(gallery C.A.J/京都)

2018年 CONTEMPORARY ART JEWELRY(ギャラリー杜間道/仙台)

2018年 9 Marvelous Jewelry Collection Ⅳ(ギャラリーおかりや/東京銀座)

2018年 日韓金属工芸交流展(韓国)

2019年 SICF20(スパイラル/東京青山)


 

SICF20 EXHIBITION 金澤韻賞

 

森田葵衣

 

<作品タイトル>
Blink-Blink

 

<作品について>

見つめ合う二人の時間が音と楽譜になる装置。

あなたがみつけた私のまばたき。私がみつけたあなたのまばたき。どちらも同じ音で「リン」となる。どれが私の音で、どれがあなたの音なのか。音のなかでフラットになる。同じようにして生きている、ということを確かめ合う。

 

-あそびかた-

向かい合わせに座った二人は、中の明かりが点いている一分間、見つめ合う。

相手のまばたきを見つけたら、手元のキーを押し、音を鳴らす。

中の明かりが消えるとき、二人の一分間の記録[まばたきの楽譜]が印刷される。

 

-おはなし-

あなたのことを知りたいけれど、私に分かることなんて殆どないように思える。それでもじっと見つめていると、まばたきをしていることに気がついた。今、あなたが目の前で、私と同じように生きているということを、その微かな動きが教えてくれる。私にできることは、それを数えることくらいかもしれない。

眠るときに羊の数をかぞえたり、瞑想のために呼吸の数をかぞえたり。数をかぞえることは、ここに居ながらどこか遠くへ行くための手立てのようだ。

あなたと見つめあい、またばきの数をかぞえあおう。私の立つ場所から、あなたの居る場所へ、ほんの少し近づくことができるように。

 

<受賞コメント>

顔を合わせずにコミュニケーションをとることが当たり前となった今、向き合うことについて考え直すきっかけになれるだろうかと思い、出展に臨みました。沢山の方に体験していただき、二人の関係性によって感じ方が変化するという点が大きな気づきでした。

今回の経験が1つの始まりになるよう、精進いたします。制作に携わっていただいた方々、いつも見守ってくださっている皆様に、心から感謝いたします。ありがとうございました。

 

<審査員コメント>
■金澤韻(現代美術キュレーター)
お互いのまばたきをカウントする装置。それだけのために作られた箱。でもこれをやると、向こう側に座る人の存在を強く意識させられる。例えば同じように二人で向き合うマリーナ・アブラモヴィッチのパフォーマンスに比べると、ちょっとやってみようかとなる、ゲームのような軽妙さがあって楽しい。紙に結果が印字されて出てくるのも、ウェットな生き物同士の交感を描きつつ、ドライでかっこいい。ずっとこうやって、ちょっとバカバカしく、でもほんとは真剣な、大きい作品を作り続けてほしい。

 

【略歴】
1996年 生まれる
2019年 東京芸術大学 美術学部 先端芸術表現科 卒業
現在、東京芸術大学大学院 美術研究科 先端芸術表現専攻に在籍。

【主な受賞歴】
2019年 SICF20 金澤韻賞

【主な活動】
2016年 [Esc] (東京芸術大学上野校地)
2018年 TRIP IN 1,2 (aube shibuya)
2019年 第67回 東京藝術大学 卒業・修了作品展 (東京都美術館)
SICF20 EXHIBISION (スパイラル)


 SICF20 EXHIBITION 倉本美津留賞

鈴木知佳

 

<作品タイトル>

名付けられた色の終わり 名付けられない色のはじまり

 

<作品について>
緯度経度を示した海岸や路傍等で採取した砂を色で識別して並べる − 砂と化してゆく時の標本 − として。
僅か1ミリ足らずの砂粒でありながらも、貝殻、石、ガラス、金属、陶、プラスチック等かろうじて元の素材が感じられます。色とりどりのそれは、風化して砂粒程に小さくなった、それでもかつて私たちの日々の生活のなかに存在していた何かでした。
― 赤い 青い 白い 黒い ― 古代の日本では、色はこの4色のみで、そこから、鉱物や植物等、自然に由来する色名が増えてゆきます。色の名前は自然の内に見出し名付けることで手に入れてきた文化のアーカイブでもあります。日用品として形を与えられた色が、役割を終え、姿形を失いながら色としか呼べないような単位となって自然の内で時を刻み続けてゆく様は、再び名付けられる前の色の起源へと還ってゆくかのようでもあります。
近年、海洋環境や生態に被害を及ぼすものとしてマイクロプラスチックの存在が危惧されていますが、ガラス、金属、陶、プラスチックも元を辿れば石油や鉱物、土、等の自然物から生成されたものです。人の営みも大きな意味では自然であるという視座から眺めてみるとき、砂となった欠片は人工物と自然物の対比を超えて物質としての生成と消滅の循環を体現しているようでもあり、日常の事物の行き着く果てとそのはじまりの起源を巡る人と自然の交歓とも呼べるような関係性がみえてきます。

<受賞コメント>
1600mm四方の空間で1mm足らずの砂と出合うことを想像してSICF20の展示に臨みました。
素材は何?どうやって着色してるんですか?といった質問に、並んでいるものが只々拾ったままの色、形の砂だとお伝えすると驚かれました。

一粒の砂を前に、それぞれの事物が過ごしてきた時間、場所へと想像を向ける眼差しが重なって、空間が満ちてゆくようでした。息をひそめ、みてくださった皆様、ありがとうございました。

 

<審査員コメント>
■倉本美津留(放送作家)

参加作家数150の作品中、最も小さく、そして、最もシンプルでストロングな作品だと感じた。個人的には、優れたアートの重要ポイントは、その作品に出会った瞬間に気づきがあるかどうか?ということだと考えている私にとって、この作品はまさにそれであったと言える。なんとなく掴んだ足元の砂に発見を見出す。そしてそれをできる限り簡潔に表現に落とし込み意図を明確にして発信する。こういう行為はアートにとって相当重要なファクターだと思っています。

 

【略歴】
1982年  東京に生まれる
2007年  東京造形大学 造形学部 美術学科 絵画専攻領域 卒業
2009年  東京造形大学 大学院 造形研究科 造形専攻 美術研究領域 修了
【主な受賞歴】
2019年  SICF20 EXHIBITION 倉本美津留賞
2008年  シンジュクアートインフィニティ vol,3   第二回公募展『愛』入選 (旧新宿マルイシティ仮囲い、東京)

【主な活動】
個展
2018年 満ちては欠ける空白に(青春画廊東山/京都)
2017年 ここに在る不在(gallery ON THE HILL/東京)
2014年 色を逃れる 白を失う – Sampling of the elements of the blank – (Gallery t/東京)
2014年 blank drawing – F0 (カヤバ珈琲/東京)
グループ展
2019年 SICF20
2018年 静物2018(ex-chamber museum/3331 Arts chiyoda/東京)
2018年 art on paper(art fair/ex-chamber museum , Pier 36/NEW YORK)
2017年 open house(青春画廊西陣/京都)
2017年 ART VOCANCES(甑島/鹿児島)
2017年 Spring Fever(駒込倉庫/東京)
2016年 FETE PROJECT 2016 (府中市美術館市民ギャラリー/東京)
2016年 ART VOCANCES(甑島/鹿児島)
2016年 SICF17(スパイラルホール/東京)
2015年 あなたはいま、まさに、ここにいる (アキバタマビ21/東京)
2014年 斜向い (GALLERY HIRAMINE TOKYO/東京)
2012年 あなたはいま、まさに、ここにいる
同じ川に二度入ることは出来ない | いや、一度たりとも同じ川に入ることは出来ない
(京都芸術センター/京都)
2012年 Spin the Japanese Fine Arts,Now-Technical handwork,Sensitivity(Por Amor a arte Galeria/PORTO,PORTUGAL)
2012年 アイムアダイバー / KOSHIKI ART PROJECT 2012  (甑島/鹿児島)
2012年 新築 (GALLERY HIRAMINE/甑島、鹿児島)
2011年 空白の光に浸す ‒ 潜像 – 光のあとさき(関井記念館/埼玉)
2011年 アイムアダイバー / KOSHIKI ART PROJECT 2011  (甑島/鹿児島)
2011年 あなたはいま、まさに、ここにいる / 東日本大震災復興支援 Arts Action 3331 参加企画
(3331 Arts chiyoda/東京)
2011年 アイムアダイバー(island ATRIUM/千葉)
2010年 camaboko/東京造形大学絵画棟クロージング展 (東京造形大学旧絵画棟/東京)
2010年 甑島で、つくる。/KOSHIKI ART PROJECT 2010 (甑島/鹿児島)
2009年 甑島で、つくる。/KOSHIKI ART PROJECT 2009 (甑島/鹿児島)
2008年 ポストシアター/Art Program Ome 2008 6th 文化庁「文化芸術による創造のまち」支援事業 (青梅/東京)
2008年 甑島で、つくる。/KOSHIKI ART PROJECT 2008 (甑島/鹿児島)
2008年 TACTILE (gallery litllish、神楽坂/東京)
2008年 人 と もの の記憶を繕う展覧会 つくろいもの ~ とつかいち 場 モノ 語り ~ (新宿区設戸塚小売市場/東京)
2007年 甑島で、つくる。 (甑島/鹿児島)
作品集
2011年 「 あなたはいま、まさに、ここにいる 」大久保具視、小田原のどか、鈴木知佳 作品写真集(発行/トポフィル)


SICF20 EXHIBITION 菅野薫賞 

 

日辻

 

<作品タイトル>
活線プロジェクト

 

<作品について>
電子部品をいけばなに見立て、実装しています。
「活線」とは、電気が通っている電線の事を指します。電子部品を使って立体を作る上で、ただオブジェとしてではなく電気の通った回路として機能した立体作品であること、活きるという漢字の意味とモチーフになっている花を「いける」行為を重ねてこの名前をつけました。
コンピュータや電子部品のようなエレクトロニクスを用いた作品について議論がされる時「技術的新規性」が議論に中心になることが多くあります。もちろん、仮想現実や人工知能といった今まで無かったテクノロジーに思いを巡らせ、それがもたらす未来について考えることはとても刺激的で、大切であり必要な技術です。しかし、目まぐるしい変化の中で埋もれていったかもしれない「枯れた技術」における美学が、まだまだたくさん隠れているのではないかと私は考えています。テクノロジーの世界を彩る華やかな先端技術から、時折ちょっとだけ距離をとって、私たちの日常を支えてくれているモノたちへの敬意を習慣として取り入れるために、このような作品づくりを継続しています。道傍に咲く草花を尊ぶように。

 

<受賞コメント>
「作家として無名である自分が、いかに食べていきながら創作活動を続けられるか」ということは卒業後の生活における主題の一つでありました。作家としての自立性を保とうと日々試行錯誤を重ねながら、まさにINDIPENDENTの名を冠するSICFというアートフェスに参加でき、贈賞いただけたのは幸甚の至りでございます。改めて展示関係者の皆様、そしてご高覧いただきました皆様には厚く御礼申し上げます。

 

<審査員コメント>
■ 菅野薫(株式会社電通 CDC / Dentsu Lab Tokyo エグゼクティブ・クリエーティブ・ディレクター/クリエーティブ・テクノロジスト)

この作品は、電子基板でつくる枯山水ですよね。枯山水は、水を用いずに石や砂で目に見えない山水の風景を表現しますが、この作品では、目に見えない電気の流れや演算処理が静かに目の前で起こります。この作品に触れることによってこの世界では何が起こっているのかをそれぞれが想像するきっかけを与えてくれます。デジタルテクノロジーを活用した作品は、往々にして新しい技術の可能性の探求になりがちです。しかし、この作品は、文字通り枯れた技術をつかって、新しい視点を我々にもたらしてくれる。テクノロジーが生活の中に当たり前に入ってきて、そのあり方に深く考えなくなってしまったことを気づかせてくれます。

 

【略歴】
1989年生まれ。2017年に多摩美術大学大学院 デザイン専攻情報デザイン研究領域 修士課程修了。
コンピュータを用いた表現に関わる広告や商業施設の開発業務に携わる傍ら、「システムと表層の反転」を主題とした表現活動を行う。
【主な受賞歴】
2019年 SICF20 EXHIBITION 菅野薫賞

【主な活動】
2019年 SICF20 EXHIBITION
2019年 3331 ART FAIR 2019(3331アーツ千代田/東京)
2018年 HATRA SS2019 showroom -Shapeshifter- 作品提供(SITE/東京)


SICF20 EXHIBITION MINA-TO賞

 

斉藤萌々子

 

<作品タイトル>

WOODEN PLANTS

 

<作品について>

植物(木)で植物を表現することに挑戦することへの興味から始まった作品でした。ケイトウ、シンフォリカルポス、コットン、スギの順に制作し、展示をしました。

実際に木を彫ると、絵で描く以上に、植物は同じパーツの集合で構成されていることを強く意識させられる感覚がありました。しかし膨大なパーツの蓄積で出来た花も、視野を広げると存在は小さくなっていくのが必然です。マクロな存在のものが対象物次第でミクロな存在になり、その逆もあると言い換えることも出来ます。こうした、一つのものに対する規模の認識の相対性を表現し、認識のスイッチングを引き起こす造形を目指すようになりました。

植物をミクロとした時、その置かれた環境や風景がマクロに当たると考えるようになり、制作するごとにモチーフである植物は抽象化され、場面が具体化されていきました。

 

<受賞コメント>

SICF20を通してたくさんの方々と作品についてお話しをする機会を頂きました。その中で今まで言語化出来ていなかった感情を理解することや、作品に対する新しい見方をお伺いすることもでき、MINA-TO賞まで頂いて充実した展示になりました。ありがとうございました。

 

【略歴】

1995年 東京都生まれ

2019年 武蔵野美術大学工芸工業デザイン学科木工専攻 卒業

2019-2020年 University of the Arts London (ロンドン芸術大学) 留学

【主な受賞歴】

2019年 SICF20 MINA-TO賞

2018年 第13回TAG BOAT AWARD 入選

【主な活動】

2019年 SICF20 (spiral / 東京)

2019年 武蔵野美術大学工芸工業デザイン学科クラフトデザインコース 卒業制作展 (spiral / 東京)

2018年 二人展 「unconsciousness」(room103 / 国立)

2018年 第13回TAG BOAT AWARD 入選者グループ展 (世田谷ものづくり学校 / 東京)

 


 

SICF20 EXHIBITION ワコールスタディホール京都奨励賞

 

韻を踏む

 

<作品タイトル>
無題

 

<作品について>

韻をふむのは詩人やラッパーの特権じゃない。誰もが韻をふめたなら、もっと言葉に親しみがわくはずだ。本作品では、物理的に「踏む」ことを通して韻をふむ体験をしてもらう。本を読むことが減ってしまったこの時代だからこそ、青空文庫から抽出された名文で韻をふむことで、言葉の魅力を感じてほしい。

開かれた本の上にかかれたフレーズを踏むと、そのフレーズと韻をふんでいるフレーズが周りに現れます。何も考えずにリズムよく本の上を踏んでいくだけで、誰でも必ず韻をふみ、ラッパーになれます。

友人との会話から「韻を踏む」ことがおもしろいことだと思いできるようになりたかったものの、才能がないためにできなかったためこの作品をつくりました。また、ハウツー本ばかりがベストセラーになり、小説が大好きだった自分すら徐々に小説を読まなくなっていることを悲しく思っていたことから題材を青空文庫としました。この体験を通して、すべての人が体を動かしながら小説や「韻を踏む」ことに親しんでいただければ幸いです。

 

<受賞コメント>
「クリエイター」という自由な括りで募集を行っていることに魅力を感じ展示が始まるまでは受賞をめざして一生懸命制作を行っていましたが、展示が始まると周りの方の力に圧倒され、受賞は本当に予想もしていないものでした。色々な分野を統合した本作品が受賞できたのは、分野などの枠にとらわれない体験をつくることが受け入れられてるためだと信じて、更に良いものにしていきたいと思います。

 

【略歴】

眞鍋美祈(企画、コンセプト、センサ、音声、一部コーディング)

東京大学工学部機械工学科卒、東京大学学際情報学府学際情報学専攻在学中。

高嶺航(韻フレーズ データ収集・言語処理)

東北大学工学部機械知能航空工学科卒、東京大学大学院工学系研究科技術経営戦略学専攻在学中。

リチャード サハラ ハルタント(フロントエンド)

早稲田大学創造理工学部総合機械工学科国際コース卒、東京大学学際情報学学際情報学専攻在学中。

【主な受賞歴】
2018年 ANA WonderFLY Creative Award「HITORIMO」 (眞鍋 美祈)

【主な活動】

眞鍋 美祈

インスタレーションの展示やプロダクトプロトタイプの制作を行っています。

2016年 東京大学機械工学科 展示 キカイ✕アート

2017年 東京大学機械工学科 展示 キカイ✕アート , 東京藝術大学 展示 ときのかたち , 「id_wear」「HITORIMO」制作

2018年 「Secret-ary」制作、東京大学制作展エクストラ 展示 , 東京大学制作展 展示

リチャード
2018年 東京大学制作展 展示
2019年 ARAジャカルタ PEGGY HARTANTO ビジュアルストーリーテリング

 


SICF20 EXHIBITION スパイラル奨励賞

 

村尾拓美

 

<作品タイトル>
Mime of love

 

<作品について>
この作品は、人間が鳥の求愛行動を真似するための衣装です。
Mimeとは「身振り、手振り」という意味で「Mime of love」は「愛の振り付け」となります。
大学に入学し作品を作り続けるうちに、大学に入ったから、作品を作っているのか?
所詮アートの真似ごとをしているんじゃないか?という思いと、
素材、技法、伝統、といった工芸の枠に囚われてしまう自分への嫌悪感がありました。
好きなものを好きと表現するのは 殊の外理由を尋ねられることで
れに答えられるような、文脈に沿った説明ができるものが求められている。
そう感じていました。
動物が必死に求愛行動をする姿は滑稽で、しかしそのひたむきさは憧れこそすれ、
彼らはただ必要だから求愛するだけで、人の目を気にしてばかりの私が笑えるものではなく、
自分に必要なものは そんな野生的な勇気でした。
<受賞コメント>
自分の作品や活動の落としどころに悩み続けた結果、ジャンル問わず応募できたこのSICFでこのような賞をいただけたのは本当に光栄です。
「やっぱり動いてるところ見てほしい」ということで自分で着てみたのですが、 自分で着て見る人の反応を直に感じることで、実際に人に見せる瞬間にまで視野が開けたのは、アーティストと観覧者が直にコミュニケーションを図れるSICFだからこそ得られたものだなと思います。

 

<審査員コメント>
■ 大田佳栄(スパイラル チーフキュレーター)

テクスチャーなどあらっぽさがありつつも、圧倒的なインパクトと味わいとを残す作品でした。パフォーマンス・映像・コスチュームなど複数の表現手法の組み合わせという点でも、既存ジャンルに縛られない自由さがあり、次の展開に予測がつかず、とても楽しみです。

 

【略歴】
1994年 神奈川県川崎市生まれ

2017年 東京芸術大学美術学部工芸科卒業
2019年 東京芸術大学美術研究科工芸専攻染織研究領域卒業
【主な受賞歴】
2017年 安宅賞奨学基金 受賞
ATOM賞 受賞
2018年 第51回埼玉全国舞踊コンクール2018埼玉県舞踊協会賞・埼玉芸術文化祭実行委員会会長賞 (衣装担当)
2019年 サロン・ド・プランタン 受賞
SICF20 EXHIBITION スパイラル奨励賞<
【主な活動】

2016年 さいたまトリエンナーレ2016 SMFおかわりプロジェクト「草上の昼餐」(北浦和公園/東京)
2017年 グループ展「カタチアソビ展」(フリュウ・ギャラリー/東京)
フランス人間国宝展関連イベント「日仏工芸の極み」
オープニングパフォーマンス(東京芸術大学COI/東京)
自然じゃないかも展(/東京)
2019年 SICF20(スパイラル/東京)


SICF20 EXHIBITION オーディエンス賞

 

本多大和

 

<作品タイトル>
kotonoha

 

<作品について>
穴にむかって言葉をふきこむと、声から形になった言葉がひとりでに歩きはじめ、空間を自由に動き回る様子を鑑賞できます。本作は、言葉に話し手の感情や人間性が表れる様子を、まるで言葉が生きているように感じたことをきっかけに制作した参加型インタラクティブアート作品です。
家に帰ってから思い出したり、ほかの人に伝えたり、言葉は一人歩きをはじめ、ときに花のように優しく寄り添い、ときに獣のように牙をむき、ときに羽を生やしてたくさんの人のもとへ飛んでいきます。そういった作者の言葉についての想像や、言の葉、言の羽、言端、言魂といった言葉の語源に纏わる事柄をモチーフとして演出に取り入れ、ひとり立ちした「言葉」たちの一つの世界を形作っています。

 

<受賞コメント>
デザインとエンジニアリング、アートとエンタメ。多面的な創作を志して作家としての色を模索し、楽しめる届きやすい作品を目指す中で、たくさんの受け手の方に評価いただけたことがとても嬉しいです。多くの表情や声に触れることができ、他の出展作家の方々と関係を育むことができ、実りある貴重な時間を過ごせました。あらためて、今回のSICF20の開催ならびに出展者への選出に御礼申し上げます。ありがとうございました。

 

【略歴】
1988年 東京都生まれ、東京都在住
2011-2018年  面白法人カヤック 企画部/技術部

【主な受賞歴】
2018年  2018アジアデジタルアート大賞展FUKUOKA 一般/インタラクティブアート部門 入賞
2018年  第6回デジタルえほんアワード 一般部門 入選作品
2013年  第17回文化庁メディア芸術祭 エンターテインメント部門 審査委員会推薦作品

【主な活動】
2019年  2018アジアデジタルアート大賞展FUKUOKA(福岡アジア美術館/福岡)
2018年  魔法の美術館 光と遊ぶ、真夏のワンダーランド(山梨県立美術館/山梨)
2015年  個展「そうぞうの遊び展」(画廊 一兎庵/東京)
2015年  東京デザインウィーク ASIA AWARDS ヤングクリエイター展(明治神宮外苑絵画館前/東京)
2014年  第17回文化庁メディア芸術祭 受賞作品展(国立新美術館/東京)

 


 SICF20 PLAY グランプリ

 

橋本ロマンス

 

<作品タイトル>
トーキョー・ミステリーサークル・クラブバンド

 

<作品について>
「スパイラルに新しい寓話の創作」を目的とし、ミステリーサークルとは
・巨大な円である
・自然発生ではない(作者が存在する)もの
・世間の関心を集めるもの
・コミュニケーションツールとなりうるもの
と定義し、「スパイラルガーデンにある巨大な円はミステリーサークルである」と仮定をたて、証明としてその出現前夜を描くパフォーマンスを行いました。
また、2020年にオリンピックが開かれるトーキョーの姿も召喚/帰還を待つミステリーサークルにトレースされています。
これらのイメージから、会場の吹き抜けの空間を利用し、目線や動きの方向性を宇宙(上)へ強めることや、惑星軌道を思わせる動きなどを振付に組み込みました。演出は場所性、色彩、光に特にこだわって構成し、登場する宇宙人たちのビジュアルイメージはDavid BowieのZiggy Stardustから着想を得ています。団体の見え方としてはナンセンスな小さなサーカス団を目指しました。
<受賞コメント>
「スパイラルでしか起こせないこと」をやってみようと目論んだ作品で賞をいただけたことを何より嬉しく思います。また、表現ジャンルを問わないSICFのPLAY部門で受賞をさせていただいたということも、とても光栄に感じています。早くも次作に向けてウズウズしております!

 

<審査員コメント>
■岡見さえ(舞踊評論家)

スパイラルガーデンの円筒形空間を、空から降りてきた異星人と地上の地球人の邂逅の場(“ミステリーサークル”)として再解釈。計算されたヴィジュアル、明快なキャラ設定、怪しいSF的ムードとナンセンスさで観客を引き込む展開に、キレのあるダンスのムーブメントを混ぜ込み、魅力的なアートパフォーマンスを作り上げた。独自の世界観を持ち、構成・身体の技術を基盤に持っている一方で、コアなアートファン以外にも訴求するポップな楽しさやファッション性もあり、今後の多様な展開を期待させる。若手作家を発掘し、育成と支援を行っていくという、SICF PLAYのコンセプトにふさわしかった。

■栗栖良依(SLOW LABEL ディレクター)

場所や状況ふまえて、しっかり作品を当て書きされており、「作品を観せたい!」という想いがビシビシ伝わってきました。個性溢れるキャスティングや衣装美術にも光るセンスを感じました。

これからも発表の機会を求めて表現を既存のジャンルに寄せることなく、作品を届ける手法をも新たに創りあげる勢いで、橋本ロマンスワールドを突き詰めてほしいです!

■山城大督(美術家・映像ディレクター)

10分間。会場にいる全ての人が魅了された。色彩豊かでコンテンポラリーな衣装と小道具、個性豊かで凸凹なキャスティング、スパイラルホールの円形ステージを所狭しと使い切った演出に、総合ディレクションの能力の高さを感じた。今後、空間演出や、大型ショーのプロデュースなど他ジャンルとのコラボレーションに発展していくのも楽しみだ。バランス感覚のいい、ソリッドな大型新人があらわれた。おめでとう!

 

【略歴】
1995年生まれ。東京都出身。
現代美術作品の製作を経て、多摩美術大学にて勅使川原三郎ダンスメソッドを学ぶ。
演出、振付、衣装デザイン、造形作品製作、インスタレーション製作、アートディレクション等、多摩美在学中から横断的に創作活動を行う。
2017年より本格的にパフォーマンス作品の製作、出演を開始。
【主な受賞歴】
SICF20 PLAY グランプリ受賞

【主な活動】
○原案、総合ディレクター

2017「タマゾニア」

東急電鉄×多摩美 タマリバーズvol.6

二子玉川ライズ ガレリア広場

○構成、演出、振付

2016「宇宙箪笥」

エイ出版企画二子玉川ハロウィンパーティー

二子玉川ライズ ガレリア広場

2017「宇宙電話」

神楽坂セッションハウス

2017年「EM CEE

神楽坂セッションハウス

2019「ジェンツー・マーチ」

神楽坂セッションハウス

2019「サイクロン・クロニクル」

神楽坂セッションハウス

2019「トーキョー・ミステリーサークル・クラブバンド」

SICF20 PLAY

スパイラルガーデン

振付

2017「タマタマンボ」

多摩美術大学芸術祭2017 ゆるキャラダンス

2018「五月のコント」 

作 和田尚久 池田ゴンサロ

演出 吉岡牧穂

音楽・演奏 大谷能生

アトリエ第Q藝術

○出演
2017年 「BALLO」
CHAiroiPLIN単独公演
構成、演出、振付 スズキ拓朗
東京グローブ座

2018年「〒〒〒〒〒〒〒〒〒〒」
コンドルズ主催ダンスフェス 可能性の獣たち
CHAiroiPLIN
構成、演出、振付 スズキ拓朗
あうるすぽっと

2018FIELD

Baobab単独公演

構成、演出、振付 北尾亘

吉祥寺シアター

2018年 ラフォーレ原宿40周年 年間広告

Art Director Steve Nakamura

Choreographer MIKIKO


 SICF20 PLAY 特別賞

 

Co. Ruri Mito

 

<作品タイトル>

MeMe

 

<作品について>

振付・構成を三東瑠璃、音楽をASIAN KUNG-FU GENERATIONの後藤正文が担当。ミーム ( meme、模倣子 ) から着想を得て創作。
創っていくうちに言葉で説明するのが嫌になってしまいました。
 いつも、わたしはあなたにはなれない。代わりはいない。死ぬまでわたしたちにつきまとうこの身体とあなたについて、そんなことを思いながら創作しています。

“MeMe”音楽担当の後藤さんは、「ダンサーや観客たちの息づかい、衣服の擦れる音や足音、様々な機器からのノイズなど、舞台上のすべての音を包む細胞膜のようなサウンドを目指した」
と言っていました。作品を観てくださった方の感想だったり、今回のようなライブドローイングの絵だったりが、作品の強度を強め、成長させているのを実感できる作品です。それぞれが自分と向き合うような時間になったり、眠ったりできる作品になっているのではないかと思っています。
 お客様あって作品が動き出しています。ありがとうございます。

 

<受賞コメント>

この度は、特別賞をいただきありがとうございます。 SICFへの一番の参加目的は普段なかなか出会うことのないお客様にCo.Ruri Mitoの作品を観ていただきたいと思ったからです。コンテンポラリーダンス公演を観に劇場に足を運ぶことに馴染みの薄い方へのアプローチ、リサーチを含め参加させていただきました。 そして今回公演中にライブドローイングを組み込んだことはとても大きな収穫となりました。8名の絵を描かれる方に集まっていただきました。初めてお会いする方がほとんどでしたがダンス作品を描いてもらうことで言葉での感想以上に伝わるものを目の当たりにできました。フィードバックも多くいただき今後の発展へ繋げていきたいと思っています。関わっていただいた皆様に感謝します。

 

<審査員コメント>
■岡見さえ(舞踊評論家)

グランプリ作品とは非常に作風の異なる、静かさのなかに恐るべき強度を秘めたダンス。フロアの上で7人の女性ダンサーが、目に見えないほどの遅さで転がり、重なり、柔らかな彫刻のごとく空間に異形のフォルムを刻み出していく。極めて高度な技術と身体コントロールだが、速さ、派手さの対極にある遅く、慎ましい動き。振付は決してダンサーを直立させず、表情も身体の部位や髪で隠している。すると人間らしさも個性も消された生物たちの緩やかなうごめきから、独特な時間の凝縮や空隙が場に生まれ、観客の日常の時間感覚を変容させる。言葉のないダンスでしかできない境地を、繊細かつ力強く見せた挑戦を評価したい。並行して行われたライブドローイングも、興味深い試みだった。

■栗栖良依(SLOW LABEL ディレクター)

ものすごく緻密で繊細な動き。至近距離で大変見応えのある内容でした。過去作品を一部抜粋で持ち込んだがゆえの不完全さが見受けられましたが、受賞者として申し分のない実力があり、また今後は劇場の外での活動にもチャレンジしていきたいということで、これからの活躍に期待したいと思います。

 

【略歴】

2017年設立の三東瑠璃主宰のダンスカンパニー。個々の身体の特徴を深く探求しながら時間をかけて質の高い作品の創作を目指している。これまでに「みづうみ」(2017年)、「住処」(2018年)、後藤正文 (ASIAN KUN-FU GENERATION)とのコラボレーション作品「MeMe」(2019年)を発表している。 2019年8月にギャラリーや美術館を回る「住処」東北ツアーを予定している。

 

三東瑠璃

1982年東京生まれ。5歳からモダンダンスを始める。2004年日本女子体育大学舞踊学専攻卒業。2004年- 2010年ダンスカンパニー「Leni-Basso」所属、その後フリーランスに転向。スウェーデン王立バレエ団にてゲストダンサーとしてWim Vandekeybus、 Sasha Waltzの作品に出演。またDamien Jaletと名和晃平による”VESSEL”に出演等国内外でダンサーとして活躍。自身のソロ作品は国内外で多数の賞を受け、ヨーロッパやアジアで開催されるフェスティバルに招かれている。
 2017年に踊る。秋田にて土方巽記念賞を受賞。2017年Co.Ruri Mitoとしてグループ活動を開始。2018年より公益財団法人セゾン文化財団ジュニア・フェロー。

 

【主な受賞歴】

<三東瑠璃受賞歴>
2018年 
M1CONTACT Contemporary Dance Festival/ MASDANZA賞

2017年
 踊る。秋田/ 土方巽記念賞
2017年  Solo Dance Contest in Gdansk Dance Festival/ 1位
2016年
 Seoul International Choreography Festival/ 国際審査員賞

2014年
 19MASDANZA Competition/ 1位
2014年  Yokohama Dance Collection EX/ MASDANZA賞
2013年
 Jerusalem International Choreography Competition/ 1位

2010年
   Yokohama Dance Collection R/ 審査員賞

【主な活動】

<Co. Ruri Mito>

2019年「MeMe」(三鷹市芸術文化センター星のホール/東京)
2018年「Rita Gobi×三東瑠璃ダブルビル公演」(神楽坂セッションハウス/東京)
 2017年「みづうみ」(日暮里d-倉庫/東京)

<三東瑠璃>
2019年 名和晃平+Damien Jalet「Vessel」ヨーロッパツアー(ブリュッセル、ロンドン、レンヌ、アムステルダム) に参加。
2019年 ASIAN KUNG-FU GENERATIONのMV「スリープ」に出演
2019年 ASIAN KUNG-FU GENERATIONの後藤正文氏とのコラボレーション作品「MeMe」を発表(三鷹市芸術 文化センター・星のホール/東京)

2018年 David Leveaux演出の音楽劇「道」の振付担当
2018年 ソロ作品「Matou」(Taiwan Dance Platform 高雄/台湾)

2018年 「踊る。秋田」第一回土方巽記念賞受賞者公園にてソロ作品「沈黙」を発表(秋田)

2018年 ソロ作品「Matou」long version(Kuandu Arts Festival 台北/台湾)
2018年 ソロ作品「Matou」long version(d-倉庫/東京)
2018年  Co. Ruri Mito主催公演「Rita Gobi x 三東瑠璃ダブルビル」を開催。

2018年 三東振付作品「住処」を発表、Rita Gobi 振付作品「Freestyle」に出演(セッションハウス/東京)
2018年 ソロ作品「Matou」(M1 CONTACT Contemporary Dance Festival/シンガポール)

2018年 ソロ作品「Matou」(HOKURIKU DANCE FESTIVAL III 金沢21世紀美術館/石川)
2018年  Sasha Waltz & guestsの「Korper」に出演(Opera de Lille/フランス).
2018年  Wim Vandekeybus 作品「PUUR」に出演(Royal Swedish Ballet/スウェーデン)

2017年 名和晃平+Damien Jalet「Vessel」に出演 (横浜赤レンガ倉庫1号館3Fホール/神奈川)

2016年 名和晃平+Damien Jalet「Vessel」に出演 (京都ロームシアター/京都・犬島/岡山)
2016年 Sasha Waltz & guestsの「Korper」に出演(Royal Swedish Ballet/スウェーデン)
2016年 ブダペストのL1 danceFest 2016 にてソロ作品「Matou」上演、および現地のダンサーとのクリエイショ ンワークショップにて15分の小作品を制作(ブダペスト/ハンガリー)

2015-2004年
Darren Johnstonのリサーチプロジェクト参加(The Barbican theatre/イギリス)
Inbal Pinto and Avshalom Pollak演出ミュージカル「100万回生きたねこ」に出演(東京芸術劇場/東京)
 北村明子のインドネシア・日本共同制作プロジェクト「To Belong」に出演
 Ferriミュージックビデオにダンサー出演
 YAMAHAのTVコマーシャルにジャズピアニスト上原ひろみ×Leni-Bassoで出演
International Young Choreographer Project (台湾)に振付家として参加
 韓日ダンスフェスティバル(韓国)でソロ作品を上演 
 日本女子体育大学ダンスプロデュース研究会主催公演に振付家として参加
 白井晃演出のオペラ愛の白夜にダンサーとして出演
カンパニーLeni-Basso所属(2004-2010年)

 


 SICF20 PLAY オーディエンス賞

 

ハハダン

 

<作品タイトル>
「I am Mam ! 」

 

<作品について>
妊娠して子供を産んで、私は母になりました。
その瞬間、それまでの自分とは全く別の時間軸、価値感の世界へ入りこみました。母になった途端、何故か母ではなかった以前の自分と比べ、いつか以前の自分に戻れるのではないかと、常にどこかで考えていました。
授乳しても、オムツをかえても、かけがいのない我が子を抱っこしても、いつかいつか戻れるはずと。
2人目が産まれた3年目、ようやく自分が母である事に腹をくくった気がします。あー、母として自分として生きていきたいなと。今あるスタンスで踊りたいなと。
ママ達の、生きる力は素晴らしい。自分以外の事に120%とられているのに、どのママもママとして、自分としてはっきりと力強く立っています。しなやかな感受性と素直な身体は、彼女達が持っている唯一無二の存在です。母だから見える世界がある、母だから見せる世界がある、そんな姿が世界の裏側迄届きます様に。

 

<受賞コメント>
子供がぐずり、熱をだし、離乳食をあげ、抱っこして、おんぶして、リハーサルの半分はこんな感じで過ぎていきます。自分が何かを表現する前に、私達ママには色んな事が付随します。自分が人前で何かをするなんて思ってもみなかった彼女達が、舞台に立ち、そこに評価を頂き、ママ頑張れと判子を押して貰えた気持ちです。ママ達にとって素晴らしい賞をありがとうございます。

 

【略歴】
ダンサーとして20年国内外の公演に出演。2人の子供を出産後、現役ダンサーを離れ今あるスタンスで踊ろうと、東京町田市鶴川のママ達に向け、3年前にエクササイズクラスをスタート。産後ママ達と一緒に身体を動かし、育児脳をクリアーに、ママとして、自分としての女性の在り方を模索中。そんな姿を形にすべく、1年前にハハダン結成。
【主な受賞歴】
2019年 SICF20 オーディエンス賞

【主な活動】
2018年7月 YouTubeにて動画作品公開
2018年 9月  カフェ ムリウイ企画に出演
2018年12月  Yo-Yo Ma performing Bach 「Culture of Us」MV出演