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SPECIAL INTERVIEW

pecial interview vol.7 
加藤立

日常の行為を逸脱させる


 

今回のスペシャルインタビューは、SICF12で南條史生賞を受賞した加藤立さん。
SICF12の受賞者展示では、時間と共に溶けていく「A NEW DAY」と書かれた氷のオブジェを展示しました。作品や制作をはじめたきっかけ、今後の活動などのお話をうかがいました。

 

作品について

 

作品制作に関しては、ほぼ五里霧中状態です。あんなことをしてみたりこんなことをしてみたりしながら、特筆すべき技術も無く、財政的なバックボーンもあるはずがなく、必然的にミニマムでささやかな作品ができあがっていきます。例えば、「block」や「like a diamond」は「積み木をする」や「リンゴの皮をむく」という日常の行為を、「野菜を積み木にする」や「リンゴをダイヤモンドのかたちにむく」というように微妙に逸脱させています。

 

 

写真左から)  「block」 2010年、 「like a diamond」 2009年

 

「toys」も、息子のおもちゃを木製のおもちゃとプラスチック製のおもちゃに仕分ける、という何か心にひっかかった出来事をノートに書き留めるような作品です。

そういった作品とは別に、事後的に発見した事ではありますが、自然の持つ力強さをそのまま見せる、というタイプの作品があります。波打ち際にイルミネーションランプを放置して波の形を保存する「illumination land」や、始発の電車にレーッドカーペットのロールを置き、電車が動き出すとカーペットが敷かれていく様子を撮った「red carpet」などがそうです。SICF12 の受賞者展で展示をした「A NEW DAY」の氷の文字もそのタイプの作品です。

 

 

写真左上から)  「toys」 2009年、 「red carpet」 2006年、 左下) 「illumination land」 2007年

 

制作活動のきっかけ

 

大学で建築を学んでいましたが、毎年すこしずつすこしずつ脱線していきました。フランシス・アリスという作家の、街中で氷を押していって氷がなくなっていく作品や、ペンキの缶に小さな穴を開けて町を歩き、歩いた軌跡がペンキのたれたラインとして残っていく作品などをその頃に知り、現代アートの面白さを知るとともに、これなら技術をもっていない僕にもできるんではないかと思い、制作をはじめるようになりました。

その後、コンセプチュアルアートの懐の深さを知っていくにつれ、そんなに簡単なものじゃないことを思い知る事にもなりますが、制作を始めた頃の、何というか、優れた作品に勇気をもらうというか、背中を押してもらうような感じはどこかに残っている気がします。

 

「A NEW DAY」 2012年

 

今後の活動について

 

2012 年7月から12月まで新潟で行われる「水と土の芸術祭2012」に出品します。風が吹くと「WIND」という文字の電飾看板が点灯する、という作品です。

【インタビュー:2012年6月25日】

 

プロフィール

 

加藤 立 (かとう りゅう)

1979年 愛知県生まれ
2003年 東京芸術大学美術学部建築科卒
現在(2012年)、東京在住

 

作家ホームページ

【主な展示】
グループ・企画展
2011年 中之条ビエンナーレ2011
2012年 水と土の芸術祭2012

【受賞暦】
2010年 第5回タグボートアワード タカイシイ賞
2011年 SICF12 南條史生賞