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(編集中)SICF27 EXHIBITION部門 受賞者一覧

EXHIBITION部門 受賞者一覧

SICF27 EXHIBITION部門 11組の受賞者を審査員のコメントとともに紹介します。


グランプリ

 

XU Xiaofan

 

<作品タイトル>

From Where I Stand

 

<作品について>

私は「自然と共に生きる」をテーマに制作を行ってきました。現代社会は便利な生活や高度な情報環境、整備された都市システムを手に入れた一方で、人と自然とのつながりは次第に希薄になっています。人間と自然は本来切り離された存在ではなく、互いに影響し合うひとつの全体であると私は考えています。そのため、自然そのものを再現するのではなく、自然に関わる感覚や体験を「見える形」として表現し、人と環境の関係性を問い直してきました。

 

本作『From Where I Stand』は、民族工芸を学ぶ中で出会ったKuna族の文化を出発点としています。彼らは風や波、植物など自然環境の微細な変化から情報を読み取り、その感覚を民族芸術「Mola」の文様や構造へと変換してきました。私はそこに、人と環境が結びつく可能性を見出しました。そして彼らの制作方法を手がかりに、自身が これまで異なる国や地域で体験してきた原始的な自然環境から要素を抽出しました。自然から得た多様で有機的な形態や視覚感覚を再構成し、作品として表現しています。作品を通して、鑑賞者が人と空間との関係性について改めて考えるきっかけとなることを目指しました。

 

<受賞コメント>
受賞前は、素材制作や工芸的な試み、現地でのリサーチなど、工芸と芸術を横断するような制作は、多くの時間や手間をかけても、その過程や積み重ねが鑑賞者に伝わりにくいのではないかと感じていました。しかし今回の受賞を通して、目に見えにくい過程そのものも創作の大切な一部なのだと改めて実感し、これからの制作への自信にもつながりました。心より感謝しております。

 

<審査員コメント>

■金澤韻/キュレーター

展示部門のブースに詰め込まれるように展示してあって一見謎めいていましたが、細部を見始めたら豊かなディテイルに引き込まれました。ブラジルや北アイルランドなど作家が旅した地域の植栽がモチーフとなり、刺繍、アップリケ、昇華転写プリント、箔プリント、シルクスクリーンという実に多様な技法で表現されています。生命力がまさにひとつの生き物のように蠢き、外界に向かっていくような、てらいのない力強さを感じました。

■non/

non

 

【略歴】

2021年 日本に留学
2024年 グラスゴー美術学院(英国) テキスタイル学科シルクスクリーン専攻 交換留学
2026年 多摩美術大学 生産デザイン学科テキスタイルデザイン専攻 卒業
2026年 東京藝術大学 美術研究科デザイン専攻 在学中

 

【主な受賞歴】

2021年 MulberryCityネクタイデザインコンペ 東京都知事賞
2024年 多摩美術大学交換留学奨学金
2025年 MulberryCityネクタイデザインコンペ 入選
2026年 「SICF27」EXHIBITION部門 グランプリ

 

【主な活動】

2024年 江ノ島芸術祭「ROW」(横浜)
2024年 多摩美術大学学内展WELCOME展(東京)
2025年 多摩美術大学 三年優秀作品選抜展 InProgress(東京)
2025年 BEGG X CO Project 成果展(スコットランド)
2026年 「SICF27」EXHIBITION部門(スパイラルホール/東京)

 


準グランプリ

 

 

池田 洸太

 

<作品タイトル>
旅の途上

 

<作品について>

この道はどこまで続くのか、僕はそう思って歩くのが好きです。まるで、冒険家になった気分でいつも歩いています。僕は散歩のことを小さな旅と呼んでいます。側から見たら、とても幼稚なように見えるかもしれませんが、僕が楽しければそこに目的や答えがなくても良いと思っています。終着点を見つけるのではなく、道の続きを探すのが、僕の小さな旅です。

 

今回の小さな旅は、僕の住む山形県山形市の散歩道から見える風景やそこに生きる生き物、近所のおじいちゃんをモチーフにした絵画を展示しました。
また川の石や軽トラじいちゃん、自作の歌も展示することで、絵画と一緒に自分にとって大切な風景を表現しようと試みた作品になります。

 

<受賞コメント>

この度は準グランプリに選出して頂きありがとうございます。
いつもの身近な風景を描いた作品が、多くの来場者の方に見て直接話すことが出来、この3日間とても楽しく、次に繋がる経験になりました。
今後は受賞者展、これからの活動に向けてさらに誠実に作品に向かい合いたいと思います。

 

<審査員コメント>

■小金沢智/キュレーター・東北芸術工科大学准教授

池田洸太さんの作品は、板を支持体に、クレパスが主な描画材として使用されながら、画面を削ることによって形づくられています。描かれているのは、池田さんが居住している山形県での生活・仕事において目にする風景や人々ですが、それらの表現のなんてみずみずしいことでしょう。私は、同じく自身の生活圏で見えるものを大切にした画家・熊谷守一を想起し、そういった画家の系譜を考えてみたくなります。また今回会場では、絵画に加え、池田さん自身が歌った歌が流れ、いくつかの小石も展示されていました。おだやかな歌の響き、そして石という自然によって削られたものと、自ら削ってできあがった絵画との不思議な親和性が感じられる展示でした。

 

山田 紗子/建築家

素朴で優しい絵だなと思ったが、何度か通り過ぎているうちに独特のみずみずしさに魅了された。ぼんやりとパステルの色が広がる中で、その柔らかさとは対照的に鋭く輪郭線が掘り込まれ、勢い任せのようで、描かれている対象が生であることを伝えている。散歩をしている高齢の友人の背中や村の背景にそびえる山の稜線が、光を集めて真っ白な世界に軌跡を描きながら溶け込んでいた。作者本人の生き様と作品が共鳴していることや、会場で流れていた 歌の魅力も手伝い、グランプリの議論に最後まで残った。

 

【略歴】

2018年 東北芸術工科大学芸術学部美術科総合美術コース 卒業。
山形県山形市在住。アトリエこねるアートサポーター。高齢者施設で介護員として働きながら、散歩で見た景色やそこで出会った事をテーマに絵画や歌などの制作を行っている。

 

【主な受賞歴】

2022年 第25回グラフィック「1_WALL」展 ファイナリスト
2024年 第4回 四谷アートフェスティバル ターナー賞
2026年 第5回 四谷アートフェスティバル 大賞
2026年 「SICF27」 EXHIBITION部門 準グランプリ

 

【主な活動】

2023年 個展 「自由に歩いて愛して」 (ギャラリー絵遊/山形)
2025年 個展 「今日を探しに来た」 (Goozen-art and event space/神奈川)
2026年 「SICF27」EXHIBITION部門(スパイラルホール/東京)

 


 

EXHIBITION部門

準グランプリ

 

 

木川 みく

 

<作品タイトル>
かみさまの稜線

 

<作品について>

私は、“写実”という概念の不確かさや、圧倒的な存在との距離感の測りかたに関心を持っています。
幼少期を富士山の麓で過ごした経験から、自然に対する畏怖の感覚が自身の制作の根底にあります。恐ろしくも美しく、抗うことのできない大きな存在を、幼い頃の私は「かみさま」のようなものとして捉えていました。
私にとっての“写実”への挑戦とは、一般的な意味での視覚的正確さを追い求めることではなく、自身の感覚や記憶の実在性を、どれだけ切実にキャンバスに転写できるかという闘いです。

 

本作《かみさまの稜線》では、その感覚を巨大な像として描くことで、自分自身や鑑賞者に“畏怖の感情”を喚起する作品を目指しました。自分自身にとっての“写実的”な表現を突き詰めていくことで、少女漫画的な表象を持ちながらも単なるキャラクターイメージとしてではなく、自然信仰を象徴する偶像のような存在感を持つ絵画として成立させたいと考えています。
また、私にとって作品のスケールは重要な要素です。画面サイズそのものを感情の強度へと接続し、「畏怖」そして「安らぎ」を体験として立ち上げることを試みています。鑑賞者それぞれの内側にある、祈りや畏れの感覚へ触れられる作品を目指しています。

 

<受賞コメント>

このたびは準グランプリに選出いただき、誠にありがとうございます。
自身の中にある自然への畏怖や祈りの感覚を他者と共有しうるものとして受け取っていただけたこと、光栄に思います。
日頃より作家活動を応援し、見守ってくださっているすべての方に御礼申し上げます。
SICFという場のあたたかい雰囲気に支えられ、のびのびと自己表現をすることができました。
本賞を励みに、今後も美術と真摯に向き合ってまいります。

 

<審査員コメント>

山城 大督/美術家・映像作家

準グランプリを受賞された木川みくさんの作品からは、2つの突出した「タレント性」を感じました。ひとつは、絵画そのものが持つ力です。彼女が描くキャラクターは単に可愛いというだけでなく、アニメや漫画に自然のように触れて育った世代ならではのリアリティがあり、作品自体の魅力がひとり歩きして広がっていくような可能性を秘めています。

 

そしてもうひとつは、作家自身のセルフプロデュース力の高さです。ブースでは名刺代わりに自作のステートメント冊子を配り、SNSとの連動も含めて、自身の作品をプロフェッショナルに展開するずば抜けた力を示していました。今回の3面を使った開かれた空間演出も実に見事で、今後は山だけでなく、様々なモチーフやメディアへのダイナミックな展開を大いに期待しています。

 

■non

non

 

【略歴】

1990年 静岡県生まれ
2013年 武蔵野美術大学造形学部油絵学科油絵専攻 卒業
2015年 多摩美術大学大学院美術研究科絵画専攻油画研究領域 修了

 

【主な受賞歴】

2026年 「SICF27」EXHIBITION部門 準グランプリ

 

【主な活動】

グループ展
2024年 tenacity:執着(MEDEL GALLERY/東京)
2024年 GIRL’S TALK(新宿眼科画廊/東京)
2025年 南のエトセトラ…(清水マリナート/静岡)
2026年 「SICF27」EXHIBITION部門(スパイラルホール/東京)

 

個展
2017年 complement(ギャラリー子の星/東京)
2023年 遥拝(原宿marienkafer/東京)
2026年 かみさまの稜線(原宿marienkafer/東京)

 


 

金澤韻賞

 

 

後藤 萌心

 

<作品タイトル>

着飾りのマイルーム

 

<作品について>

幼い頃、好きなものに囲まれるだけで心が落ち着く瞬間があった。その安心感を、いま私はガラスという素材を通して再構成している。表現を発信することが日常と深く結びつくようになった今でも、心の奥にある大切な感情はそっと守っておきたいと思う。壁に並ぶ色と光のガラスは、“ワクワクした心の形”の小さな断片であり、触れれば壊れてしまいそうな繊細な感情の層でもある。焼成前のガラスに触れる時間は、自分の内側を静かに確かめるような、短い祈りのひととき。好きなものに囲まれたこの小さな世界が、私の中にそっと存在し続けることを願っている。

 

<受賞コメント>

この度は、このような大きな会場で展示する機会をいただいたことに加えて、さらには金澤韻賞をいただきまして、誠にありがとうございます。
多くの方とお話しさせていただき、私にとってこの3日間はとても貴重な時間となりました。
改めまして、関係者の皆様、ご来場いただきました皆様に心より御礼申し上げます。

 

<審査員コメント>

■金澤韻/キュレーター

ドローイングを思わせる自由な造形と、ガラスの硬質でキラキラした印象、そしてガラス部分に合わせて考えられたパネルデザインの組み合わせが素敵な作品です。適正な化学変化を起こすために必要なプロセスや素材の扱いといった制限を活かし、ガラス工芸としての魅力を生み出すとともに、フュージングによる偶然性によって遊び心が吹き込まれました。

子供時代、好きなものを集めて自室の壁にコラージュしていた思い出がもとになっているとのこと。心をときめかせるものたちが結晶化したようなコレクションは、個人的な体験を飛び越えて、たくさんの鑑賞者の胸に届いたことでしょう。

 

【略歴】

2025年 多摩美術大学 工芸学科ガラス専攻 卒業

 

【主な受賞歴】

2026年 「SICF27」EXHIBITION部門 金澤韻賞

 

【主な活動】

2025年 多摩美術大学卒業・修了作品展
2026年 「SICF27」EXHIBITION部門(スパイラルホール/東京)

 


 

小金沢智賞

 

 

高口 聖菜

 

<作品タイトル>
『あなたがたに書く断章』

 

<作品について>

ラジオというメディアを通じて、不在の他者との関係を現在において再構成する試みである。亡くなった人や、時間や距離によって切断された存在に対し、遅れて到来するケアはいかに可能かという問いを出発点としている。ラジオが持つ「不可視のものを現前させる」性質に着目し、声や記憶を単なる記録ではなく、受信されるたびに現在へ引き寄せられるものとして扱う。展示空間に配置された銀色の花弁や滴状のオブジェクトは、電波や記憶といった不可視のものに物質的輪郭を与えるための要素であり、失われた時間や言葉の残留を示している。観者は装置に耳を近づけることで、不在に属する声と現在の時間を一時的に共有する。

本作は、関係の修復を直接描くのではなく、不完全さや応答不可能性を抱えたまま、それでもなお他者へ声を向け続けるための装置として構成されている。

 

<受賞コメント>

今回、このような賞をいただくことができ、大変光栄に思います。作品制作や研究は、ひとりで考え続ける時間が多く、ときに閉じたものになりがちですが、SICF27への参加を通して、多様な表現や制作態度、空間との向き合い方に触れることができ、自分にとって非常に大きな刺激となりました。また、来場者の方々や出展作家の方々と直接対話できたことも印象深く、自身の作品について改めて考え直す貴重な機会になったと感じています。この経験を励みに、今後も制作と研究の両面から、より丁寧に実践を続けていきたいと思います。

 

<審査員コメント>

小金沢 智/キュレーター/東北芸術工科大学准教授

高口聖菜さんの作品は、意図がわかりやすく明示された作品ではありません。空間は一際暗く、照明は微かで、どこからか聴こえてくる声のボリュームはささやかです。しかし、目が慣れてくるとラジオや回路、滴または花のような銀色の造形物の存在がくっきりとしてきて、声の内容は配布されているテキストと同一であることがわかってきます。そして、喪失や不在を主題とすると思しきそのテキストと朗読による声は、不明瞭な対象・出来事を見つめ、読みこみ、傾聴する行為や思索を鑑賞者にうながします。そうして作品が、電波を必要とするラジオ、そこから受信する声という非造形物を主たるマテリアルとして用いている点にも強い興味を惹かれました。

 

【略歴】

2001年神奈川県生まれ。
多摩美術大学大学院美術研究科デザイン専攻情報デザイン研究領域博士前期課程在籍。
声やラジオを主題に、インスタレーション、音声作品、映像、テキストなどを横断した制作・研究を行う。ケア倫理やフェミニズムの理論的視座を参照しながら、語ること/沈黙することの政治性や、声が立ち上がる場の条件を探究している。制作のかたわら、詩やエッセイなどの執筆活動も行う。

 

【主な受賞歴】

2024年 多摩美術大学美術科情報デザイン学科メディア芸術コース「2023年度卒業制作優秀作品」選出
2026年 「SICF27」EXHIBITION部門 小金沢智賞受賞

 

【主な活動】

2024年 BankART KAIKO「24時間アートラジオ/テレビ」ポエトリーリーディング参加/多摩美術大学情報デザイン学科メディア芸術コース卒業制作展「歪なクロール」ディレクション代表担当
2025年 「The 5th Floor Pre-Curatorial 2025」修了
2026年 多摩美術大学大学院情報デザイン領域研究制作展「Vertex」参加、キュレトリアルディレクターおよびトークモデレーター担当/Art Center NEW「NEW SCHOOL 希望の野帖」成果展出展、アーティストトーク参加
2026年 「SICF27」EXHIBITION部門(スパイラルホール/東京)

 


 

山城大督賞

 

 

一SEKI

 

<作品タイトル>
lake-plate-

 

<作品について>

湖をイメージした、石とガラスのお皿です。石のお皿の上にガラス板を置いた状態を「水をたたえた湖」、ガラス板を外した状態を「枯れた湖」に見立てています。
石とガラスのあいだに生まれる隙間には、季節の植物を挟んだり、お品書きを差し込んだりすることができます。使う人や場所によって変化し、空間に寄り添う余白を設けました。
自然物である石を、鑑賞物としてではなく、生活や空間の中で使われる存在として捉え直しながら制作しています。

 

<受賞コメント>

山城大督様に審査員賞として選出いただき、大変嬉しく思います。今回は寿司屋のような展示空間を作り、暖簾をくぐって作品を体験していただく展示を行いました。多くの方と石についてお話しする中で、石に馴染みのない方にも興味を持っていただき、この活動の可能性を強く感じました。
ご来場いただいた皆様、関係者の皆様に心より感謝申し上げます。

 

<審査員コメント>

山城 大督/美術家・映像作家

一SEKIさんは、御影石を用いて日常のプロダクトを美しい造形へと昇華させています。しかし私が何より感銘を受けたのは、SICFのブースという限られた形式を完全にハックしたプレゼンテーションの鮮やかさです。
のれんを少し開けて中へ入るという観客の「動作」や「作法」を設計し、一歩足を踏み入れると、まるでお寿司屋さんのカウンターや立ち飲み居酒屋のように、店主に扮した作家と濃密な対話が始まる。この形式自体が、場所の特性を熟考し尽くした結果の「作品の一部」であると考えます。これほどまでに人と作品が出会う場をコントロールできる一SEKIさんなら、今後の作品展開でも素晴らしい提案を続けてくれると確信し、賞を贈りました。

 

【略歴】

日本の石を用いたプロダクトを制作。自然物である石を鑑賞物としてだけではなく、生活や空間の中で使う事ができる存在として捉え直しながら活動している。
すべての作品はプロダクトとしての機能を持ちながら、鑑賞物としても成立する形を目指している。

 

【主な受賞歴】

2026年 「SICF27」 EXHIBITION部門 山城大督賞

 

【主な活動】

2024年 昭和女子大学 環境デザイン学科 プロダクトデザインコース 卒業制作展
2025年 gallery Blue3143 個展
2026年 「SICF27」EXHIBITION部門(スパイラルホール/東京)

 


 

山田紗子賞

 

 

袁 辰/Yuan Chen

 

<作品タイトル>
réalisation

 

<作品について>

本作では、セザンヌがくり返し向かったサント・ヴィクトワール山やアトリエの静物を対象に、大判カメラのフィルムホルダーを独自に改造し、一枚のフィルムの中に複数の焦点や視点の移動を重ねながら撮影を行っている。
私はこれまで、人の目で見ることと、カメラを通して像が写ることの差異に関心を持ちながら制作を続けてきた。人の視線は常に動き続けているが、写真はそのわずかなずれや誤差までも静止した像として留めてしまう。制作においては、レンズを少しずつ動かしながら何度も露光を重ねることで、視線の動きや時間の重なりを一枚のフィルムの中に定着していく。
画面に現れる半透明の帯は、異なる視点や露光が重なったことで生まれた痕跡であり、本来像の外側にあるはずのフレームの構造を内部へと引き込む。空間は切り取られるのではなく、像の内部で複数の時間や視線が重なり合っていく。固定された写真でありながら、見るたびに像の関係がわずかに揺れ続けるような視覚体験を目指している。
セザンヌが絵画において追求した「見ること」の実験をひとつの起点としつつ、その視線を再現するのではなく、写真機というプリミティブな装置を通して、私たちの見る行為と身体の関係を、よりフィジカルに問いかけていきたい。

 

<受賞コメント>

この度は山田紗子賞をいただき、誠にありがとうございます。主催者、審査員の皆様、SICF関係者の皆様に深く感謝申し上げます。
たくさんの作家の皆さまやご来場くださった方々との出会いを通して、多くの刺激や学びを得ることができました。展示期間中に直接作品についてお話しできたことも、とても貴重な経験になりました。この経験を励みに、今後も制作に向き合っていきたいと思います。

 

<審査員コメント>

■山田紗子/建築家

良いなと思った空間をカメラで撮ったらなんか違った、ということがよくある。人の目の奥に焼きつく記憶としての画像は、1回のシャッターだけで捉えきることができない。作品の横に、風景を切り取るのではなく目に映る風景を表現したい、というようなことが書いてあってなるほどと思った。本作品はひとつの情景や被写体を、フォーカスや時間をちょっとだけずらしながら4コマや9コマに分割された1枚のフィルムに焼き付けている。バラバラに写し取られた世界がまたひとつになろうとするとき、不思議な立体感を持って現れ、そのことがとても面白いと思った。

 

【略歴】

中国出身
2024 東京藝術大学大学院 先端芸術表現専攻 修士課程 在籍

 

【主な受賞歴】

2026年 Dior Photography and Visual Arts Award for Young Talents 選出
2026年 「SICF27」EXHIBITION部門 山田紗子賞

 

【主な活動】
2026年 「SICF27」EXHIBITION部門(スパイラルホール/東京)

 


 

スパイラル奨励賞

 

 

TETTA(SUGIMOTO Satoko)

 

<作品タイトル>
縁卓(えんたく)

 

<作品について>

私は、各地の郷土料理を入り口に、食と風土、人とのつながりを探っています。これまでさまざまな地域を訪れ、料理をつくりながら人と交流してきました。本作品では、山形への移住を機に、山形の食文化を中心に取材しています。

描かれているものは、取材で出会った郷土料理に自分なりの解釈を加え、実際につくってみた料理です。土地の記憶や素材の背景、個人的な感覚を重ねながら生まれた料理のイメージを、円形の絵画に落とし込みました。円形のかたちは、皿や食卓を思わせると同時に、人が集い、向き合うことで関係が生まれる「縁の場」をあらわしています。

絵画は壁に掛けるだけでなく、テーブルの上に置くこともできます。作品を囲んで座り、料理や土地について語り合うことで、見ること、味わうこと、語ることがゆるやかにつながっていきます。食の体験と視覚のイメージが行き来するなかで、「見ることから始まる交流」が生まれていく感覚をひらく作品です。

 

<受賞コメント>

スパイラル奨励賞をいただけたこと、大変光栄に思います。新天地・山形へ移住して4ヶ月。その中で制作した作品を携え、SICF27に参加しました。会期中は多くの方とお話しでき、山形や東北にゆかりのある方々との思いがけない出会いもありました。展示を通して生まれた新たな縁を励みに、これからも制作を続けていきます。

 

<審査員コメント>

■non

non

 

【略歴】
1982年神奈川県生まれ。2009年多摩美術大学大学院美術研究科絵画学科油画領域修了。現代に生きる人や文化を後世に伝えることをテーマに、絵画、写真、パフォーマンス、参加型アートなど多様な表現を展開している。代表作「三十三間堂プロジェクト」では、参加者が観音菩薩に変身する体験を通じ、信仰や文化財を現代と地続きの存在として捉え直している。近年は料理家としても活動し、アートと食を組み合わせた交流をテーマにした作品やプログラムを展開。料理を視覚的な表現としても捉え、展示空間や土地の文化に寄り添いながら、人と人との関係性を育む場を生み出している。

 

【主な受賞歴】

2008年 第44回神奈川県美術展 神奈川県立近代美術館賞
2010年 VOCA2010 選出
2010年 3331アンデパンダン 中村政人セレクト賞
2015年 第51回神奈川県美術展 入選
2026年 「SICF27」EXHIBITION部門 スパイラル奨励賞

【主な活動】

2014年 「三十三間堂プロジェクト」(3331 Arts Chiyoda/東京)
2018年 「KANNON」(KREIS Galerie/ドイツ)
2022年 「exitus」(Gallery Pictor/神奈川)
2025年 「スナックMoMoY」(Bar verde/神奈川)
2026年 「SICF27」EXHIBITION部門(スパイラルホール/東京)

 

グループ展
2012年  黄金町バザール(神奈川)
2017 – 2025年 中之条ビエンナーレ(群馬)
2020年  さいたま国際芸術祭(埼玉)
2024年 「All Tomorrow’s Parties ― 絵画、彫刻、その先、―」(藤沢市アートスペース/神奈川)

 


 

デイリーアート賞

 

 

平田梨華

 

<作品タイトル>
境界のない色を生きる

 

<作品について>

私は日常から得る疑問や違和感、関心事をインスピレーションに様々な素材や要素を融合させながら絵画、七宝、立体造形、インスタレーションなど様々な形で作品を制作しています。

 

日常から気付かされる世界の多様多層さに慄くと共に強く興味を惹かれ、そこから得たイメージを作品として表出させています。
日常生活の中で降り積もるように蓄積されたイメージの源泉から湧き出るモノ達はモチーフへと変換され、最も響き合うであろう表現方法と共に作品へと昇華されていきます。
それぞれ存在する全ての個のもつ世界がグラデーションのように広がり重なり合って私たちの生きるこの星や宇宙は成り立っている。

 

私にとって作品制作とは、とても大きな事柄を日常という手の届くところから観察し探求していく試みであり、世界への認識を深める手段のひとつとなっています。
世界は水が染み渡るように、風が吹き抜けるように続いている。
小さなジャッジの中で無くグラデーションに身を置いて生きていきたい。
そんな願いや理想を源にブースに空間を作りました。

 

<受賞コメント>

この度はデイリーアート賞に選出頂き誠にありがとうございます。コロナ以降「日常から得たインスピレーションを日常を豊かに過ごす一つの形として作品に起こす」という事の尊さを意識していた数年間でもありました。
そんな私にとってこの度の受賞はとても特別なものとなりました。改めまして作品を丁寧にご覧頂きました審査員の皆さま、SICF27を支えて下さった全ての関係者の皆さま、会場まで足をお運び頂いた皆さまに心より感謝申し上げます。

 

<審査員コメント>

■non

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【略歴】

2014年 多摩美術大学美術学部絵画学科油画科専攻卒業

【主な受賞歴】

2018年 「Liful-Artmore Award2018」 佳作
2019年 「Tagboat-Independent Tokyo2019」準グランプリ
2026年 「SICF27」デイリーアート賞

【主な活動】

2017年 「光る水に消えゆく骨のように、螺旋の中で、彼女は幸福に立ち帰る夢を見る」(CheongjuArtStudio/韓国)
2020年 「Sprout! Nishiazabu vol.12 平田梨華展」(大泉工場nishiazabu/東京)
2024年 「-生きた土と生きた風に潜る-」(JINEN GALLERY/東京)*20,21,22年開催
<グループ展>
2018年 「Artmore Award Exhibition」(弘重ギャラリー/東京)
2019年 「Independent Tokyo 2019」(浅草ヒューリックホール/東京)
2021年 「s+arts summer exhibition」(s+arts galery/東京) *20年開催
2020年 「SICF21」(スパイラルホール/東京)
2026年 「SICF27」(スパイラルホール/東京)
<アーティスト・イン・レジデンス>
2016-2017年 「10回生CheongjuArtStudioResidency 3ヶ月プログラム」
(CheongjuArtStudio/韓国)

 


 

オーディエンス賞 A日程

 

 

neiro

 

<作品タイトル>
『景色』

 

<作品について>

本作は、こころの中や記憶の奥底に存在する、普遍的で美しい「景色」を主題とした作品です。ここでいう「景色」とは、眼に映る風景ではなく、こころの奥底にある情景や、いつの間にか美化され上書きされた記憶の断片を指しています。その曖昧さを失うことなく表現するため、生成りの羊毛を染色し、幾層にも重ねる手法を用いています。境界のない淡く滲む色彩と、空気を含むような層によって、儚く移ろう曖昧さをそのまま留め、さらにその一場面をトリミングするように収めています。「景」という言葉には「在りさま」という意味があります。本作品『景色』が、「色」の「在りさま」を改めて見つめる時間となれば幸いです。

 

<受賞コメント>

この度は素敵な賞をいただき、大変嬉しく思っております。改めまして、ありがとうございました。作品と空間、そして「何を伝えたいのか」に真摯に向き合いながら取り組むことのできた展示でした。

 

 

【略歴】

北欧4カ国を旅した経験をきっかけに、自然や循環のあり方に関心を持ち制作活動を始める。さまざまな素材や表現手法を探求する中で、羊毛による表現を独学で研究。現在は東京と長野を拠点に、自然との関係性や生命の感覚、曖昧さをテーマに制作を行う。2026年より東京・長野を中心に展示活動を予定している。

 

【主な受賞歴】

2026年 「SICF27」EXHIBITION部門 オーディエンス賞 A日程

 

【主な活動】

2026年 「SICF27」EXHIBITION部門(スパイラルホール/東京)

 


 

オーディエンス賞 B日程

 

 

スズキタイト

 

<作品タイトル>
Photographic Cubism ー 諸科学、諸芸術の下婢 ー

 

<作品について>

本作品は、写真が抱えてきた「単一の視点」という性質を、キュビスムと光学技術を通じて解体しようとするものである。時間の経過とともに腐敗する果実や花を被写体とし、それらをレンチキュラーレンズによって再構築することで、鑑賞者の移動に応じて像が変化する画面を生み出している。そこでは、数十日間にわたる被写体の時間と、複数の角度から捉えられた視点が、鑑賞者の身体的な動きによって混ざり合う。加えて、プリズムフィルターによる像の増殖は、作者の「両眼性複視」という個人的な視覚特性を重ねることで、正常で単一な眼差しという前提に疑義を投げかける。鑑賞者の身体、被写体の時間、視覚の揺らぎが交差する時、写真は固定された一瞬ではなく絶えず更新される視覚経験として立ち上がる。

 

<受賞コメント>

この度はオーディエンス賞に選出いただき、誠にありがとうございます。展示を通じて多くの方に作品をご覧いただけたことは、自身の制作を見つめ直す大きな機会となりました。ご投票いただいた皆さま、また展示に際しお力添えくださった皆さまに心より感謝申し上げます。来年の受賞者展に向けてより良い発表ができるよう励んでまいります。

 

 

【略歴】

東京都生まれ
2026年 京都芸術大学大学院 芸術研究科芸術専攻 写真・映像領域 修了

 

【主な受賞歴】

2024年 「第59回神奈川県美術展」 写真部門 準大賞
2025年 「第3回 キヤノン GRAPHGATE」 佳作
2026年 「SICF27」EXHIBITION部門 オーディエンス賞 B日程

 

【主な活動】

グループ展
2024年 「芦屋写真展2024」(兵庫県立美術館王子分館/兵庫)
2024年 「第59回神奈川県美術展」(神奈川県民ホール/神奈川)
2025年 「中央線芸術祭2025」(小金井 宮地楽器ホール/東京)
2025年 「GRAPHGATE展2025」(キヤノンオープンギャラリー1・2/東京)
2026年 「SICF27」EXHIBITION部門(スパイラルホール/東京)

 

個展
2023年 「General emptiness」(New Space PA/東京)
2024年 「Seeing the world anew」(+BASE/東京)
2025年 「DōDATTA?」(Machiaijo gallery/宮城)

 


 

SICF27 講評会(EXHIBITION部門)

詳細はYoutubeにて公開中!