スパイラルの動画インタビューでは、本来は捨てられてしまうはずの動物の「皮」を「革」にすることで、自然の巡りの中で、ものづくりを行うsonorさん(SICF14出展)と山口産業株式会社さんに密着しました。
そのsonorさん(園田明子さん)のインタビュー中に、女性クリエイターのキャリアを考える上で、とても興味深いお話を聞いたので、SICF ver.の編集後記として、ここに書き記しておきたいと思います。
「sonorが始まった時っていうのは、凄く曖昧な感じなんです。私は、短大で2年、洋裁を学び、その後、専門学校に行きました。入学して半年で子供ができたので、結婚・出産しようと決めたんです。しばらくして、子育てをする中で、友達になった娘さんの発表会の服などを作るようになり、身近なコミュニティの中で、自分のものづくりが拡がっていきました。そして、自分に緊張感を持たせるために、その活動にsonorという名前をつけました。」
命を授かったとはいえ、多くの女性は、やりたいことがある中で、若干21歳で結婚・出産するという決断は、なかなか難しいはず。園田さんの場合は、その決断の先で、心の赴くままにものづくりを再開し、他者からも求められ、ついには屋号を持つようになります。ブランドを“立ち上げた”という感覚ではなく、“自然とそうなった”と語る園田さんが印象的です。
「私は子育てをしていたので、先に繋がるような素材を使って、ものづくりができるって凄く理想的だと思い、環境に配慮された豚革に魅力を感じたんです。」
「巾着以外にはなりますが、どのカバンにも必ずポケットをつけています。子育てをしていると、実用性が高いことは重要です。」
母であることが、作品の素材の選択やブランドの個性につながり、クリエイターとしてのsonorさんのアイデンティティを形成しています。
最後にこんなこともおっしゃっていました。
「私は、社会のどこかに属して仕事をするという選択ができなかったんですけど、好きなことを続けてきた。やっぱり就職してしまうと、そこから結婚・出産を考えていくタイミングになると思うんですね。でも、自分は子育てしながらも、仕事を続けていくことができた。それを一つの例として、何か感じてくれる人がいてくれるといいなという思いで、ものづくりを続けていきたいです。」
自分の周りで起こることに、身を任せながらも、主体的に関わっていく。そんな終始、自然体な園田さんとお話していると、私たちが “こうでなければ ” とか “どちらかを選択しなければ ”とか思い込んでいることは、実は矛盾せずに両立できるのではないか?と、第三の道が開かれていくような感覚になります。
既に、一番下のお子さんが大学生というsonorさん。子育てを終え、いよいよ第二章を迎えるsonorさんのこれからの活躍が楽しみでなりません。
文 : 浅野仁美(スパイラル 広報)